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第25話  「最初からだけど?」

誤字報告いつもありがとうございます。

「次元断!」

「ブモ!?」


 パキィィィン!


 一直線に突撃してきた猪… その前足を断つように次元断を展開し、切断する。猪は走ってきた勢いのまま前のめりに倒れ込み、ダンジョンの壁に激突する。

 今がチャンスだ! 次元断で胴体部分を両断できるか試してみよう!


「もういっちょ、次元断!」


 前足を失って立ち上がる事の出来ない猪の背後から、胴体部分で硬そうなところに次元断を放つ。いつものように結界が胴体に重なるように展開され、即座に割れていく…


「お、特に問題無く斬れているね… これなら直接胴体を狙っても良さそうだ」


 詳しい原理や理屈なんて分からないが、俺の次元断は猪の硬そうな骨まできれいさっぱりと切断できているようだ。うん、さすが俺の必殺技だね!


「お、今回もドロップが… って! なんだこれはー!」


 今日の2戦目で現れた猪からもドロップしたんだけど、さっきのブラッドウルフのお肉の倍以上の大きさがあるぞ! という事は当然…


「ぐっ、すげぇ重いんですけど。これはアレだな、戦略的撤退しかないな!」


 2戦連続でのドロップ… うん、すごく嬉しいよ? でもね、こんなの持ったまま狩りなんて出来ません!

 まさかの2戦で撤退だなんて… でもやられて退くんじゃないから問題ないよね? 魔石を含めて一度ギルドでいくらで買い取ってくれるのかも確認できるし、急いで戻ろう!


 しかしこうなると、未だ見たことの無い噂の魔道具… マジックバッグがどうしても欲しくなってくるね。チラッと聞いた話では、1立米程度入ると言われる物でも1000万ギル前後するのだとか… 1立米ならそれほど多くは持てないけれど、重量を気にしなくて良くなるのは素晴らしい。


 ちょっとギルドに行ったら聞いてみようかな… 手に入れるにはどうしたらいいのかとか、どこで買うものなのかとか色々ね。


「あ、でもそうなると家が買えなくなるな…」

「どうしたの?」

「うわぉ! オニキスさん?」


 急に声をかけられて驚いたが、その声の主は間違いなくオニキスさんだった。今日も見に来ていたってことかな? Aランクって暇なの?


「今ちょっと聞こえてきたけど… ショウ君は何? 家を買うつもりなの? それは必要なくない? 私の家にいれば良いと思うんだけど?」

「ええ? いや、あの…」

「間違いなくお金の無駄になるわね。まぁもう少ししたら例の初心者狩り… 別の町で出されていた賞金が来るはずだからまとまった収入はあるけれど、家は買わなくても良いと思うわ。それに何? 家の他にも買いたいものがあるの?」

「いや、あの…。とりあえず一度ギルドに行こうと思ってたので、移動しませんか?」

「それもそうね… 見ていたけど連続でドロップしていたものね、それを背負ったまま戦うのは厳しいと思うから良い判断だわ」

「………。いつから見ていたんですか?」

「最初からだけど?」

「Oh」



 うーん、なんと言いますかオニキスさんってどうも俺の事を甘やかそうとしている感じがするよね? やっぱり俺と同じくらいの弟とかがいるんだろうか… 俺だって甘やかされるのは嫌じゃないけど、なんというかどうにも違うって気がするんだよなぁ。まぁ実際知り合ってからまだ日も浅いし、いまいち掴めない性格の事もあるしね。


 この様子だと俺がマジックバッグが欲しいっていったら… もしかして買ってくれたりするのかな? でもオニキスさんならやりそうなんだよな。

 しかし俺だって自立している健康男子! ロマンな装備は自力で手に入れたいという野望はある! やっぱり自分で苦労して手に入れた物って愛着が湧くから大事にするしね…


 よし、マジックバッグの件はオニキスさんには言わないでおこう。


 しかし… オニキスさんに話術で敵う訳が無かったのである。しょぼーん


「なるほど、確かにこれ以降の階層で狩りをするなら間違いなくあった方が良い装備ね。たった数回の戦闘で引き返さなくちゃいけなくなると、収入にも影響が出る… そういえば家に使っていないマジックバッグがあったはずだわ、容量は全然少ない物だけど… それならショウ君に譲るわよ?」

「いえいえいえいえいえいえ! さすがにそんな高級品を譲り受ける事なんてできませんって! ちなみに容量は正確にどのくらいなんですか?」

「そうね… いつもダンジョンの前にいる串肉の屋台くらいかしら」

「ふむ、という事は1~あっても2立米ってところかな? ちなみに売ったらどれくらいするものなんですか?」

「売ったら… それならいいとこ500万そこそこじゃないかしら。まぁ買い取った方は綺麗に掃除して1000万以上で売るんでしょうけど、もうぼろ儲けよね… そう思うとなんだか売る気にならなくてしまっておいたのよ」

「なるほど… まぁ欲しい人からすればそれでも買っちゃうんでしょうね」


 うーん、やっぱり買取と販売価格の差が酷いんだな。まぁ日本のように安心安全に輸送なり販売なりできないからそうなってしまうんだろうけど… それでも500万で買い取って1000万以上で売るっていうのは納得いかんよね。


「なるほど、ショウ君は真面目な子だもんね、譲り受ける事はできないけど買い取るなら良いって事かな? それなら奮発して300万で売ってあげるわ! まぁ私が使っていた中古で良ければだけど」

「え!?」


 さ、300万だってー!? 確かにその値段ならギルドに行けばすぐに買える… けど、果たしてそれで良いのか? オニキスさんに対する借りが大きくなりすぎないか? さすがに普段からお風呂まで使わせてもらっていて、家賃を払うって言ってるのに受け取ってもらえていないというのにそれは…


「ふふっ、ショウ君は真面目なうえに男気もあるのね、でもいいのよ? 私はAランクで、正直言ってかなり稼いでいる部類よ。私が好きでやっている事なんだからそこを気にされると私も困ってしまうし、ここは子供らしく甘えてくれた方が嬉しいんだけど?」

「いや、でも300万って…」

「ふむ、300万で納得してくれないなら黙って押し付けるしかないわね?」

「ええ…」

「気にすることは無いわ、これからも私の家に泊まって話し相手になってくれれば、後お風呂も一緒に入りましょう」

「ぐっ」

「まぁ照れちゃう年頃なのは分かっているけど、たまにはいいと思うわよ? 今日はギルドで売却したら早速お風呂に入ろう、ね?」

「いえいえいえいえ、まだ朝ですし! 訓練したいですし!」

「もう、つれないわね」


 オニキスさんの誘惑がヤバすぎるんですけど! マジックバッグとか色々と!

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― 新着の感想 ―
[一言] 初心者狩りがあのわかりやすい一組だけとは限らないので、 見守り活動()は過保護ってわけでもないんだよなあ。
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