第41話 ブラックジュエリーズの末路
今年もよろしくお願いします┏oペコッ
そんなわけで、意味の分からない騒動はひとまず終わりを迎えた。
俺がギルドから連れていった職員3名とオニキスさんで、気絶していた4人の女性パーティを拘束してギルドへと移送。意識が戻り次第事の経緯を聴取するとの事だ。
「なんだか大変だったみたいね、ショウ君」
「あ、フローライトさんお疲れ様です」
「あの4人組、ブラックジュエリーズっていうパーティなんだけどね、近頃彼女らに対する苦情がものすごく多かったのよね。どうでも良い事でいちゃもんつけたりとか、ダンジョン内で初心者が襲われたって話もあったかなりの問題児だったのよ。
しかもリーダーの子が貴族令嬢でね… 多分これからも面倒になるわ」
「貴族令嬢? なんでまた冒険者に?」
「さすがにそれは本人に聞かないと分からないわ」
「ですよねー」
はぁ、貴族令嬢でしたか… まぁ貴族社会がどのような仕組みになっているのかは全く知らないからなんとも言えないけど、冒険者という立場で偉そうなことを言いたければ実績を上げろって話だよな。それだから自分より弱そうな者ばかりを選んでやっていたと… なんかもう同情の余地も無いんじゃないか? まぁ彼女達の実家がどのような対応を見せるか、そんなところだろう。
「ま、俺には関係ない話だけどね!」
今日は色々あって稼ぎも少ないし、練習もあまりできなかったからもう一度ダンジョンに入りたいところだけど止めておくかな… なんというか、余計なケチがついた状態だから縁起が悪いというかね。
よし、今日は帰ってゆっくりしよう!
そんな事があってから数日が過ぎ、俺は訓練に明け暮れていたんだけど…
「おう、お前ちょっとこっちに来い」
「ふぇ? な、なんですか? ギルドマスターが直々になんて…」
「なに、ちょっと確認したい事があるだけだ。例の『ブラックジュエリーズ』の件でな」
「ああ… アレですか」
魔石とお肉を売却してたらギルドマスターに呼び止められる… まぁでも、あれからどうなったのかは個人的に知りたいと思っていたから都合が良いかもしれないね。
ギルドマスターについて行き、何回か入った事のある執務室に通される。するとそこには…
「ほぅ、お前が噂の結界師だという小僧か」
「…………」
ええ? なんですか? このどう見ても貴族のおじさんは… 小僧なのは間違ってないけど、なんというか俺様タイプの嫌な感じがするなぁ。
「ショウ、こちらはブラックパール男爵。『ブラックジュエリーズ』のリーダーだったEランク冒険者マグネタイトの父親だ」
「は、はぁ… ショウといいます」
「なにやらお前を襲おうとしていたところ、Aランク冒険者に発見されて捕縛、そう報告を受けたのだが… 貴様がいなければ起きなかった問題だったという事だな? 一体どう責任を取るつもりなんだ?」
「ええ? こちらとしても全く面識も無かった人から突然襲われて、どうして襲ってこようとしたのか理由を知りたかったんですけど」
「うるさい! お前の事なぞどうでもよいわ! 何もかも全てお前の責任、そういう事で処理をしろ。いいな?」
なんだなんだ? なんという横暴にして横柄な態度。
まぁ男爵といってたっけ… 貴族の中では下位だから、平民にしか威張る事が出来ない哀れな貴族という事なのかな。
とはいえ、これは俺にはどうする事も出来ないんじゃない? ギルドマスター、何か言ってよ!
「残念だがブラックパール男爵よ、このショウに非は全く無いと説明しただろう? 冒険者ギルド内に於いては爵位など関係はない。この件についてはすでに王都支部に報告済みだし、今頃は王城にも報告が上がっているだろう。くだらん言いがかりは止めるんだな」
「何を!? 平民風情は我々貴族の言う事だけを聞いていればいいんだ、理由など後からいくらでもできるだろう? そもそもギルマスよ、お前だって貴族家の者だろう? それくらい弁えよ」
いかにも貴族らしいゴリ押しに、ギルドマスターは大きなため息をついている。まぁ何と言うか、お疲れ様です。
今もギルドマスターとこのブラックなんちゃら男爵が言い合いをしているけど、この場に俺がいる必要って無いんじゃないかな? もう帰っていいかな? あ、ダメですか。
「とにかくだ! 今すぐに娘達を解放しろ! わざわざそれだけのためにこんな田舎までやって来たのだ、いくらギルマスの実家の爵位が我が家よりも上だとは言え、ギルマス本人は跡継ぎではない。貴族家の当主の言う事には黙って従うが良い」
「それは無理だと何度も言ったはずだ。言っておくがここでの発言は全て記録され、最終的に王城に報告が行くようになっている。
それにこれ以上冒険者ギルドを蔑ろにするような発言を繰り返せば、冒険者ギルドに対する宣戦布告ととらえるぞ。そうなれば… ブラックパール男爵家の取り潰しだってあり得るんだがな」
「なんだと!? 我が家を脅すつもりか! それこそ王家に報告し、冒険者ギルドが王家に反逆を企んでいると報告してやるぞ!」
「ふぅ、もう話にならないな。そう報告したければ好きにすると良い。何度も言っているがここでの事は全て記録されている、王家がどちらの言を信じるかなんて考えるまでもない。
『ブラックジュエリーズ』の4名は罪人として王都へと護送する、後は勝手にやってくれ。さぁ男爵様のお帰りだ、出口まで案内してやってくれ」
良く分からないけどぎゃいのぎゃいの騒いでいた男爵は、ギルド職員に連れられて執務室から出されていった。
しかし職員の人… 貴族相手になかなか大胆だな。もしかしたらあの職員の人も貴族家の出身なのかな? そうじゃないといくらなんでもあんな対応はできないよね。
「すまんなショウ、見苦しい物を見せてしまって」
「はぁ、それで俺がこの場に呼ばれた意味って何だったんですか?」
「ああ、あのブラックパール男爵は典型的なゴミクズ貴族だからな… あんな奴がいるんだってところを見せておこうと思ってな」
「ええ? 見る必要ってあるんですか?」
「あるかもしらんぞ? これから結界師のための訓練場を開こうっていうんだ、利益になると知られれば大勢の権力者が実権を握りに来ることだろう。今まで使い物にならないと思われてた職業だ、これが覆るとなると… 多くの貴族が結界師を抱え込もうと思うだろう」
「そんな事になりますかね?」
いやいや、ギルドマスターもちょっと大げさすぎないか? まだ何も出来ていないのにそんな事がある訳が… ねぇ?
誤字報告いつもありがとうございます。




