第28話 憧れのマジックバッグを…
誤字報告いつもありがとうございます。
「朝だ… 考え事の最中に寝てしまったのね」
どこまで何を考えていたのかを思い出す… ん? なんだったっけ?
まぁいいか、とりあえず後で考えた事を何かに記録しておこう。一晩寝たら忘れるなんて困っちゃうだろ! 大事なことだったらどうするんだ! なんてね。
覚えているのはゴブリンだけじゃ飯は食えないって事だな、まぁソロならイケるかもって条件付きだが。まぁとっとと経験を積んで6階層に行ければ解消すると思うから、早急に5階層での狩りが出来るようにって感じだな。
よし、他の結界師の事を考えるのも大事だが、何よりもまず俺自身のスキルアップが先だよね。誰かに何かを教えると言っても、理屈が分からないんじゃ教えるのも大変だ。バーンとやってビューンという説明で済めば良いんだけどさすがにそうはいかないだろう。
朝の支度を済ませて部屋を出る、時間的にオニキスさんも起きているだろう。朝食を食べたら今日も6階層で狩りだな。
「おはようショウ君、夜遅くまでかかったけどようやく見つけたわ… このマジックバッグを使ってちょうだい」
「おはようございます? って、昨日の話は有効だったんですか?」
「もちろんよ。これで途中で地上に戻る手間も省けるし、ショウ君が成長する時間も稼げると思うのだけど… どうかな?」
「ええと、おいくらですか?」
「そうね… 正直に言えば譲ってあげたいのだけど、それだと男の子として不満なんでしょう? だけど私自身がもう使っていない… 今持っているマジックバッグの劣化版だからそうね、昨日言った通り300万でどうかしら?」
「300万ですか? それは俺としたら嬉しい話ですけど、普通に買おうとすれば1000万ギルはするんですよね?」
「買おうとしたらね、だけど売る側だとそんな金額では売れないのよ。だから200万、いいんじゃない?」
「あの… さくっと100万ギル値引きされているんですが…」
「まぁ気にしたら負けよ。そうそう、昨日ようやく他の町で出されていた初心者狩りの懸賞金が届いたらしいわね、一緒に受け取りに行きましょう。その中から出してくれればいいわ」
「あ、そうなんですか? すっかり忘れてました。結局どのくらい出てたんですか? 懸賞金」
「それなんだけど… 私がギルマスから聞いてた話よりも随分と少なかったわね… 王都を含めた4か所のギルドから合計3000万ギルとの事よ、半分に分けたとしたら?」
「1人1500万ギルですね」
「正解。やっぱり計算が早いわね! じゃあそこからマジックバッグ代200万を取り引きしたら?」
「俺が1300万ギルでオニキスさんが1700万ギルですね」
「正解だけど、これは驚くほど計算が早いわね? 普通に事務職で高給取りになれるわよ?」
「そうですかね? でもあまり興味無いですね」
うん、事務職というのは確かに安全な職場なのだろう。でも俺としては、このファンタジーな世界で色んな事をしてみたい。もちろん結界師がどうのっていう風評を覆す事もそうだし、他の町に行ったりパーティ組んだり… まぁあるわけよ!
しかし1300万ギルも手に入るのか… なんというか危険ではあったけど物凄い見返りで他人事のように感じるね。でもこれで所持金が合計2000万ギル… 大金じゃん! 一生遊んでとはさすがに無理だけど、更に稼ぐための準備金には十分な金額だ。やはりこれは結界師のための道場的な宿舎的な建物をゲットするべきなんだろうかね… ああでも、それをやるとこの街から離れられなくなっちゃうか、何とも悩ましい。
「それじゃあギルドにお金を受け取りに行こうよ、一緒にね」
「あ、はい」
おっと、1人で考えに耽ってしまってた。まぁ受け取りって言ってもギルド貯蓄に直行なんだけどね… 普段使うお金はちゃんと袋に入れて持ち歩いているし、あまり。大金持ち歩きたくないし
というかアレだ! マジックバッグの使い心地を確かめないといけないね!
屋台1台分って言ってたから多分1~2立米で間違いないと思うけど、実際どのくらいバッグに詰め込んだら満杯になるのかは把握しておかないとダメだしな。まぁ6階層で狩っている分には多少溢れるくらいは平気だから急がなくても良いんだけど…
そんな訳でギルドに到着し、そのまま建物の奥へと入っていき個室へと通される。
「おう、また会ったな結界師のショウよ。話は聞いてるんだろ? どうだ? いきなり金持ちになった気分はよ」
「お久しぶりですギルドマスター、いきなり金持ちと言われても… 普通に貯蓄しますよ。その内大きめの家を買って結界師の訓練場みたいなものを作るかもしれませんけど」
「ほほぅ… それはなかなか興味があるな。そういう金の使い方を考えられるんなら心配はいらないかもしれないな… まぁよくあるだろ? 急に金持ちになった奴っていうのは、目に見えて散財を始めて悪い連中に目をつけられる。そしてあっさりと殺されて全財産を奪われるなんて話は」
「そうですね… さすがにそんな目には遭いたくないですね」
ちょっと大きめの袋を持ったギルドマスター… こんな物言いでも俺の事を心配しているみたいだな、まぁ確かにギルドマスターが言う小金持ちの末路的な話は本当によくある事なのだ。
何かの間違いで大手柄を立ててしまった若者とか、ついつい儲かりすぎちゃった商人とか、教材になりそうな残念な話は本当にたくさんある。人の振り見て我が振り直せの精神がないと、堕落への道一直線だもんな…
「ちょっとショウ君、その訓練場? そんな話は初めて聞いたんだけど?」
「え? まぁ最近考えるようになったんですよ。結界師が偏見の目で見られないためには自力で狩りが出来る事を見せなくちゃいけない、でも前例が無いから戦い方が分からないとなれば… 当然それを教える人がいなくちゃいけない。
でもダンジョンで訓練してたらゴブリンの姿を見て萎縮してしまうかもしれないし、そうなれば落ち着いて練習も出来ないと思うんです。だからこそ、最低でもとっかかりだけでも安全な場所で訓練できればいいのかなって思いまして」
「そうなのね… なるほど、確かに面白いかもしれないわね。その話、私も一枚噛ませてもらうわ!」
「ええ? 一枚噛むってどういうことですか?」
「それはもちろん出資にしろ運営にしろって事よ。ショウ君が訓練場の主になるんだったら私は女将さんってところかしらね?」
「ええええ?」




