第6話 忍び寄る?
誤字報告いつもありがとうございます。
この程度の階層では魔物は取り合いになるからな… もちろん横取りはNGだし、ギルドに通報されたらペナルティという名の罰金が待っている。俺にそんな無駄な金は無え!
早速ゴブリンパーティを発見。ゴブリンリーダー1体に、取り巻きと思われる1階層にもいる通常のゴブリンが2体… イケるか?
戦略としては早急に取り巻きを討伐し、ゴブリンリーダーとタイマン勝負に持ち込みたいところだが… 逆にゴブリンリーダーを先にやってしまうという手もある。まぁその判断は接敵してからじゃないとできないんだけどね、俺には遠距離攻撃は無いから突っ込む事しか出来ない。その時にゴブリンリーダーがどんな行動を取るかで方針は変わってしまうからだ。
「よし、とりあえず特攻してみるか。結界を張りながら前に出て、割れた音にビビったところで間合いに入ってとどめを刺す。後はゴブリンの動きを見ながら考えるか」
俺の脳みそが弾き出した素晴らしい作戦の下、自分の正面に結界を2枚重ねにしてゴブリンに向かって走り出した。
「おりゃぁぁぁぁ!」
「ギョア!?」
どうやら奇襲の効果があったようで、3体のゴブリンは驚いた顔をしながら固まっている… チャーンス!
一番手前にいた通常ゴブリンに結界ごと体当たりをし、その衝撃で結界が音を立てて割れていく。
パキィィィン
その音で更にびっくりしたようなので、一気にゴブリンリーダーに詰め寄り、胴体から半分に切断するように真横に結界を張る。
パキィィィン
張った瞬間に結界は割れたが… ゴブリンリーダーも真っ二つになって地面に倒れ込む。よし、この調子で残り2体もやってしまおう!
いきなり飛び出してきて、ゴブリンリーダーが目の前で無残に倒されたからか目を見開いて驚愕しているゴブリン… ダンジョンではその隙が命取りだぜ!
防御を捨てて2枚の結界をそれぞれゴブリンの胴体と重なるように展開し、戦闘は終了した。
「ふぃ~、予想通りイケるもんだな。そういえばこの攻撃方法… 結界の使い方の名前を付けていなかったな。これは結界師として基本であり切り札になると思うから、なんか格好良い名前にしたいよな。
ああ、もしかしたらこれを編み出した俺の名前は後世に残るかも? そう考えるとなんだか燃えてくるな! ちょっと考えてみようか」
何が良いかねぇ… 結界スラッシュ? 結界斬? いっそのこと次元断とかにしちゃおうか? 俺の記憶にあるゲームのシリーズで、3番目のやつに次元断ってあったよな… あ、亜空間斬りとかも格好良いかも。まぁ亜空間じゃないけどな! それを言ってしまえば次元でもないかもだし!
だけど別に良いだろう、きっとそこまで深く誰も考えないだろうし… 次元断にしようか。格好良いし短いから呼びやすいし、これが確立されたら結界師も侮られなくなるかもしれないな!
「よし、もっと使いこなせるよう練度を上げていかないとな。もちろん別の結界師に教える事もあるかもしれないから、練習方法はなるべく簡潔にしておけば間違いないだろう。
やべぇ… なんか盛り上がってきたぞぉ! 異世界転生万歳だ!」
腹時計で感じる限り、もう昼は過ぎてると思うんだ。でも、思っていたよりも討伐数は増えていない… 現在までにゴブリン12体、ゴブリンリーダー6体分の魔石をゲットしている。
攻撃手段が得られた事で、もっとサクサクと討伐できるんじゃないかと想定していたのだが… 俺自身の身体能力が足りていないんだな、きっと。
本来であれば、この2階層の推奨レベルは2~4となっている。しかし! それはあくまでも4~5人でのパーティでという話なのだ。ぶっちゃけソロでのダンジョン討伐は推奨されていない。
そして、今のところゴブリンしか相手にしていないが、ゴブリン相手では一撃必殺となっている新技『次元断』の射程にも問題があるんだよな。
『次元断』の射程は大体1.5メートル、この微妙な距離は複数のゴブリンを相手にしていると結構危険で厳しい。もっと遠距離まで届くのであれば多分無双できたと思うんだけど、今の射程だと武器次第では相手の攻撃だって余裕で届くのだ。これは危ない。
それにゴブリンリーダーの動きが速いというのがまずいけない、油断しているつもりは無いんだけど、通常ゴブリンの動きになれてしまうとめちゃくちゃ速く見えてしまうんだよな。
「よし、魔石の単価が高いとはいえもう少し狩っていきたいよな。そしてもっと有効的に結界を張れるよう回数をこなさないと」
そう、熟練度というのは非常に大切である。どんな時でも素早く柔軟に対応できるよう… それこそ条件反射で無意識で動けるようになればもっと安定するだろう。
現状の目標はギルド登録費用と鑑定費用を稼ぐ事。もちろんお金が貯まるまで激貧生活をするつもりは無い、体が資本なのにそれを蔑ろにするのは本末転倒だからな。
まぁいい、思ったよりも少ないとは思うけど、結果だけ見れば現状ですでに300ギルは達成している。うん、通常ゴブリン30体分だな。なのでこれ以降は余剰分になるので晩御飯を豪華にするためにもう一踏ん張りしないとな。
─ダンジョン入り口─
「おい、そういえば先日の神託で結界師になったガキがいただろ? そいつ、1人でダンジョンに入っているらしいぜ」
「はぁ? 結界師なんて碌に戦えない職業なのによくやるな。もしかして死にたいのか?」
「そうかもしれないぜ? ちょっといじめに行かないか?」
「いじめるって言ったってよ… そんなゴミ職業のガキなんて襲ったってリスクだけで儲からないだろう?」
「まぁそうなんだがな、でもよく考えてみろ。結界師の癖にダンジョンに入り浸っているなんて自殺願望があると思われたって不思議じゃないだろ? なんもいじめた後に殺してしまえばリスクなんて無くなるだろう」
「ハハっ、お前も好きだよな弱い者いじめが」
「ああ大好きだ、お前だってそうだろ? 12歳にしては小柄だったというし、汚れているが見た目は悪くないって話だぜ? そういうガキは好きなんだろ?」
「そうだな… 殺す前提ならリスクなんてあるわけもないか。結界師に抵抗されたってどうにでもなるからな」
「ああ、ゴブリンにすら破られる結界なんて俺達にかかれば紙切れ同然よ。それで…どうだ?」
「よし、どうせ1階層か2階層をうろつく程度だろうからいっちょ探しに行ってみるか。そして殺す前にちょっと楽しませてもらってな」
「ガハハ! お前も好きだよな! 俺は女専門だからよ、好きにすればいいさ。俺は手足を斬り落として絶望する顔を拝んでやれば満足だからよ」
2人組の冒険者達がダンジョンへと入っていくのだった。