第47話 所長室と自分の部屋
誤字報告いつもありがとうございます。
完成式は滞りなく終了した。まぁ何かあったなんて言われても困るんだけどね、俺と職人以外はほとんど貴族なわけだし…
今まで普通に接してきてたけど、オニキスさんもギルドマスターも貴族なんだよな。でも貴族らしくないというか、雰囲気がとっつきやすいから気にならなかっただけなんだけどね。
貴族といえば、この地を治めるガーネット子爵様… ダンジョン関係で結構稼げているんだろうって良く分かる成金風だったな。俺の記憶では貴族の階級は公侯伯子男、それに準男爵に騎士爵だったっけ? 所謂下級貴族に分類される子爵家なんだけど、やはりダンジョン産業は非常に儲かるようでウハウハな感じだったな。挨拶した時も「くれぐれもダンジョンの評判を落とさないように!」と何度も言われたし… ついでに言えば子爵家嫡男の人とは一度もしゃべらなかったな、名前も聞いてないし。まぁいいけどね!
王女であるルビー様には現在ギルドマスターが近くにいて、訓練場の図面を見ながら何やら話し込んでいる。王女といえば、蝶よ花よと育てられているイメージがあったんだが意外と仕事熱心というか、この訓練場の事を詳しく把握しようとしている姿に少し驚いたな。てっきり「細かい事は任せるわ」的な事を言ってすぐに帰るんだと思っていたから… まぁこれは俺の偏見だけどね。
「それじゃあショウ君、自分の荷物はマジックバッグに入れてきてるんでしょう? 所長室と所長の自室に案内するわ」
「あ、はい! お願いします!」
そうなのだ、昨晩遅くに完成したためいまだに探検をしていなかったのだ。なのでどこに何があるかというのは図面上でしか知らなくて、実際に見て回るのはこれが最初だったりする。
ふっふっふ、俺の自室か… イメージとしてはアパートを借りたというよりもマンションを購入したって気分だからな、実はちょっとだけ興奮している! なんと言ってもこれから我が城となるんだ、色々と住みやすいようにお手入れしていかなくちゃね!
オニキスさんの案内で建物の中を進んで行く。床に壁、天井まで完全に石造りになっているため少々寒そうに感じるが、扉や家具など一部木材を使った物が良い味を出していると思う。
メインの出入り口を入ると小さめの郵便局くらいの広さでロビーになっており、受付らしき台がありやり取りができるような造りになっている。受付から見て左側に通路があり、その通路を通って屋内訓練場に行くって感じだな。多分ここまでがオープンスペースって事だ。
屋内訓練場に行くための通路の途中に大きな扉があり、その扉をくぐると宿泊する訓練生用の大部屋に行ける。
残りの個室と俺の自室に行くには受付から見て右側の通路を進み、階段を昇って3階まで上がるとそれぞれの部屋に到着する。
なぜ3階かというと、屋内訓練場の真上に部屋があるからなんだよね。まだ訓練場として稼働してないから騒音とか振動とかはどのくらいかは分からないけど、石造りなんだからそこら辺はきっと大丈夫なのだろう。
3階に上がると一番最初に見えてくるのがかなり豪華な扉… まさか?
「ショウ君、ここが所長室よ。今後どうなるか詳細な事が読めなかったから、何があっても対応できるよう少し力を入れてみたわ」
「いや、これは力を入れすぎなのでは? 逆に入り難いくらい扉が豪華なんですけど」
「所長室となればこれくらい普通よ、商会で言えば商会長クラスの部屋になるのよ? 見栄だって必要になるわ」
「そ、そうですか」
「一応デスクワークもあるかもしれないから机にも力を入れさせてもらったわ、どうかしら?」
「うわぉ…」
思わず絶句する。濃い茶色と黒が基調となっているその机… 何とも言えないほどの存在感を放っているじゃないか! 黒壇っていったっけ? この黒っぽい木材は。結構高級な素材だったような記憶がありますが?
「じゃあ次はショウ君の部屋に行くわね。位置的には所長室の隣になるのだけど、廊下からも入れるけど所長室からも行き来が出来るように作ってあるわ。せっかくだから所長室から入ってみましょうか」
オニキスさんに先導され、所長室の奥にある扉をくぐるとこれまた広い部屋が現れたではありませんか! ええ? ちょっと広すぎないですか? だって俺1人で暮らすんですよね? こんなに広いと持て余すというよりも掃除が大変です!
「大丈夫よ、私の家に通ってきているメイドの子がこの部屋も掃除する手はずになっているから」
おかしいなぁ、図面では仕切りが入っていたはずなんだけど… その仕切りはどこにも見当たらず、ただただ広い部屋がそこにあるんだが。
「え? あのメイドさんがわざわざここまで来てくれるんですか? それは正直申し訳ないというか…」
「大丈夫よ! 私の部屋はもう引き払うから彼女の職場がここに変わるだけだもの」
「……………………え?」
「あら、言ってなかったかしら? 私もここに住むのよ? だから広めに設計したのよ。ついでに言えばこのフロアにある個室の一つを彼女の住まいとして提供する事で話もついているから気にしなくても良いわ、彼女も一人暮らしができると喜んでいたし」
「聞いてませんよー!」
「まぁそういう事よ、じゃあこのフロアの他の部屋についても話しておくわね。最終的にこのフロアには所長室とショウ君の自室以外に個室が4部屋あるわ、その内の一つが先ほど言ったメイドの子が住込みするわ。そしてそれ以外の3部屋については… 一番奥がルビー殿下が、その隣に侍女達が詰めてさらに隣には護衛が住む事になるわね」
「へ?」
今なんて言った? ルビー王女殿下がここに住む? いやいやいやいやおかしいでしょう! ここは王都からも結構離れている所謂辺境だよ? なんで王女殿下がここに住むって事になるの?
「ルビー殿下は、この訓練場にとって一番最初の訓練生になる事が決まったのよ。これは事前に来ていた連絡がギルマスのところで止まっていたから私も知ったのは昨晩だったんだけどね… でも大丈夫よ、何かあっても私が守ってあげるから! じゃあまずは持って来ている荷物を出しましょうか」
なんという事でしょう? 俺の安らぎ空間となるはずの自室が… オニキスさんと一緒に暮らす? しかも同じフロアに王女殿下? 全然落ち着けそうにないじゃないですかー!




