第52話 ギルドでわっしょい!
誤字報告いつもありがとうございます。
「ちょっとそこのあなた、ルビー殿下はお疲れのため本日の訓練は取り止めにします。言いたい事は以上です」
「え? あ、はい」
突如現れた王女殿下の専属侍女さん… かなり高慢ちきな雰囲気で喋り倒していなくなった。
うん、王家につく侍女というなら当然貴族の令嬢だもんね… 俺のような平民孤児とは満足に口も利きたくないって感じなんだろう。
「しかしなんだ、突然暇になったな」
まぁこのドタキャンは想定できたからな、特にがっかりというわけではないが… まぁアレだろ、日頃の運動不足が祟ったって事だよね。
という事は、午前中は体力作りがメインの訓練だから数日繰り返される可能性も出てきたな。まぁ王家にしてみれば自分らの意見が至極真っ当な事で、平民が黙って言う事を聞けってスタイルが当たり前なんだろうね。
しかし今から暇になってもなぁ… 今からだとダンジョンに入ってもせいぜい5~6階層を軽く往復するくらいしか時間が無いし、どうしようかな。
でもまぁそれでもいいか、せっかくだし日課になっていたゴブリンキングでも討伐してくるか。
そんなわけで出がけにギルドに寄って、何か都合の良い依頼がないかチェックしてみよう。まぁ5階層程度の素材なんて誰でも取れると思われているから依頼なんて無いんだけど、偶にあったりするんだよね。
んん? ギルドの中… なんか空気が張り詰めているような? 何かあったんだろうか。
「おい! いい加減にしろよ! お前じゃ話にならんから責任者… ギルマスを出せよ!」
「だから先ほどから言っているじゃないですか、ギルマスはただいま面接中ですぐには会う事ができませんと」
「こちとらせっかく結界師を連れて来てやってんだぜ? さっさと面接とやらを済ませて訓練場に案内しろって言ってるじゃねーか! 王都ギルドで名を馳せたパーティ『パワーストーン』を知らない訳じゃないだろう?」
「これも何度も言っていますが、結界師の訓練場にはギルドマスターの面接をクリアできた者しか紹介する事は出来ません。終わるまで待つか、予約して後日来ることを推奨します」
「なんだとコラァ! そればっかりじゃねーか!」
なんだなんだ? 結界師がどうのこうのって言ってるけど、まさか訓練場に来たいって感じなのかな?
騒いでいるパーティを見て見ると、それなりに装備が整えられてそこそこ戦力もありそうな感じなんだけど… 1人だけみすぼらしい風体の中年男性がいる。まさかあの人が結界師なのか? 同じパーティだというならばあきらかに差別されているじゃないか! ふざけんな!
あ、受付で対応していたフローライトさんが俺に気づいた… ん? 目線が横に? ああ、あっちの方に避難してろって事だね? よしきた!
騒いでいる冒険者に気づかれないよう併設されている酒場の方に移動する。そこには日頃からよく顔を合わせる冒険者達が怪訝そうな顔で彼らのやり取りを眺めているが、やはり横柄な態度が目につくようで機嫌はすこぶる悪そうだ。
しかしそうか、これがギルドマスターやアゲートさんの言っていた事だな? 普段は役に立たないとか言って目もかけないくせに、訓練場の噂を聞いて道具として使い倒そうっていう奴ら… こうして直に見ると不愉快極まりないな。
「おうショウ、来てたのか。分かっていると思うがあいつらには近づくなよ? 王都でどれだけ名が売れているのか知らないが、それがジェードで通用すると思ってんのかねぇ」
「どうなんでしょう、王都ギルドの仕事って護衛がメインって聞いたことありますけど」
よく見かける冒険者の人に声をかけられたので、ちょっとばかり情報収集でもしてみようかな。
「王都は魔物が少ないけど盗賊は出るからな、商人や定期馬車には護衛がつくんだよ。それでも王都で活動している冒険者はそれなりに品が良いはずなんだけどな… あいつらを見てると本当に王都で活動してたのか疑わしいな」
「まぁなんというか… 下品というか言ってる事は悪党そのものですからね」
「だろう? あんなんじゃ商人の護衛だって断られるレベルだぜ。しかもお前の訓練場を使って何を企んでいるのやら… さっさとギルマスに会ってガツンと怒られろってな」
「あははは…」
「そういやショウよ、訓練場が開業したって聞いていたけど今日は仕事しないのか?」
「訓練場が完成したというだけで、まだ訓練生は1人しかいないんです。午前中にやった近接戦闘の訓練でバテてしまったようで」
「なんだそりゃ、何しに来たんだか分からんやつだな」
「シー! 相手は王侯貴族の方なので、聞かれたらまずいですから陰口は止めておきましょう」
「お? マジかよ… じゃあこっそり喋らねぇとな!」
黙るという選択肢は無いのだろうか… まぁ護衛の騎士さんも侍女さんも付きっきりだと思うから、こんな所には来ないだろうし大丈夫か?
しかし、まだ受付ではさっきの連中がゴネているのだろうか… 場所を変える気が無さそうな感じだな。確かにこれは早いところギルドマスターに来てもらって、ガッツリとお説教をしてもらいたいね! 連れてこられたであろう結界師のおじさんも随分と痩せているし、パーティメンバーだというのならお肉を食べさせてやれよ!
「おい! 随分と騒がしいな、うるさいやつはどこのどいつだ?」
おお! ようやくギルドマスターの登場だ!
「やっと来たかギルマスよ、こちとらせっかく結界師を連れて来てやったっていうのになかなか訓練場を紹介しねぇからイラだっているんだよ。さっさと訓練場とやらに連れていけよ」
「ああ? 連れて来てやっただと? 何を寝言を言っているんだ? 結界師の訓練場は、今まで不遇の扱いを受けていた結界師が自活できるようにするための訓練場であって、お前らのようなゴミ冒険者の都合の良い道具にするための場所じゃねーんだよ。
正しくそのスキルを使いこなせる者しか紹介することは無い! これは冒険者ギルドと後援者である王家の決定だ、文句があるなら王宮にでも殴り込みに行って来いよ」
「なっ!?」
「しかもなんだ? 王都で名を馳せた? 悪名の間違いじゃないのか?」
「「「ギャッハッハッハッハ!!」」」
ギルドマスターの言葉にジェードの冒険者達は大ウケのようで笑い声が響き渡る…
「おいおい『パワーストーン』だったか? こんな辺境のダンジョン都市にまで名を轟かせたいなら最低でもダンジョンクリアをしてないと無理だぜ?」
「そうそう! 都会の悪ガキにはダンジョン探索なんて無理だろうがな!」
「「「ガッハッハッハッハ!」」」
おおう煽る煽る、まさにお祭り騒ぎでストレス発散をやっているみたいだね!




