第40話 ブラックジュエリーズ、転落への道筋2
年内の投稿はこれで終了となります。読者の皆様、良いお年を。
SIDE:ブラックジュエリーズ
「オニキス様! 私達はオニキス様にまとわりつくゴミを掃除しようとしていただけなんです! ですがあのクs… 少年がオニキス様が育成している子であるならば私達はもう手を出す事はありません。
ところでオニキス様、私達のパーティ『ブラックジュエリーズ』に是非とも加入してくださいませんか? 私達はオニキス様に憧れ、いつか追いつき横に並びたいと願っている者だけのパーティなのです。私達がオニキス様を裏切る事など永遠にありませんし、オニキス様が過ごしやすい環境をこれからもどんどん取り入れていくつもりです。いかがですか?」
「嫌よ」
「………」
「「「「…………」」」」
え? 一瞬ですら考える余地も無く即答? え? でも今嫌って言ったよね… それってどういう事なの?
「どうして私が貴女達と組まなければいけないの? 貴女達、この街でどんな風に言われているのか知っている? 「男と見れば即座に喧嘩腰になる」とか、「男が相手なら何をやっても許される、だからその獲物を寄こせ」とか言いながら強奪までしていたらしいわね。
どうして私がそんな連中の仲間にならないといけないの? 私までその悪評が染みついてしまうじゃない。
そもそもの話、ショウ君をクソオスと言った時点で貴女達は私の敵なのよ。
何が気に入らないで男連中を敵視しているのかは知らないけど、いちいち『女性が』とか言わないで欲しいのよね。全ての女性が貴女達に同意しているとでも思っているわけ? 本当にもういい加減にしなさい!」
えええ? どうして怒っているの? オニキス様。
だってこれは女性が女性らしく輝くために必要な行動なんですよ? 男に媚を売っているような女なんて女性とは認めないし、むしろさっさと落ちぶれて男どもの奴隷と化せば良いとさえ思っているわ。
「そう、これは私達が女性として輝くためにやらなければいけない行動、たとえオニキス様とはいえ私達の行動にとやかく言われる筋合いはないわ!」
「は? 急に何を言ってるの? とやかくも何も、貴女達の取った行動はすでに冒険者ギルドの規約に反しているの。悪いけどこれからギルドまで来てもらうわ、どんな処遇になるかはギルマス次第だけどね」
処遇? 私達が? そんなのあり得ない!
私達は今まで男どもに差別を受けてきた女性たちが、これから対等に生きていくために声を上げているというのにどうしてそれがいけない事なの? クソオスどもは今までの贖罪のために私達に従っていればいいのよ! 当然クソオス共に従う名誉男性もね!
ああそうなのね… オニキス様も実は名誉男性だったのね。
「ふふっ、あははは! 全く私ときたら、どうしてこんな人を今まで憧れていたんだろう。こんな人… オニキスだって良く見たら害悪でしかない名誉男性だったじゃない!」
「そ、そうよね! それにこのままだと私達が犯罪者扱いにされてしまうわ」
「そうなる前に… 口封じをしないといけないわね」
「みんなやるよ! たとえAランクだろうと一度に4人も相手にできるわけがないし!」
もういい、こんな人… 殺しちゃえばいいんだ。
強くて美しくて数多の女性冒険者達の憧れの的だったオニキス… 一皮むいてやればただの名誉男性じゃない! 今日まで私達を騙し続けてきた罪… 償ってもらわないといけないわよね、構えを取ることもしないでふざけるんじゃないわよ!
「よし、行くよ!」
「「「了解!」」」
私の掛け声とともに放たれた、セレンディバイトの矢がオニキスに向かって行くのを視認してから、剣を構えて突撃したのだった。
SIDE:ショウ
「うーん… なんか怒鳴り声が聞こえるんだけど。何でこんなダンジョン内で喧嘩を始めるんかねぇ、気になって集中できないんですけど!」
どうやら喧嘩をしている人達… 女性の声が聞こえるからもしかしてさっきのパーティかもしれないが、少し離れているにもかかわらずギャンギャン声が聞こえてきてるんだよね…
いやぁしかし気になるな… 確認だけでもしてきた方が良いのかな? でも藪蛇になったら嫌だしなぁ… ってあれ? 声の調子が変わった? もしかして戦闘を始めたのか? 冒険者同士で?
いやいや、もしそうならマズいでしょう。これは見に行った方が良いかもしれないな… 何か証言とかが必要になるかもしれないし。
あ、でもそうなったらアレか、悪い方がいた場合俺を脅して黙らせようとしてくる可能性もあるのか。
「よし、じゃあ戦闘準備をしながら近づいてみるか。襲われそうになったら即座に気円斬という事で! あ、万が一切れたりしたら危ないから板状のものにしておくか」
いつでも結界を張れるよう準備をしながら怒鳴り声が聞こえた方へと進んで行く、近づいてくるにつれてどうやら最悪の状況になっている雰囲気が… だって、音だけで判断してもすでに戦闘中だよコレ。
ダンジョンの角を曲がり、ついにその姿が目に入る…
「え? オニキスさんが襲われてる? 4対1? これはオニキスさんに加勢しないと! 誰が悪いにしても戦闘だけは終わらせないといけないよね」
と、そんな事を思っていた時期が俺にもありました。
そうですよね、オニキスさんは単独で活動しているAランク冒険者。あんなどう見ても10代半ばの4人組になんてどうこうされるわけもなく…
手こずっているように見えたのは、殺さないよう手加減をしていたからか。剣も弓も魔法までもを回避して、遠距離組から腹パンで倒していく… うへぇ怖いっす。あ、シーフと思わしき人が逃げた! これはやるしかない!
「気円斬!」
斬れないよう厚めにした円盤を逃げた人に向かって放り投げる…
パキィィィン!
「ぎゃぁぁ! い、痛い!」
逃げた女性の膝裏にクリティカルヒット! そのまま前かがみで転倒していく。
うん、これは女性に対してちょっとやりすぎたかもしれない… だって顔から倒れていったんだもん。顔に傷がついちゃったらごめんね?
「ショウ君! 手伝ってくれたのね、さすがだわ」
「オニキスさん… これは一体どうなっているんですか?」
「この子達ね、君を攻撃しようとしていたのよ。あそこの角から魔法でね」
「ええ? 一体何で? そもそもこの人達とは面識すら無いんですけど。でも朝から睨まれたりどつかれたりされたなぁ」
「とりあえずショウ君、悪いんだけど急いでギルドに行って何人か連れて来てくれる? 私はこの子らを見張っているから。さすがに4人を引きずって戻る訳にもいかないからね、最低でも3人お願いね」
「わかりました。オニキスさんの名前を出して良いんですよね?」
「ええ、それでお願いするわ」
何がどうなっているのか分からないけど、とりあえず急いでギルドに行かなくちゃだね!
誤字報告いつもありがとうございます。




