第27話 厳しい現実
誤字報告いつもありがとうございます。
「くそぅ、ウリボアってなかなか出会えないんだな… 結局朝一で遭遇した奴以降一度も見つけられなかった」
とはいえ、ブラッドウルフのお肉はすでに7個拾えた。魔石に至っては20個もあるぜ! まぁ3体ほどでつるんでいるから探す手間はそれほどでもない、戦闘の手間はすごいけどね!
腹時計で感じた具合だと、そろそろ午後の中盤といった感じだと思う。荷物も重いし今日はこのくらいで撤退しようかな… お肉は5個ギルドに売って2個を孤児院に持って行こう、そうすれば先生方が上手く処理してくれると思うし、以前の寄付で塩とかも買っているだろうから余れば干してくれると思うし。
いくら子供達がたくさん食べたからといってもこの量では… 腐る前に消費するのは厳しいかもな。うん、干し肉にしてもらうのが一番だな。
ガッツリと重くなったリュックを背負い直し、帰路につくのだった。
ギルドでの売却を終えて孤児院へと向かう…
「うっひっひ、朝一の780ギルに加えて2度目の分はなんと2350ギル! 合計で3130ギルも稼いでしまった… お肉の売却益最高!」
確かにブラッドウルフを狩るのは大変だけど、次元断のおかげで当たればワンパンだっていうのは非常にありがたいね。先日のアイオ達の狩りを見ていて分かったけど、通常俺達のような新人では、魔物を一撃で倒せるというのは余程運が良かったかよほど良い武器を持っているか… もしくは強力な魔法があるかにかかっている。地道に削ってとどめを刺すというパターンになる訳だが、そうなると当然動く量も増えるし体力だって削られていく。今回のように1日で22戦も戦闘を行うなんて出来ないもんな。
「うん、そう考えると結界師って全然不遇職なんかじゃないよな! 今後はもっと新しい技とかも考えてコストを削減できるようにしてみよう」
この場合のコストとは、主に魔力と体力だね。それができれば1日に狩れる数がぐっと増えるし稼ぎも増える… いいじゃないか!
孤児院にて4~5㎏もある肉塊を寄付し、オニキスさんの家へと戻る。当のオニキスさんはずっと家にいたらしく、何やら掃除道具を手にして疲れた顔をしていた… 一体何をしてたんだろ?
その後、夕食とお風呂を済ませて明日に備えてベッドに入る…
「さて、現状出来る事と今後できそうなことを確認していくか」
今現在、俺が結界師としてできるとといえば… 普通に前面に結界を出す。これは特に意識していなければ大体90センチ幅、高さ180センチ程の板状の結界を張る事が出来る。
恐らく手を突き出しながら発動する事が多いからなのか、これも大体前方1メートルちょっとのところに出現するようだ。
後は自分の経験で感じた事だけど… 結界の強度はゴブリンによる棍棒攻撃にすら耐えられないほど貧相なもので、サイズ的に例えるなら薄ベニヤを前方に置いて防御するような感じだ… まぁ確かにそれでは満足な防御なんて出来やしないだろう、大きさはともかく。
次に結界を出せる数なんだけど、こればかりは他の結界師の事が良く分かっていないため憶測にすぎない… 熟練度、つまりはレベル依存なのか魔力依存なのか… 現状の俺では2枚しか出せないんだよね。
まぁ2枚出せれば、前方に限った話だけど三角形の形を取れば、面で受けるよりも受け流すような感じとなり弓矢や魔法の方向を変えることはできる。ぶっちゃけこれはかなり有用だ。
そして偶然の産物だったけど、三角形にした頂点部分… 結界同士が合体した部分でゴブリンを押しのける事も出来たんだよね、まぁ薄ベニヤで三角形を作ったからといって人間を押しのけられるかってなると…? ゴブリン程度の体重なら出来るのか? まぁこれは良く分かっていないから後回し。
後はなんだ… ああ、結界の向きを変えたりサイズを変えたりできるって事も重要だな。次元断を使用する事を考えれば、これが出来なければ運用は無理だと言えるだろう。
向きを変えなければ魔物の体に結界を通す事は出来ないし、いちいちフルサイズで次元断を放っていたらいつか必ず味方だったり自分の体だったりを巻き込んでしまうだろう。
「つまり、フローライトさんに頼んでいる他の結界師が俺のところに来て、次元断を教えてあげるにはいきなりダンジョンはマズいという事だね」
俺自身はダンジョンでぶっつけ本番になってしまったけど、武器を持っていたしそれなりに鍛えていたから対応できた事。不遇職だと言われている結界師の職に就いたとなれば、普通であればダンジョンは諦めて他の仕事を探す事だろう。つまり体を鍛えていない場合がかなりの確率で想定できるという事だ。
なので、次元断を教えるにあたってまずやらなければいけない事は体力作り! それと並行して結界の向きとサイズを変える事を練習する事!
ぶっちゃけゴブリンであれば体力をつけて硬めの盾を持ち、盾でゴブリンの攻撃を受けながら次元断を使えば倒せるだろうし、何よりも返り血を浴びないで済むという事だ。これは重要。
これさえ出来れば遠距離攻撃を仕掛けてくるゴブリンアーチャーやゴブリンシャーマン以外なら対応可能だと思う。もちろん複数のゴブリンを相手にすることが前提だから、ソロはだめだね… せめて結界師2~3人でパーティ組まないと。
「あーでも、そうなるとゴブリンの魔石だけじゃ収入が少なくなるのか。俺の場合はソロだったから、それと宿なしでやってたから生活できていたわけだしなぁ」
うーん、やっぱり難しいのか? 結界師がダンジョンで生計を立てるという事は。
ああでも、結界師が複数人いるのならゴブリンの前衛を相手にする人と、後衛を相手にする人と分けれるからイケるかな?
ギルドで紹介してもらった安宿が1泊300ギルだったから、食事代を含めても最低でも1日1人500ギルは稼がないと苦しいだろうしな… 見通しが甘かったか。
仮に3人パーティだったとして、1人1日500ギル稼ぐったら通常ゴブリンなら150体、ゴブリンリーダーだけだとしても50体も倒さないといけないのか… 現実的じゃないな。
「やっぱりソロ狩りしかないのか? それともある程度経験を積んだら5階層まで降りて狩るとか? でも戦闘経験そのものが足りていないんだったら急には無理だろうし… ちょっとこれは大きな壁があったな」
どうしようかと悩んでいたら、いつの間にか寝てしまっていたようだ。




