第18話 案外良い奴?
誤字報告いつもありがとうございます。
どうせ基本的な動きは変わらないと思うから、まずは弓と魔法の的になってしまわないよう動きながらナイトを倒さないといけない。ゴブリンキングが最初から近づいて来てくれるなら、それも勢いで斬ってしまえ… こんな感じかな? まぁ次元断のおかげで当てさえすれば倒せると思えるのが気持ちを楽にさせているんだろうな。
よし、それじゃあボス部屋に行ってみるか。まぁ途中でレッドキャップに遭ってしまったらそれはそれで対処するという事で。
しかしレベルが上がってからの心の余裕というものはすごいな… こんな簡単に奥に進む事を決断出来てしまうのもそうだし、今ならなんか負ける気もしないんだよ。まぁこれが油断であり慢心というやつなのかもしれないけど、それらを含めても大丈夫だと思えてくる。
とはいえ、ヤバイと思ったらすぐに逃げ出す判断をしないとな。余裕があるからこそダメだった時の事もちゃんと考えるべし。
人の多い階層だからか、全然ゴブリンと出会わないね。まぁメイン通路は5階層の転移陣から更に奥へと進む冒険者が多く通るから、早々に駆逐されているんだろうね。
考え事をしながら進んでいると、後方から急に声をかけられるのだった。
「おい! こんな所で何をやってるんだ? 死にたくなかったらさっさとダンジョンから出てもう二度と入ってくるな!」
「なにィっ!?」
なんだとこのやろー?
振り返って見てみると… あ、こいつ見覚えがあるな… 確か神託の儀を一緒に受けた奴だ。
俺と同世代の男2人女2人でパーティなんか組みやがって… このリア充めっ!
「お前… 結界師だった奴だろ? 何を考えてこんな所まで入り込んでいるんだよ、冗談抜きで死ぬぞ?」
「悪いけど余計なお世話だよ、俺は4階層のゴブリンじゃ物足りないから降りてきただけ、これからゴブリンキングの所に行くんだから邪魔しないでくれ」
「はぁ? 結界師が1人で何が出来るって言うんだよ!」
「そんな偏見は止めてくれ。結界師にだってやれることはいっぱいあるんだ、そもそも神託で得られる職業に無能な職なんてあるはずないだろ? はっきり言うけど無能だの不遇職だの言ってる奴らって神様に対して喧嘩を売ってるようなもんだぞ? そこら辺少しは考えた方が良いよ」
「べ、別に神様に喧嘩なんて売ってないし! それに結界師が不遇職だっていうのは皆が言ってる事だろ?」
「皆が言ってたらなんだっていうんだ? そうやって結界師の職に就いた者のやる気を奪い、ダメなやつだと決めつけてるだけじゃないのか? 悪いけど俺はそんな事くらいじゃへこたれないんでね、やれる事は何でもやってみて、それでダメならそこで諦める。だから邪魔しないでくれ」
「ぐ…」
ふー、今まで抱え込んできた事を言ってやったぜ。いやいや、これはかなりスッキリするね!
とはいえ、こいつの顔を見る限り、言葉は確かに荒っぽいけどなんだか心配しているように見えるな… これはちょっと言い過ぎたかな? 精神年齢は俺の方が高いんだし、ここは大人の対応をするべきだな。
ダンジョンに入るようになってから年上とばかり関わってきていたから、同世代という事で少し侮っていたのかもしれない… そこは反省だな。
「まぁ俺の事を心配してくれてるんだろうけど、まずは自分達の事を優先してやってくれよ」
「べっ! 別にお前の事なんか心配してた訳じゃねぇよ!」
わーおツンデレかよ… 残念だが誰も得をしない気がするぜ。
「まぁアレだ、その内飯でも一緒に食おうぜ」
「……。仕方ねーな、嫌だけどその提案は受けてやる。だから途中でくたばんじゃねーぞ?」
「おう! でもお前、結構良い奴なんだな」
「なっ!?」
あはは、顔が真っ赤になってやがる。後ろにいるメンバーも照れているようだし… やっぱりこの街は良い街のようだ。
そんな4人パーティと別れてゴブリンキングの部屋へと進んで行く。
そういえば、さっきの奴ら… 全員名前も知らないな? まぁ次に会って飯を食う事になったらその時に聞けばいいか。
それにしても… 俺と同世代という割には随分と大人びたというか、精一杯背伸びをしているような話し方をするやつだったな。もしかしたらあいつは貴族とか特権階級の平民の子供なのかもしれないな… 普通12歳が「提案を受ける」なんて言わないしね。
そして全くゴブリンと出会わないままゴブリンキングの部屋の前に到着。
ゴブリンキング… 初心者にとって最初の壁になる大型のゴブリン、取り巻きも含めて10体ほどを相手に乱戦をしなければいけない。
しかし、この部屋の奥に転移陣があるため、朝のラッシュ時にはベテラン冒険者に散々ボコられて通り抜けられていく哀れな存在。そんな哀れな魔物に負ける訳にはいかないよな!
「さぁ行くぞ! 弓矢と魔法に気をつけながらナイトとキングを倒し、最後にアーチャーとシャーマンを突く!」
そしてゴブリンキングの部屋の扉を開け、中に入っていった。
─ジェードダンジョン5階層通路─
「行っちゃったね… 良かったの?」
「良かったのも何もないだろ、アイツが行くって言うんだから」
「そういえば… あの結界師の人、名前知らないね?」
「まぁ次に会った時に聞けばいいだろ、勝手に飯に行くなんて約束させられちまったしな」
「あはは! それはアンタが勝手に受けたんでしょ、まぁ私は行っても良いけど?」
リーダーであるアイオライトは大商人の四男だ、だけど子の多い家庭なので四男ともなると家での扱いはあまりよろしくない。なので神託の議で剣士の職を授かれたという事は非常にありがたい事だった。
ダンジョンに入って剣の腕を磨き、家の対応次第では護衛として働けばいいし、そんな俺を使い潰そうとしてくるならこのまま冒険者として生きるだけだ。
そして神託の議を一緒に受けた中で、重騎士のカルサイトと弓術師のコーラル、魔法使いのシエルとパーティを組んだ。カルサイトは年の割には大柄な男で、コーラルとシエルは女だ。
そしてつい先ほど、神託の議で見かけた結界師の職に就いた奴がたった1人でジェードダンジョンの5階層を歩いているじゃないか。結界師でダンジョンに入るだけでも危ないというのに5階層? これは今すぐにダンジョンから出してやらないとダメだな。もしかしたら誰かに連れてこられて放り出されたのかもしれない、なんなら地上まで連れて行ってやった方が良いかもしれないな。
よし、声をかけてみよう。
そう思って声をかけたんだが… まぁなんというか言い負かされた訳だ。
後ろからこっそりとついて行きたいが、さすがにパーティメンバーがいるのにそんな事は出来ない。仕方がないので飯を食う約束を信じるしかないな… まったく結界師の癖に生意気な奴だ。
「アイオライト、何をニヤついているんだ?」
「ニヤついてなんかない!」




