第57話 一方その頃? その2
誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:エメラルド帝国第1皇子、テンラン
「間引きは間に合いそうか?」
「コウギョクダンジョンで五分五分、ゲッキョウダンジョンでは間に合わないかと」
「そうか、仕方あるまい… ヒスイも呼べ、緊急会議を始めるとな!」
3時間後、大会議室には主だった役職の者… 軍部からは統括騎士団長と同じく統括魔導師団長。宰相を始めとする文官が数名、そして俺と妹であるヒスイが座っている。そして父上が大会議室に入ってきた。
「良く集まってくれた、おおよその話は聞いているかもしれないが概要だけ軽く説明しておく。宰相よ」
「はっ! では報告する。現在我が国に存在する2つのAランクダンジョン… コウギョクダンジョンとゲッキョウダンジョンの魔物の配置が変化しているとの報告が先月あった。
本来いないはずの深層の魔物が浅層まで上がってきているという事だが、これは先人の残してくれた記述書にあるダンジョンスタンピードの予兆であると思われる」
宰相が一息でそこまで言い切ると、会議室の中はやはりざわついてくる。まぁ仕方あるまい、スタンダードなど昔話でしか語られないレベルの災害だ。まさかその災害が自分達の代で起こるなんて思いもしなかったのだろう。
「記述書によれば、この兆候が表れた後1年ほどでダンジョン内にいるほぼ全ての魔物が外へと溢れ出るという。まだ我が国に居る冒険者達が到達していない階層からも魔物が出てくるという事は、それらに対応できる者もいないというのも事実である。記述書によればドラゴンの姿があった… などという事も書かれている」
「なんと!」
「ド、ドラゴンとはそれはまた…」
ドラゴン… それこそ伝説上の生物であるはずなのに、やたらと明確にあらゆる地方で伝承が残っている最強の魔物。その鱗は全てを弾き、その吐息は炎を纏い、羽ばたき一つで町が壊滅するなど多々残っている。
つまり… 高ランクのダンジョンにはドラゴンがいるという事なのだろう。そしてそれが過去のスタンピードで外に出てきて災害を撒き散らしていったと… その伝承が伝わっているんだと。
しかし何階層にドラゴンがいるのかは分かってはいない、まだ誰もその階層にまで到達していないからだ。ただでさえ難易度が高いと言われるAランクダンジョン、その深層に潜むドラゴンを含めた魔物が溢れてくるなんて地獄としか言いようがないな。
「現在冒険者ギルドに依頼をし、浅層でいいから大至急魔物の間引きをするよう伝達しているが… コウギョクダンジョンは比較的動物系が多いため進められるだろうが昆虫系魔物が多いゲッキョウダンジョンの間引きは非常に時間がかかるとの事、なんと言っても甲虫は頑丈だからな…」
そうなのだ、昆虫系の魔物が多く出現するゲッキョウダンジョン… 動物系と違って非常に防御力が高いのだ。特に弓など刺さりもしないからな… 魔法であっても耐性が高くて決定打にならない、地道に剣や鈍器などで叩き潰すしか手は無いのだ。
だからどうしても時間だけが無駄に過ぎていき、間引きはとてもじゃないが間に合うと思えない。
「皆聞け!」
ざわめいている会議室に父上の声が響き渡る、混乱した話し合いは止まり静寂が訪れる。
「これはあくまでも噂にすぎん話だが、こんな噂話が街で流れておるようだ。「隣国アズライトのジェードダンジョンで見たことも無いスキルを使う結界師がいる」「ゴブリンキングやウリボア、果てはクレイジーチャボですら一撃で討伐する」「その結界師がギルドの援助を受けて結界師のための訓練場を開設する」などと言う話だ。
まぁこれは寛容な余ですら信じる事の出来ない与太話だと思うが、火の無いところに煙は立たんからな… 万が一、多少の誇張はあったとしても本当の事なのかもしれん。
そういう事から少数の者を派遣し、隣国へと渡って真偽を確かめさせようかと思っておる。万が一本当の事であれば… 隣国だからこそ借りは作りたくないのだが支援要請をするか、その噂の結界師を我が国に連れてくるか行動しようと思う。まぁその噂がまさに与太話であったなら、大至急帰国するという事になるな…
ヒスイよ、お前が隣国に向かいその真偽を確認してきてくれ。供は4名まで許す」
「わたくしがですか? ゲッキョウダンジョンの方は如何なさるおつもりですか?」
「それについてはテンランに任せる。現状コウギョクダンジョンの方は間引きができる環境にあるからそっちはギルドに任せ、ゲッキョウダンジョンの対策を考えろ」
なんという事か! ヒスイの担当であったゲッキョウダンジョンの対処を俺がやるなんて… これは仕事が増えすぎて倒れてしまいそうだな。
対してヒスイは… 余程隣国に行きたくないのか不貞腐れた顔をしている、臣下の前でその顔はダメだと思うぞ? 妹よ。
「では、騎士団は一部の騎士をテンランに預けてゲッキョウダンジョン対策を、冒険者ギルドに対する支援も忘れるな! 全てを失いたくなければ全力を尽くせ! 以上解散!」
父上の号令により会議は終了した… ああ仕方がない、嫌だけど虫共の相手をするか。
SIDE:ショウ
「次元断!」
ルビー殿下の澄んだ声が屋内訓練場に響く…
練習とはいえルビー殿下の飲み込みがあまりに早く、的となる木材が無くなってしまったのだ。なので今は、実戦を想定して動き回りながら次元断を放つ訓練をしている。
そして急遽フォーカラットの皆さんに指名依頼を出し、人の手で運べそうな岩を探して持ち込んでもらえるようになっている。次元断で岩が斬れるのかは俺もまだ試していないけど、せっかくだから限界に挑戦という事でそんな事になったのだ。
「ふぅ、そういえばショウ、貴方次元断の他にもスキルがあると言っていませんでしたか? それはいつ教えて下さるの?」
「あ、そうでしたね。殿下の習得があまりに早いから忘れてました。では新しい的が来るまでそっちの練習をしましょうか、その技は気円斬と名付けていまして遠距離攻撃となります」
「遠距離攻撃? 結界師がそのような事ができるのですか?」
「はい、実際に俺もダンジョンで魔物を相手に実践済みです。ただ威力に関しては… コブリンアーチャーやシャーマン、ウルフを昏倒させる程度しか無くて牽制用として使っていますね」
「牽制用… それでもゴブリンアーチャーなどを昏倒させられるのですか、十分使えるスキルだと思いますが…」




