第29話 「あきらめろ」
誤字報告いつもありがとうございます。
「なるほど、だから以前家を探すなんて言っていたのね? これはちょっと楽しみが増えたわね」
「ほほぅ、結界師による結界師のための訓練場か、まぁそういう事ならギルドとしても支援が出来るかもしれないな。そういえば報告があった気がするな、フローライトから」
なるほど、確かにフローライトさんには結界師の冒険者が来たら… なんてお願いしたけど、そんな事も日誌かなんかに書かれちゃってたんだね。まぁ知られて困ることではないんだけど。
「じゃあアレね? そこそこ広めな土地に大きめの建物があればいいのね? 分かったわ!」
バタン!
「あ…」
「まぁ諦めろ、あいつは昔からあんな感じで思い立ったら即行動するタイプなんだ。しかしお前も災難というか… すっかり気に入られちまったようだな、まぁあんな奴でも俺の嫁の妹なんだからよろしく頼むぞ?」
「ええええ? ギルドマスターの身内だったんですか? って事はギルドマスターも貴族ですか?」
「まぁ一応な。この街からずっと南にあるサーペンティ伯爵家の三男だが、今の立場は騎士爵というやつだ。まぁ孤児には難しくて分からないかもしれないがな」
「騎士爵…」
「とりあえずどうする? 金はギルド預かりで良いのか?」
「あ、はい。3000万ギルって聞いていますが」
「ああ、それで間違いない」
「じゃあ自分に1300万、オニキスさんに1700万でお願いします」
「わかったが、その内訳についてはお互い承知してるんだよな?」
「はい、オニキスさんとはその分け方で話がついています」
「よし、じゃあこれはギルドで預かっておく。オニキスの奴が動いた以上そのうち土地と建物を見つけてくるだろうから覚悟しておくんだな」
ギルドマスターがニヤニヤしながら言ってくる… まだ考えもまとまっていないというのにどうしてこうなった。
しかしまぁなるようにしかならないだろう。とりあえず今は正確に教えられるために技術的な理解を深めつつ、新技についても考えていくとするかね。
それに… マジックバッグの容量を確かめなければ! いざダンジョンへGO!
「次元断っ!」
「グギャァァァ!」
よし、もうすっかり作業となってしまった感じがするな、ゴブリンキングも。
5階層ボス部屋も1分と少しで全滅させる事が出来るようになったし、その内秒殺とかもイケそうだな… まぁそこに拘りは無いけどね。無駄な拘りを持って怪我をしたなんてアホのする事だし、そんな事をするくらいならちょっぴり時間がかかっても安全にやる方がお得だぜ。
魔石を専用の袋に入れてっと… よし、今日もお肉を狩り集めるとしますかね! できればウリボア大量でお願いします!
SIDE:ギルドマスター
「ねぇフローライト、そういえば結界師のショウ君とはどうなってるの? オニキスさんが随分べったりのように見えるんだけど」
「うぬぬぬぬ…」
「なるほど、上手くいっていないって事なのね」
「仕方ないじゃない! あっちは冒険者で自由に動けるんだから! 私はこうして受付で待つ事しか… よよよ」
「よよよ… じゃないと思うんだけどねぇ。色々と頼まれてたんじゃなかった?」
「頼まれてはいるんだけど、難しい内容ばかりなのよね。家が欲しいとかだったり結界師の冒険者が来たら紹介してほしいとか…」
「なるほど? 家はともかく結界師の冒険者は確かに難しいわね、この街だってそんな条件に見合う人なんてショウ君しかいないのにね」
「そうなのよ… そもそも結界師の人は冒険者にならない場合が多いからね、なかなか進展が無いわ」
書類を持って受付にやって来ると、看板娘の受付2人が私語を楽しんでいやがる… まぁ暇な時間帯だからとやかくは言わないが、それにしてもこの話題はショウの事だな? アイツは意外と人気あるんだな… でもまだガキだぞ? こいつらアレか? 所謂ショタコンってやつか? オニキスと同類なのか? まぁいいか、他人の趣味なんざ俺には関係ねぇ。
「おら、暇そうだから仕事をくれてやる。しっかり働けよ」
「ギルマス! 暇そうなんかじゃなくてひと段落着いたところなんです!」
「そうですよ、休憩時間すらもらえないというのですか? なんて職場なんでしょう」
「お前ら… あーそうそう、ショウの事だがな… なんか家とか頼まれてたんだろ? アレはキャンセルでいいぞ、結界師の冒険者の事だけ頼むわ」
「え? どういうことですか?」
「どうもこうも… さっき金の件で話をしてた時に使い道について聞いたんだが、大きめの家を買って結界師のための訓練場を作りたいとか言いやがってな… まぁガキの癖に色々考えてるもんだから驚いたもんでよ。そしたらオニキスの奴もそれを聞いていてな、アイツが土地と家を探しに出ていったから家の方は解決するだろうって事だ」
「結界師のための訓練場ですか… それで結界師の冒険者が来たらって話をしていたのね、あの子12歳よね? どこまで考えているんだろうね」
まぁ確かにな、見た目だけで言えば12歳にしてはまだ幼く見えるし体つきも貧相なもんだ。しかし頭の回転はやたらと早そうだし考え方も随分と子供離れをしている… オニキスが言っていたが計算も速くて正確だったとか、どこかの貴族の落胤だって言われても納得できそうな整った顔… これは孤児になった経緯とか調べた方が良さそうか? いや… 面倒だしオニキスにやらせるか、アイツなら嬉々として調べるだろう。
「それにしても結界師専用の訓練場か… 興味あるな」
「そうですねギルマス! なんでもゴブリンキングですら一撃で仕留められるようなスキルを使っているそうなんで、それが広まったら結界師の評価が変わりますよ?」
「そうだな、不遇職のトップクラスからいよいよ転落する事が出来るのか、楽しみではあるな。まぁしかし、それをやるにしてもまだ先の話だろう。ギルドとしても有能な冒険者が増えるんだったら歓迎するところだし、少しばかりの協力も考えてはいる。そのうえで何か良い案があれば教えてくれ」
「「分かりました!」」
さてさて、停滞したこのご時世に何か大きな風でも吹かせるのか… 非常に楽しみなんだが、オニキスの奴が邪魔をしそうな気がしてならないんだよな… アイツ、子供を盛大に甘やかす癖があるから。




