第48話 訓練場の中は?
誤字報告いつもありがとうございます。
いや、一応オニキスさんとは一つ屋根の下って生活をしていたけれど部屋は別々だったからプライベートがあった訳で… でもこの間取りでは完全に同棲みたい?
「お風呂好きのショウ君のために、所長専用の浴場も広めに作ってあるわ! これなら2人で入っても大丈夫ね!」
「お、お風呂は広いんですか…」
「そうよ、貴族家の本邸にあるような大浴場よ!」
「あ、あははは… 嬉しいなー(棒)」
待て待て! 別に広いお風呂は嫌いじゃない、温泉とか前世では結構好きだったからね。でも何? 一緒に入る事が前提になっている? いくら俺が小柄だからといってももう12歳を過ぎているんだ、だからオニキスさんも少しは警戒というか恥じらいってやつをですね…
なんてオニキスさんに言ってみたが、華麗にスルーされて荷物を配置する事になったのだった。
「一応このフロアはね、貴賓というか個室じゃないと問題が起きそうな人がいたら使う用ッて感じかしらね。図面見たらわかると思うけど、所長室の前の通路分岐で分かれているからショウ君の部屋のプライベートは守られる設計よ」
「そうですか… というかですね、もしかして設計段階で王女殿下が来る事は分かっていたんですか?」
「ギルマスからは、もしかしたらあるかもしれないって言われていたわね。秘匿されているから特定の貴族しか知らないはずなんだけど… ルビー殿下は結界師なのよ」
「えええ? じゃあ完成式の参加に来ただけじゃなくて訓練生としてやっていくって事なんですか?」
「そうよ」
うへぇぇぇ、一応俺が所長で殿下が訓練生とはいえ、全然心が休まる気がしないんですが… あっ! そういえばギルドマスターに言われていたかも、王都から結界師が来るって。それがもしかして殿下の事だったって話か! もうややこしい!
オニキスさんもここに住むとか言ってたけど、同じフロアに王女殿下がいるんならある意味防波堤というか、そういった立ち回りをしてくれるって事なのかな? いやぁそういうことなら文句は言えなくなるよね… 俺のプライベートよ、さらばだ!
そんな訳で3階の図面をしっかりと確認しておく。
階段を昇ってくると、まず通路はL字に右に折れる。道なりに進んで行くとすぐに十字路になり。右に行くと所長室があってその奥に俺の部屋の扉がある。
十字路を左に行くと個室が4部屋あり、各部屋にお手洗い完備。十字路を直進すると奥でT字路になり、右に行くと厨房があって左に行くと客人用の浴室が作られていた。
そしてこれらの設備は全て個室用となっており、個室に泊まっていく人が利用するという感じになるかな。
もちろん最初の十字路を右に行き、所長室方面に進んで行くと俺が使う専用の厨房と浴室があったりする。
ついでにルビー王女殿下の事だけど、専属と思われる侍女が2名に護衛騎士が2名。王女殿下が1人で1部屋を使い、侍女2名は1部屋で同室、護衛も同様。
この訓練場に宿泊していく期間は未定らしいが、まぁ次元断なりフォーカラットのメンバーからの基礎訓練が終わるまで滞在するって感じになるのではないかと思う。
そして更に図面を見ていて気づいたんだけど、ジェードの街を囲う防壁に隣接しているからなのか、防壁と訓練場が接触している場所があるんだけど… なんとその場所の防壁部分にトンネルが作られており、街の中に用事がある場合はいちいち外に出て門をくぐるという手間が省けるという事だ! もちろんこのトンネルを使う際は所長である俺と、冒険者ギルドから使用許可が下りた者だけって設定だ。
まぁそうだよね、誰でも使えるんなら防壁を作って入場者をチェックしている意味が無くなってしまうから…
とにかくだ。本日をもって俺の居候という立場は無くなったのだ! とはいえ今までの居候という立場が悪かったというわけではない。孤児院を卒業して以来、野宿が数日あり宿屋での宿泊もほんの数日… 後はなぜかオニキスさんの家にお世話になる事になってしまったから、下手な宿暮らしと比べるのも烏滸がましい程贅沢な暮らしをさせてもらっていた。
家賃や食費を払うと言っているのに受け取ってもらえず、本当にヒモというか居候って言葉さえも文句を言ってくるような生活で、男として何とも情けないと思っていた。しかし! これからはきっと違う! 共同出資といえどもここは俺の持ち部屋なのだから、これからは俺がオニキスさんやメイドさんの食費を出してやればいいのだ! 家賃? そんなの取る訳が無いね!
と、粋がってみたけれど存続させるための経費がどれ程かかるかまだ何も分からない。同じ共同出資のギルド側もどれだけ絡んで来るのか分かるのもこれからだからね、まずはしっかり運営するとこからかな… よーし、頑張るぞ!
SIDE:ルビー王女
「殿下、荷物の片付けが終わりました」
「こちらも調理場の確認が終わりましたので、いつでもお茶が出せます」
「ご苦労様、今日はとにかく旅の疲れを癒しましょう。護衛の2人も交代で休みなさいね」
「「はっ!」」
備え付けられていたベッドに腰を下ろしてようやく一息を入れる。武骨な造りの建物だけど、そこはやはり新築というだけあって汚れやひび割れなどは全くないのでさして気にならない。
そしてやはり気になるのは…
「ところで、あのショウという結界師の少年の事だけど… あの顔つき、どこかで見た覚えはないかしら? 貴方達も実家は貴族家だし王宮仕えだからいろんな客人の顔を見ていると思うのだけど」
「そうですね、確かに平民の孤児というには整い過ぎた顔つきでしたから、どこかの貴族の落胤か、もしくは戯れに遊んだ平民が産んだ子供という可能性はありますね」
「うーん… まぁ調査をするとしても現状では無理な話よね、とりあえずここでの訓練を終えて王都に戻ったら陛下に報告しましょう。顔の特徴を書き記しておいてもらえる?」
「承知いたしました」
「では用事があれば呼ぶから貴女達も休みなさい、時間を見て夕食の支度を頼むわね」
護衛と侍女を下がらせ、人目が無くなったのを確認してからベッドに寝転ぶ。すでにドレスから部屋着に着替えているので皺などの心配をすることは無い。まぁはしたないと言われてしまう姿ではあるが…
「それにしてもどこで見た顔だったかしら… この国ではないような気もするわね。この国以外… 近隣国で私が顔を知っている人物となれば、エメラルド帝国の皇帝とその臣下くらいかしらね。でもまさか帝国とは関係ないでしょう…」




