第2話 ダンジョンデビュー
不定期更新です┏oペコッ
ジェードダンジョン。
このダンジョンはギルド本部認定でCランクダンジョンとされていて、現在最深部までは到達できていない未到達ダンジョンの一つだ。
現状ではEランクとDランクの踏破しかされていなく、精鋭と呼ばれる有名パーティはCランクダンジョンの踏破に力を入れている。当然踏破出来れば世界初の快挙となる訳で、その名誉をぜひとも! という冒険者達がダンジョンへと侵攻しているのだ。
このジェードダンジョンにも有名パーティがチャレンジしていて、そのおこぼれに期待を込めたならず者も結構来ているのが難点だな… そんな連中に絡まれないよう気を付けないと。
ルーキー狩りをするような犯罪者は少ないが、絶対にいないという訳では無い。ルーキーであれば、襲って奪って得をする物など無いはずだが、快楽殺人者がいるというのは怖い話だ。
「装備良し! 腰袋良し! 腹は… 減っているが何とかなるだろう! いざ出陣!」
装備は解体用のナイフしか無いが、Cランクダンジョンとはいえ1階層であればゴブリンしか出てこないのである。討伐した魔物はダンジョンに吸収され、魔物からは魔石というものがドロップする。
この魔石を燃料とした魔道具が多々開発されているおかげで魔石を売る事で利益を得る事が出来るんだ。もちろん魔石のサイズや含有魔力によって買取価格は違うが、千里の道も一歩よりって言うからね!
とはいえ、ゴブリンの魔石程度では10個集めてようやくパン1個分しか稼げない。リアルに言えばゴブリンの魔石は1個10円程度の価値しか無いって事だな。
でも家庭用の魔道具の使用で需要が有るから買い取りしてくれないなんてことは無いから安心だ。
ダンジョン内を歩いて行く。今日俺と同様職業を授けられたルーキーがいっぱいいるな… 3~4人でパーティ組んでやがるが、羨ましくないもんね! こんなゴブリンの魔石程度でパーティ人数で頭割りなんてされたらちっとも稼ぎにならないじゃん!
どうせその内下に降りていくんだろう… とりあえず競争率が激しいから人の多いメイン通路から大きく外れてみるか。
おっ! 第1ゴブリン発見! ちょっとお話良いですか~。
あ、俺を見つけたかと思ったら全力疾走で走ってきやがるな… よし! まずは俺の結界がどれ程の強度があるか調べてみるとするか。
ナイフを構えつつゴブリンを待ち受け、ゴブリンが攻撃するために振りかぶったところで結界を展開して後方へとジャンプ!
パキィィィン!
「うわ! ゴブリンの攻撃すらも耐えられないのか… 確かにこれじゃあ役に立たないな。だけど…!」
俺の結界を叩き割った事で、その音に驚いたまま固まっているゴブリン目がけて走り出す。間合いの短いナイフ程度ではいきなり急所に攻撃なんて危ない事は出来ないので、まずは棍棒を持っていた右腕を斬りつけた。
「グギャァァ!?」
「それ! 次が急所だ!」
腕を斬られて蹲ったゴブリンの首に向かってナイフを突き出し、根元まで刺さったのを確認してからゴブリンを蹴ってその勢いで間合いから脱出。反撃されたら不味いからね… 俺みたいな小柄なボディじゃゴブリンの一撃ですら危なくなる。孤児院育ちで痩せているからな…
少しの間苦しんでいたゴブリンはパッタリと倒れ、ダンジョンの吸収されていくのを確認。
「初戦闘で初勝利だ!」
まぁ自己訓練のために野生の狼なんかとは戦っていたんだけど、ダンジョンでの戦闘は初めてなんだよね! 何と言っても12歳未満はダンジョンに入れないから…
早速落ちていた魔石を拾い、腰袋に入れる。
そして当然のようにゴブリン1匹程度ではレベルなんて上がらないよな… そもそも俺は野生の狼を狩ってたおかげですでにレベル3なんだ、だからゴブリン相手でもこうして落ち着いて戦闘が出来ているって事さ。
せっかくだしどんどん連戦していこうかな、もちろん複数体を相手にするのは危険なので、単体で動いている奴を選んで狙って行かないと… まぁこれが一番難しいんだけどね。
それから人気のない通路を単体で歩いているゴブリンを探してうろついてみる… ゴブリン程度の知能では気配を消すなんて高等技術は使わないからね、足音も良く聞こえるし武器を持っている場合はそれを壁に当てたりするからすぐわかる。
しかしなんだ… 聞いていた通り、結界師の張る結界という物は脆かったな。ゴブリン程度の攻撃を防ぐ事も出来ないなんて、まさに使い物にならんだろこれ!
でもまぁ考えてみるか、上手い使い道を。結界1枚で脆いなら2枚3枚と重ねてみるとか、薄い面で受けるんじゃなくて厚い面… 要は結界を900×1800㎜の化粧ベニヤ程度だと仮定してみると、あんなものパンチ一つで穴が開いてしまうが、それを縦で使ったら? そうすれば壊されても途中で止まったりするはずだ。相手の攻撃に対して平面で受けるんじゃなく、攻撃の向きを変えるように斜めに受け流すように配置するとか工夫をすれば、そこそこ使えるんじゃないのか?
とりあえずそうなると、結界その物の張り方を練習しないとダメだって事になるな。さっきみたいに無意識で張ろうとすると、自分の正面に平面で展開されちゃうみたいだから、意識して向きを変えるようにできないとダメだ。
「よし、とりあえず修行の方向性はそれでいいかな? なんせダンジョン以外では稼ぐ手段が無いんだから、何とかしないとな」
それからは時間と体力、魔力の許す限り練習に励んだ。
結界を張るうえで知らなくてはいけない事… まずは一度結界を張るのにかかる魔力のコスト。残念ながら個人のステータスというのは特殊な魔道具を介さないと見れないので正確な事は言えないが、コストはどうやら非常に低いようだ。その理由として、まだまだ低レベルの俺ですら何度も使っているのに魔力切れを起こしていないからだ。
自然回復する魔力の分もあるだろうけど、これならバンバン使っていても困ることは少ないだろう。もちろん限度はあるんだろうけどね。
そして一度に複数枚の結界… これは残念ながら2枚が限界だった。まぁ結界師としてのレベルが上がれば増えるかもしれないけど、現状ではこれを当てにすることはできないだろうな。
更に検証したのは結界の向きを変える事。
これについては特に問題無く向きを変える事が出来た、それこそ縦横斜めなんでもこいだ。
2枚重ねで縦にすると、ゴブリン程度の攻撃であれば壊される前になんとか止める事だけは出来たのだ。こうしてゴブリン狩りをしている以上これは有益な結果になったと思っている、なんせこれさえあれば2体同時に相手にしていても安全性が増すからな。