第19話 VSゴブリンキング
誤字報告いつもありがとうございます。
おおう… いるわいるわゴブリンばっかりだ。
5階層ゴブリンキングの部屋… ここに現れる敵の配置には規則性があると言われている。パターンとして確認されているのが、ゴブリンキング1体にシャーマン2体、アーチャー2体にナイトが5体。これが一般的であり難易度的には真ん中になるんだけど、最強編成は敵の合計が数が12体になりアーチャーとシャーマンが1体ずつ増える場合もある。
たかが1体ずつなんて思うやつもいるだろうが、遠距離攻撃の手が増やされることは受け手側にとっては非常に面倒臭いのである。
そして最強編成があるという事は、当然のように最弱編成というのもある。内容はゴブリンキング1体、ナイト5体、アーチャーとシャーマンが1体ずつ… 是非とも俺の時はこの編成でいて欲しいものだ。
そんな願いを込めつつ扉の中へと入っていく。
薄暗い部屋の奥に大きめの椅子があり、そこに座っているのがゴブリンキングだな? そして取り巻きはっと… うげ、なんかいっぱいいるように見えるんですけど?
「グギャ? ギャァァァ!」
「うわ、せっかく数えていたのに見つかった! 仕方ない、このままやるしかないな」
ゴブリンキングの叫び声と共にゴブリンナイトが駆け寄って来る、アーチャーとシャーマンは… まだ準備中のようだな? それじゃあ遠距離攻撃が始まる前に少しでも数を減らしますかね!
俺が単独で入ってきたからか、ゴブリンキングは椅子に座ったまま偉そうにしている… 屈辱的なシーンだが、俺にとってはとっても都合が良いね。
3体のゴブリンナイトが3方向から俺を取り囲んで来る… いつものようにショートスピアを横薙ぎに振るって牽制し、相手の進む足を止めさせる。
「次元断!」
パキィィィン!
結界が出現した瞬間に音を立てて割れていく… そして音と共に2体のゴブリンナイトの体が断ち切られ、倒れて消えていく。
それを見て驚いている残り1体の喉を槍で突き、奥で控えていた2体のゴブリンナイトに足を向ける。
「1人だからって舐めてもらっちゃ困るんだよね! それに好き好んで1人でいる訳じゃないんだよ!」
自分で言っておきながら少々のダメージを感じつつ、次元断を2発放ってゴブリンナイトを制圧。
さぁ残りは… うげ! やっぱり最強編成だったか、アーチャーとシャーマンが3体ずついるよ。でもこればっかりは時の運らしいから諦めるか… 俺ってやっぱり運が無いんだな。
「グギャァァ!」
ゴブリンキングが立ち上がり、俺を指差して叫び声を上げる。
それが合図だったかのようにゴブリンアーチャーが弓を射ってくる…
「そんなの当たらないぜ! 多分な」
例によって鋭角な角度で2枚の結界を張り、弓矢を弾いていく。ゴブリンシャーマンは何してる? まだ準備中なのか? まぁいい、5階層のゴブリンなら、こちらが驚くような駆け引きやフェイントなんて使ってこないだろう。一気に詰め寄ってゴブリンアーチャーを先に倒してしまおう、ゴブリンキングは立ち上がってはいるけど動く気配は無いからな。
いや、奥にいるアーチャーとシャーマンを狙いだしたら挟撃してくる可能性は残っているな… じゃあ奥にいる連中を狙うフリしてゴブリンキングをやってしまおうか。
左側から迂回し、ゴブリンアーチャーを目がけて走り出す。一番手前にいたアーチャーを槍で一突き… すると、やはりというか予想通りに背後からゴブリンキングが剣を振りかぶり襲ってきていた。
「次元断!」
即座に振り返り、ゴブリンキングの位置をしっかり確認してから次元断を放つ。
パキィィィン!
「グ…ギャ?」
断末魔だろうか、何か一言言った気がするがまだ戦闘は終わってはいない。
また向きを変え、残っているアーチャーに対して連続突きで沈めると、最後にゴブリンシャーマンと対峙する。
「グギャ!」
1体のゴブリンシャーマンがファイヤーボールを放ってくる、他の2体は木の枝なのか、杖なのか分からない武器を構えたまま俺の方を見ている… 俺が避ける方向を見定めているのか? だが残念だったね、俺は避けないでまっすぐ行くんだよ!
新たに張り直した鋭角の結界を信じてファイヤーボールに向かって走る… そして結界に当たると想定通りに結界に沿って射線が外れて行く。
走った勢いのまま1体に槍を突き刺し、横を通り過ぎて残り2体を狙う。やはり俺がどちらかに回避すると思っていたのか、驚いたような顔をしたまま固まっていたので防御に回していた結界を解除して次元断を2発放つ。
「よいしょー!」
パキィィィン!
「ふぃ~やったぜ… 単独で5階層クリアだ!」
しかしこれ、危なげなく戦えてたんじゃないかな? 個人的には花丸100点をつけたいところだが… こういう時は第三者の意見が欲しくなるな。
「だけど… ゴブリンキングが1体、ゴブリンアーチャーとゴブリンシャーマンが3体ずつで6体、ゴブリンナイトが5体だから… 合計1080ギルか! 1回の戦闘でこれならここで稼ぐのが良いんじゃないか? 数が多いから一対多の戦闘訓練にもなるし、結界と次元断の切り替えも練習できるし… おいしいかも?」
魔石を拾い集めた後、ギルド発行の冊子を読み直してみる…
「なっ!? ボス部屋は1パーティにつき1日1回しかボスは現れない? ダメじゃん!」
くそっ! 全然そこのところを読んでいなかった… 6階層からは魔物の種類が変わると書いてあるし、やっぱりしばらくは5階層で狩りをして、1日1回ゴブリンキングを倒すという生活になりそうだな。
「えっと、ちなみに6階層からは… 四足歩行系の魔物がメインになるのか、しかしドロップがゴブリンのように魔石のみじゃなく、魔物に応じた肉が出るって書いてるんだよね…」
肉… それは甘美な響き。
自分で取り置いて食べてもいいし、当然ギルドでも買い取ってくれる。肉をそのまま孤児院に持ち込んで寄付しても喜んでもらえそうだな…
「だけどなぁ、四足歩行系の… 特にウルフはゴブリンとは比較にならないほど動きが速いとの事、さすがに現状で行くのはまだ早いんじゃないかと…」
自問自答しつつ先に訓練が先だと判断し、部屋の奥にある転移陣で魔力登録してから5階層へと戻っていくのだった。
次回から隔日更新にしたいと思います、よろしくお願いいたします。




