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第56話  一方その頃? その1

誤字報告いつもありがとうございます。

「お帰りなさいショウ君、思ったよりも時間がかかったのね」

「あ、ただいま戻りました。ルビー殿下が想定以上に飲み込みは良くて、明日には次元断の実習をと思いまして… 斬るための的を用意してたんですよ」

「的になりそうな物なんてあったかしら?」

「屋外訓練場の隅に置かれている廃材を利用して自作してみました、まぁ出来はいまいちなので近い内に本職の人に依頼しないといけませんけどね」


 どうやら板切れを立てかける台を作るのに思っていたよりも時間がかかってしまったようだね… オニキスさんが俺よりも早く戻ってきていて待っていてくれたようだ。


 そして夕食を食べながら訓練の様子や新しい訓練生の事、ルビー殿下の事などを話しながら美味しく頂いたのだった。

 それにしても今のオニキスさんは仕事どうしているのかな? Aランク冒険者なのだから引く手数多というか、高ランクじゃないと受けられない依頼とかあると思うんだけど… そういった部分はあまり教えてくれないんだよな。まぁ『シノビ』という職業を持つくらいだ、俺の知識ではシノビ… まぁ忍者だね? 女性であればクノイチと呼ばれる職業は主に偵察や暗殺などを生業としていた記憶がある。つまり、そういった仕事もしているから他者には言えない守秘義務的なものがあるのかもしれないね。


「それで… どこまで殿下に教えるの?」

「どうしましょうか… まぁ椅子代わりにするとかテーブルにしちゃうとかの小細工は教えなくても良いんじゃないかと思ってますので、次元断と気円斬だけで良いと思うんですよね。そもそも王女殿下がダンジョンに入って狩りをするとは思えませんし、要は結界師の技が使えるっていう立場があれば良いんじゃないかと」

「それもそうね、でも次元断だけはしっかりと教えてあげてね? あの技は使い方次第では殿下を守ろうとする護衛ですら巻き込んでしまいそうだから」

「そうですね、明日は実際に次元断で斬ってもらう経験をしてもらい、今話した注意点と共に結界のサイズを変えれるよう訓練してもらいます」


 そうなのだ、俺はソロだからそんなこと気にする事も無いんだけど、パーティであったりルビー殿下のように守られる立場であるなら味方の動きに合わせないと大事故につながってしまうだろう。何も考えずに結界を張ると大体90センチ×180センチくらいの板状で出現するからね… 味方が敵を押さえつけていたりすると簡単に巻き込んでしまうんだ。

 まぁこれはサイズを変える練習をしてもらい、適時状況に見合ったサイズで展開できるようになればその危険はぐっと減る。


 そんな事態は起こらないかもしれないが、ルビー殿下がこの訓練場で得た経験がそのまま王家に伝わってしまうのであれば、やはり外す事は出来ない訓練だろう。後はそれぞれ個人で考えて、新しい技を作っていけばいいよね…


 よし、難しい事を考えるのはここまでにしよう! 今日はもうお風呂に入ってベッドに潜り込もうかな!






 こうしてのんびりと構えている中、結界師がダンジョンにソロで入って魔物を倒しているという情報は流れるように国外にも伝わっていた。

 そんな噂を聞いたものは、そんな馬鹿な話があるか! と笑い飛ばす者、結界師といえども剣などの武器を使い、その技量で倒しているんじゃないかと疑う者と多種多様であった。


 そして新たに流れていく噂話… 結界師特有のスキルが使われていた事、それらのスキルを指導してくれる訓練場がある事、訓練場の立ち上げにはアズライト王国の王家が絡んでいる事… それらの情報は国をまたいで動き回る商人と、それを護衛する冒険者達によって広められていった。



 そんな中、アズライト王国の隣国であり、国内にAランクダンジョンを2ヵ所も擁するエメラルド帝国にも同様の話が伝わっていた。

 そんなエメラルド帝国… 現在2ヵ所のAランクダンジョンでは異変が起きていた。



 SIDE:エメラルド帝国第1皇子、テンラン


「テンラン殿下、やはり増えていますね。これは我が国に伝わる伝承の通りかと」

「むぅ… 決めつけるのは早計だと思っていたが、やはり伝承の通りだったか。これはマズいな」

「はい、このままだとAランクダンジョンが2ヵ所同時にスタンピードを起こしてしまう可能性が高いでしょう。コウギョクダンジョンだと防御力の低い魔物が多いので間引きも可能ですが、ヒスイ王女殿下が担当するゲッキョウダンジョンの方では間に合いそうもありません」

「分かった、少し父上と話をしてみよう。父上ならば何か解決策をお持ちかもしれんからな」

「承知いたしました」


 しかし何だというのだ、我が国が誇る2ヵ所のAランクダンジョンが… 我が国の繁栄に大きく貢献していたダンジョンが牙をむくとは。

 だが過去にもそういった事があったらしく、スタンピードの予兆などが記された書物は残っているが… 伝え聞くところによると前回のスタンピードは200年以上前に起こったとされている。


「どうして今頃になって… これでは俺が帝位を受け継いでも国はボロボロじゃないか」


 我が国の帝都は岩山に囲まれた自然要塞の中に造られているため、恐らくスタンピードが起きてもここまでやってくる魔物はいないだろう。だがしかし、それ以外の地域は… もう絶望的といっても過言ではない、人も家畜も田園も畑も等しく蹂躙されるであろう。


 俺はまだ18歳だから帝位を受け継ぐのはまだ先だろうが、スタンピード後の処理をするだけでも父上は疲弊してしまうだろう。もしかしたら疲れ切った父上は早々に帝位を手放すかもしれん…


 妹のヒスイも帝王学は学んでいるだろうがまだ15歳、俺を飛び越えてなんてことは無いだろう…


 考え事をしながら歩いていたら、すでに父上の居室の前に到着してしまっていた。まだ考えはまとまっていないが仕方がない、現状の報告だけでも速やかに行わなければ。


 コンコン


「父上、テンランです。コウギョクダンジョンを調査に向かっていたものが戻ってまいりましたので報告に上がりました」

「入れ」

「はっ!」


 許可が下りたので扉を開けて中に入る。近衛騎士が3名常駐しているが、顔見知りのため手を上げるだけにして皇帝陛下の下へと近づいて行く。


「それで、やはりスタンピードが起こりそうであるか?」

「はっ、調査に行った者の証言が、伝承に書かれているスタンピードの兆候に酷似しておりますので間違いないでしょう」

「2ヵ所ともか?」

「そのようです…」


 父上はまだ若い、現状でも35歳という歴代皇帝の中でも異例の若さである。先代皇帝… お爺様が病でお隠れになってしまったので急遽後を継いだ形なのだ。

 しかし若いはずのその顔には深い皺が刻まれている… 仕方あるまい、今まさに国の一大事… それこそ存亡がかかってくるほどの事態が起きようとしているのだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] (*ゝω・*)つ★★★★★  おおっ!? 何やらキナ臭くなって来ましたね。 次回も楽しみにしております!(*´・ω-)b
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