第26話 プラス20センチ
誤字報告いつもありがとうございます。
ふぃ~、何とか誘惑を振り切ってやったぜ!
でもさ、考えてもみなさいな… 俺は今年12歳になったばかりだから、日本的に考えたら小学6年生なんだよ? その年で成人女性と一緒にお風呂なんて恥ずかしくて無いでしょー! これが母親だったり姉だったりすれば別なのかもしれないけど、さすがに出会って数日の人とはさすがにね。
まぁそれはともかくブラッドウルフと猪… このお肉を先に売ってこよう。それにこの猪の名前は冊子に書いてないから聞いてみないとな。
地上に出ると、オニキスさんはいつのまにか姿が消えていた。まぁ元々一緒に狩りをしていたわけじゃないから仕方ないけれど、神出鬼没だしいなくなるのも一瞬だった。
「よし! まずはお肉を売って荷物を軽くしないとな! 次に狩ったお肉は孤児院に持っていこう」
小走りで街の中に入りギルドへと向かう、まだ朝だから街のメイン通りは商人の馬車でいっぱいなので轢かれないよう気をつけないとね。
「おはようショウ君、今日はこれからダンジョン?」
「おはようございますフローライトさん。朝一でダンジョンに入ったんですがすぐにドロップが出まして、重いから一度売りに来たんですよ」
「あら、それは運が良いのね。じゃあここに出して… え? ドロップ?」
「あ、はい。今日から6階層を探索してまして」
「ああなるほど、でもソロなんでしょう? 1人で大丈夫なの?」
「ええ、ブラッドウルフと猪と戦いましたが特に問題はありませんでした。えっとドロップはこれです」
リュックから2種類のお肉を出し、カウンターの上に置く。
「ふむふむ、ブラッドウルフ1体分とウリボア1体分ね。確かにウリボアの肉は大きくて重いから探索の邪魔になるわよね… じゃあちょっと待っててね」
「はいっ!」
しかし… 俺は聞いてしまった。ウリボア? ウリ坊とボアが合体してるのか? でもウリ坊って猪の幼体の事を指す名称だった気がするんだけど… まぁ日本とは違う世界だからしょうがないのか?
「はいお待たせ、ブラッドウルフの肉が150ギルでウリボアの肉が400ギルね。魔石と合わせて780ギルよ、確認してね」
「おおお、結構高いんですね」
「まぁ肉はいくらあっても困らないからね、そうそう値崩れはしないわよ。だからたくさん持って来てね」
「了解です!」
ぐふふ… お肉の値段が思ったよりも高くて嬉しい誤算だな! まぁあの塊から串肉のサイズに切り取られたらと考えると、串肉は高く感じてしまうな… まぁ手間賃と塩なんかの材料費も含んでいるんだけど。
よし! お肉の値段を聞いたらやる気が出てきたな! もういっちょ行ってみるか!
再びダンジョンに入っていく… 一応周囲の気配を確認してみるけど特に何も感じない、オニキスさんはいないのかな? それともこれくらいでは察知できない? まぁちょっと気になるけどやる事やらないとな。
いつも通りに最短ルートを進みながら5階層へ、そして今日の分を倒しているので空き部屋と化しているゴブリンキングの部屋を素通りして6階層へと降りていく。
しかし5階層のボス部屋… どうやって一度倒したとかの判断をしているんだろうな、それに未討伐の冒険者が並んでいた場合、毎回すぐにゴブリンキングが出るらしいからゲーム的に言うリポップのクールタイムも無いみたいだし… まぁこればかりはダンジョンの不思議の一つだから俺が考えたところで分かる訳無いんだけどね。
「さて、お肉が意外と高値だったからモチベも高いし、目標はウリボアのお肉2個だな! ブラッドウルフは… まぁウリボアが複数回出会えたら置いていくしかないな、もったいないけど」
なんて事を考えていたからか、それとも物欲センサーが仕事をしたのかわからないけど、遭遇するのはブラッドウルフばかりとなった。ちくしょう。
しかもドロップ率は3~4割程みたいだな… あくまで体感だけど。それに1体でうろついているはぐれが全然いなくて3体セットの編成ばかりだった。そしてこれが意外と疲れるもので、なかなかいい連携してくるんだよね。まぁ次元断は2枚出せるから3体だと何とかなるんだけど…
「それにしても、気のせいじゃなければ次元断の射程が少し伸びてる気がするな。ゴブリンキングを倒した時に体が軽くなったと感じたからそれでレベルが上がってたのかな? 一応しっかり確認してみるか」
前回確かめた時の次元断の射程は2メートルほどだった。それを練習して毎回2メートル先の場所に展開する事が出来るようになっている。
まずは2メートル先に普通の結界を張ってみる、そしてそれをグイグイと押し出す感じで… おおっ! やっぱり20センチほど奥に行ったな!
20センチは微妙かもしれないけど、それでも手の届く範囲が増えるのは嬉しい。いいねいいね、どんどん使いやすくなってきてるぞ、俺の次元断は!
そういえばフローライトさんにお願いしていた他の結界師の件、全然話が振られないって事は来ていないんだろうな… やっぱり結界師で冒険者をやる人って少ないんだな。
「よし! ここは俺がしっかりと実績と名前を売って、結界師でも狩りくらいできるんだという事を証明してやれば向こうから来てくれるはず! そのためにも地力を上げていかないとな!」
もしそんな事が現実となり、他の結界師の人が集まってきたとしたら… やはり拠点となる場所は必要になるだろうな。どうしても結界師は不遇職だということもあり就ける仕事もまた少ない、だから宿に泊まれるだけのお金がないって事が十分に考えられるからだ。
でも、俺のように次元断の使い方を覚えて狩りが出来るようになれば少なくとも宿代とご飯代くらいなら稼げるようになるはず… 稼げるようになるまでの間、寝泊まりできる場所はあった方が良いよね! 稼げるようになってから家賃として回収すればいいわけだし、その方向で考えて行こうかな!
いずれ結界師だけのパーティとか、人が増えればクランとかを作っても良いかもしれないな!
そんな大それた夢を描きながら、ウリボアを探すのだった。
SIDE:オニキス
「あれぇ、マジックバッグってどこに入れたんだったかしら… もう使わなくなって数年経つし、忘れちゃったわね」
でも探さないといけない、ぶっちゃけどこにしまったか忘れる程使ってない代物だ、これが無くなったって私には何の不利益も無い。
というか、そんな使っていない物でもショウ君の役に立つならぜひとも譲ってあげたい。
「でも男の子だから譲ると言っても受け取ってもらえないだろうね… だから格安で売ってあげて好感度爆上がりを狙いましょう!」
自宅の物置の中を捜索するのであった。




