第35話 監査官にイイところ見せちゃうよ?
誤字報告いつもありがとうございます。
朝になった、起きて支度をしよう。
今日はギルドの監査官を引き連れてのダンジョンアタックだ、滑って転んだりしないようにね!
とはいえ、一体どこまで俺を観察するつもりなんだろうね… 適当にゴブリンキングを倒したあたりで帰ってくれるのかな? 俺としては知らない人と長時間一緒にいるなんて緊張するから嫌なんだけどね… どうなんだろう。
支度を整えて部屋を出る。オニキスさんは… いないな、こんな早くから動き出してるんだからAランクってすごいよな。
通いのメイドさんから朝食をもらい、パパっと食べたらギルドに向かうとしようかね。
「あ、おはようございます」
「おはようショウ君、今日はよろしくね」
「はい。ところでどれくらい見せればいいんですか? ゴブリンキングくらいですか?」
「そうねぇ… まぁゴブリンキングは確かに指標になるからそのくらいかしらね」
「そうですか! じゃあすぐに終わりますね!」
ふぅ~これが聞けて一安心だよ、ゴブリンキングまでだったら急げば2時間程度で辿り着くし、戦闘に至っては2分もいらないからね! そこで別れて後はじっくり新技を絡めた戦略を整えよう。
後はアレだな、新技の名前だよ名前。もう面倒だからブーメランでもいいかってなりかけているんだけど、やっぱり格好良い名前の方がモチベ上がるもんね。
そんなこんなでダンジョンへと出発する事になる。メンバーは俺と監査官の2人となぜかギルドマスター… これは帰り道の護衛を兼ねているとの事だけど、ギルドマスターが出張って良いのかねぇ。まぁ俺が決められる事ではないから放っておいても良いよね?
「じゃあ最短ルートで5階層まで行きます、それでは!」
意気込んで出発となった訳だけど、まぁなんといいますか… 朝一の場合はダンジョンに入る冒険者が大勢いるので、その流れに沿って行けば出てくるゴブリン程度なら前を進む冒険者達が鎧袖一触で消し飛ばしてくれるので猛烈に楽なのだ!
そして欠点もしっかりとある。もちろんそれはゴブリンキングの部屋前での順番待ちだね… 奥に入っていく冒険者だと強いから、1戦に何十分もかからないけど朝一だけはかなりのパーティがいるから結構待たされることもある。
5階層に着くと、一度脇に寄って後続のパーティを先に進ませる。まぁ俺も討伐にかかる時間は早い方だと思っているけど今日はゲストがいるからね、ギルドマスターの許可も取ってあるから人気が無くなるまで少々休憩タイムだね。
「よし、もういいぞ。早速ゴブリンキングを討伐してもらおうか」
「分かりました、それでは行きましょう」
ギルドマスターからのGOサインが出たので、俺を含めた4人がゴブリンキングの部屋に入る。3人は入り口付近で待機してもらい、ゴブリンの編成を確認する。ふむふむ? ゴブリンナイト5体にゴブリンアーチャーとゴブリンシャーマンが2体の編成か。
「そりゃ!」
名前の無い新技を、後方に控えるゴブリンアーチャーに向けて2枚飛ばしながら、俺を迎え撃とうとしているゴブリンナイトと槍を交える。ゴブリンアーチャーに攻撃が当たったのを確認すると即座に残りのゴブリンシャーマンに目標を変える。その間に槍を使ってゴブリンナイトに攻撃しつつも牽制を続ける。
「グギャァ!?」
「よし、ストライク!」
ゴブリンアーチャーとゴブリンシャーマンの無力化に成功したので、ここからは一気に攻め立てるよ!
「次元断!」
パキパキィィィ!
どうよ! 今では次元断を2枚同時に扱えるようになったんだぜ!
よしよし、どんどん行くぞ!
その後も手早くゴブリンナイトを討伐して、ゴブリンキングとのタイマンの場面を作り出す。ゴブリンキングは怒り心頭という様相を見せていたが、まぁ俺には関係ないね!
「次元断!」
一気に詰め寄り、自慢の次元断でとどめを刺す。そして戦闘は終了した。
「終わりました。今日は見られているという事でゆっくり戦いましたが、普段なら1分そこそこで終わりますね」
「そ、そう。それにしても随分と面白い戦い方をするのねショウ君は、最初に投げつけたアレは結界なの?」
「そうです、まぁすぐに割れてしまうんですけどゴブリン程度ならさっきみたいに昏倒させるくらいはできるので」
「そしてゴブリンを両断していたあの技… あれも結界よね?」
「そうですね、今のところ7階層のウリボアまで一撃で倒せています。一撃で倒せない魔物が出て来たら工夫をしなくちゃいけないかもですが」
「そう… いや、正直ここまでとは思わなかったわ。良く考えたものね、こんな戦い方を」
「そうですか? まぁこの街には結界師だからといって蔑んでくる人がいなかったから、俺も焦燥感無くゆっくりと考えられたからじゃないでしょうか」
俺の言葉に監査官の2人は考え込むような仕草を見せる… まぁこの2人も結界師を相当侮っていたタイプだったんだろうね、ダンジョンに入って大丈夫なの? って態度が見え見えだったし。
「まぁ俺はオニキスから報告は受けていたからな、どんな感じなのかは聞いていたから驚きはしないが… しかし威力の方は大概だな、あんなに綺麗に両断するとは思わなかったぞ」
「ありがとうございます?」
「よし、ひとまず後続のためにボス部屋を出ようか。話はそこでだな」
そして5階層をクリアして部屋を明け渡した。
「ショウ君はこれからどうするの?」
「俺ですか? 今日は7階層に行ってウリボアを狩りながら技の連携とか調整とかしようと思っていますけど」
「なるほど、了解したわ。ではギルドマスター、我らはこれで戻りましょうか」
「そうだな、俺も仕事があるし… じゃあショウ、気を付けて狩るんだぞ?」
「分かりました、お疲れ様でした」
ふぅ、俺が冒険者になってから間違いなく最大級のイベントがようやく終わったか。コミュ障のつもりは無いけれど、大人ばかり相手にしてるとやっぱり疲れるね。まぁ同世代の冒険者もいるにはいるんだけど、そいつらはそれぞれパーティを組んでやっているからなかなか会う事はないんだよね…
まぁいい! それじゃあ技の名前を今度こそ決めてしまおう!
さて… 少し移動をしてから後ろを振り返ってみる。うん、ギルドの関係者はみんな引き返したみたいだね? じゃあちょっと7階層に行く前に名前だけ考えてしまおう、やっぱり技名を言いながら使うと盛り上がるもんな!




