第32話 上手くいかない…
誤字報告いつもありがとうございます。
SIDE:オニキス
「ふぅ、やっぱりダメね。既存の建物では訓練場になり得る広さが無いし、この街も最大限発展してしまっているから土地が無くて新築も出来ない… 大見得切って出てきたのにこれじゃあ帰れないわ」
ダンジョンで栄えている町だから、もう防壁内部に余っている土地はほとんどない状況。こうなってくると防壁の外に作るしかない? まぁ街のすぐ近くであればそれほど魔物被害は無いのだけど、外に建てると魔物以外にも気を使わなくてはいけなくなるのよね… 盗賊とか街に入れない家無しとか。
しかも街の外とはいえ、わざわざ新築するという事になれば代官を通して領主の許可が必要になる… 実はこれが一番面倒なのである。
この町を治める領主、ガーネット子爵は良くいえば街の事を良く考え、安全対策にはちょっとうるさい感じなのだけど悪くいえば保守に偏りすぎていて、街の評判に関わるような事には徹底的に許可を出さないタイプだ。まぁ好き好んで街の外に訓練場を建て、そこを何者かに襲われて全滅したなんてこの街の治安が悪いと思われるようなものだから仕方のない事かもしれないけど… どうしようか。
土魔法使いを数人雇い、強固な防壁を作って安全を確保するとか? でもそれで許可が下りるかどうかは別問題、これは最悪実家のつてを頼るしかないかもしれない… あ、ギルマスの権限でどうにかならないか確認した方が早いわね。
「ショウ君には申し訳ないけど、これは結構時間がかかってしまいそうね。仕方ない、一度ギルドに戻りましょうか」
ギルドに着くと、真っすぐギルドマスターの執務室へと入っていく。これは私がAランクだから許される事であり、普通の冒険者がやると即刻取り押さえられてしまう案件である。
「義兄さん、ちょっと頼みがあるのだけど」
「うぉっ! 音も無く入ってくるんじゃねーよ! びっくりするだろうが!」
「色々探してみたんだけど、やっぱり訓練場を建てれるほどの土地が余ってなくてね」
「おい、話を聞けって」
「それでね、義兄さんの権限で防壁の外に建設許可を取れるかどうかを聞きに来たのよ」
「む? ああ、結界師の訓練場の話か。まぁこの街はすでに建物がびっしり建っているからな、規模にもよるが確かに訓練場を建てるとなれば難しいだろうな。それで防壁の外にか? 建設プランは出来ているのか?」
「いいえ全然、ついさっき思いついたんだもの出来てるわけがないでしょう?」
「こいつ…」
全く、額に青筋を立てて何を怒っているのかしらね… 本当に年寄りの考える事は良く分からないわ。
「俺は年寄りじゃねぇ!」
「あら、何も言ってないじゃない」
「そんな事を考えていそうな顔をしていた」
「そう…」
あらやだ、意外と鋭いのね。でももうすぐ30歳の義兄さんはすでにおじさんよ!
「それでどうなの?」
「うーん? 街の外にか… 難しいな、あの領主が何と言うか分からんしな。そこそこ高めの防壁を作ればもしかしたらって感じかもしれないな」
「やっぱりそうなのね、土魔法使いを雇うしかないわね。じゃあちょっと家に帰って図面を書いてみるわ、書き終わったら持ってくるから交渉よろしくね」
「おい、俺だって暇じゃねぇんだけど?」
「これくらいギルマスの業務範囲だと思うけど? じゃあそんな感じで」
さて、何か言われる前に立ち去ってしまいましょう。
昨日は家に戻れなかったから、今日くらいはショウ君を見ながらゆっくりとお酒を飲みたいわね。まぁ図面が先ですけど…
SIDE:ショウ
腹時計を頼りに今日もダンジョンから帰還した。
外に出てみるといい感じで夕方だった、これならギルドもそんなに混んではいないだろう。今日は結構稼ぎがあるからね! サクサクと終わらせたいところだよ。
「お願いします!」
「お帰りショウ君、素材はここに置いてね」
「はい!」
今日の収穫は、ウリボアの魔石が14個とお肉が6個。その内お肉1個だけは孤児院に持っていくのでギルドに売るのは5個だけだね。
他にはブラッドウルフの魔石が21個とお肉が7個、これは全部売ってしまうつもりだ。
「今日はウリボアが結構あるのね… それじゃあウリボアの魔石と肉で4500ギル、ブラッドウルフの魔石と肉で2730ギル。合計7239ギルね、今までで最高額じゃない? すごいわね!」
「ありがとうございます! 例の賞金でマジックバッグが買えたからですね。ちなみにギルド経由でマジックバッグって買えたりするんですか?」
「マジックバッグを? それは今持っている物より容量が大きいやつって事?」
「いえいえ、小さくていいんですけどね。この屋台1台分程度の物で」
「そうね、まぁ商業ギルドに口を利くくらいなら可能だけど、結局取引となると本人がやらないといけないから紹介すると言っても微妙なところね」
「そうですか… ありがとうございます」
お金を受け取りギルドを後にする。
しかしそうか、ただ口を利くだけで商談そのものには関与しないって事であれば… 俺のような子供が買いに行ったところで足元見られて終わりだよな。最初は俺みたいな奴がお金を持っているのか疑うだろうし、お金を持っていると分かれば搾り取りに来ると思う。
「なかなかどうして上手くいかないもんだな。まぁマジックバッグそのものは需要は高いだろうから在庫はあるかもしれないが、足元見られないで買うにはどうすればいいか考えないといけないかも」
まぁ要するに俺個人だと舐められちゃうって事だよね。これはアレか? オニキスさんを誘って買い物に行けば回避できる問題か?
オニキスさんはこの街では有名なAランク冒険者だし、そんな人を相手にぼったくりなんてさすがにしないだろう。次に会えたら相談してみようかな…
足早に孤児院に向かい、ウリボアのお肉を寄付する。ウリボアは結構美味しいのでとても喜んでもらえたな、まぁ子供はいっぱい食べるからお肉はいくらあっても足りないようなことは言っていたけど、さすがに過剰に与えるのは良くないだろう。お肉と同じだけ野菜は食べないとね!
今日の用事を済ましてオニキスさんの家に戻るのだった。




