第14話 久しぶりのベッドで寝坊!
誤字報告いつもありがとうございます。
「ふぅお腹いっぱいですよ、今日はなんだか食べ過ぎてしまいました」
「ところでショウ君、そういえばどこの宿に泊まっているの? 昨日の夜に居場所を調べようと思ったんだけど見つからなかったのよね」
「え? ああ… 昨日はその、野宿していました。お金を貯めたくて」
「野宿? ダメよそんなのは。夜はそれなりに冷えるし体を壊すわ」
「あ、でも! 今日からは宿に泊まろうと思っています!」
孤児院で晩御飯を食べ終わり出てきたんだけど、そういえばまだ宿の手配とかしていなかったな。もうそろそろ日が暮れるけどまだ空いてる部屋があるかな? 安い宿ならもう埋まってそうだけど、今日くらいちょっと高くても平気かな? ああ、その前に余分なお金はギルドに行って預けてこないとダメだな… 重いし。
「なるほど、そうなのね。じゃあ今日は私の部屋に泊まりなさい! メイドもいるしお風呂もあるわよ?」
「お風呂ですか? しかもメイドだなんて、オニキスさんって貴族だったりするんですか?」
「まぁそうね、敢えて言うなら元貴族というやつよ」
「へぇ~。元とはいえ貴族様がAランクなんですか… すごいですね!」
「まぁ元実家は兄弟姉妹がいっぱいいるから、私が外に出たって何も問題は無かったのよ。それに神託で頂いた職の都合もあったしね… 家にいて都合良く使われるよりは外に出て平民になる方が良いと判断したわ。
もちろん家で雇っているメイドは実家とは関係ないわ」
「そうなんですか… 神託で頂く職も貴族にとっては良し悪しなんですね」
「そういう事ね。じゃあギルドに行ってお金を預けたら私の家に行きましょう、何日も野宿してたと言うならしっかりと綺麗にしないといけないわ」
「いや、あの… 普通に宿で良いんですが」
「却下ね。ここは先輩冒険者に任せなさい」
おおう、なんだかゴリ押ししてくるな。
でもお風呂かぁ、転生した事に気づいてから初めてなんだよな。この誘惑には抗えない何かがあるよな! それに本物のメイドさんも見てみたいし… 今日はお世話になっちゃおうかな!
ギルドに行き、結局700万ギルを預けておく事にした。
装備品やお肉代は売り払った武器代で賄えたし、あまり現金を持ち歩くというのは正直言って怖いからね。いくらそれなりに治安が良い街だからといっても、自分から犯罪者を引き寄せるなんて行為は意味が無い。返り討ちに出来る自信も無いしな。
その後はオニキスさんに手を引かれて自宅へと連れて行ってもらうが、その場所は街の中心部… 代官様が住む場所にほど近い所だった。
元とはいえさすがは貴族、土地代の高い場所に住んでいるのね…
一緒に入ろうとするオニキスさんを何とか振り切り、温かいお風呂に大満足で今日は休む事が出来た。
「いやぁこのベッド、結構ふかふかだな。でも良いのかなこんな贅沢をして」
案内された客室は小奇麗な部屋で、なぜかダブルベッドが鎮座していたんだが… こんな立派な部屋にベッドだと却って眠れないかも知れない。
でもアレだ、今日は色々とあったなぁ。
襲われたって事もそうだけど、何よりも自分の欲望のためだけにニヤニヤと笑いながら暴力を振るえるやつが普通に存在していることが許せなかった。
あんな奴の思い通りになるくらいなら殺してやろうなんて、なんか自然に思えたからな。
それに今日、俺は人に向けて次元断を使った… その時は何とも思っていなかったけど、やはり悪人とはいえ人に手を出すという行為は気分が悪いな。
「でも、俺の次元断はCランクの冒険者ですら簡単に切り裂いたな」
まぁランクが高いからといって攻撃が通じないというわけではないが、あまりにも簡単にバッサリといけたからむしろびっくりしちゃったよ。
でもこれで、攻撃力はかなり高いんじゃないかって確認は取れたと思う。まぁ今後人に向けて使うかどうかは不明だけど、対魔物であれば強い技は好都合だからね。
とりあえずアレだ! 今日の事は正当防衛の結果であり俺に過失は無いとの事。人間を殺してしまったとはいえ、ここはオニキスさんの言う通り魔物以下のナニカだったと思う事にしよう。悪いけど殺さないように対処できるほど俺は強くないからな、相手が敵対するなら優先度は自分の命が一番高い。
「うん、アレは魔物以下のナニカ… 何も問題は無かったんだ」
そして気がつくと、外はすっかり明るくなっていた。
「うわっ、ベッドが心地良すぎて寝坊しちゃった?」
慌てて支度をして部屋から出ると、オニキスさんは優雅にお茶をしていた。
うーん、結構話しやすいしお茶目なところも見えてたけど、やっぱりこんな姿を見ると俺とは住む世界が違う人なんだって感じるね。
「おはようございます。寝心地が良くて寝すぎてしまいました」
「おはようショウ君。別に急ぐ用件は無いんでしょう? もっとゆっくりしていても良いのよ?」
「いえいえ、ちょっとお金が手に入ったからって怠けると、すぐにダメになっちゃいますからね。それにダンジョンに入って必殺技の練習もしないと」
「そう、あまり頑張りすぎないようにね? それとねショウ君、これは提案なんだけど… なんだったら君、ここに住んでも良いわよ? むしろ住んでもらいたいくらいね」
「ええ? さすがにそれはマズいですよ」
「まぁ聞いて。私の依頼次第では帰ってこれない日も多くあるのよ、メイドに家の事は任せているけれど、やはり人が住まない家は風化するのが早いから誰かが常駐してくれていると助かるのよね。メイドは通いだし」
「は、はぁ…」
「別に拠点を変える予定は無いのでしょう? だからここに住んでもらいたいのよね。私も帰って来た時に誰かが待っていてくれると嬉しいから… もちろん待ってる人が誰でも良いって訳じゃないわ、どう?」
むー! お風呂付の家に住めるなんてあまりにも条件良すぎるんですけど! でも… やっぱり無料より高いもんはないと思うんだよね、オニキスさんが家を使わせてくれる対価として何かを迫ってくるような人とは思ってないけど、やっぱりどうにも納得がいかないよな。俺だって自分の世話くらいなんとかできるんだし!
「いや… せっかくですけど、これほどの家に住まわせてもらう事は出来ません。自分の事は自分で出来るようになりたいですからね」
「そう… そういうところは男の子なのね。残念だけど承知したわ、でも時々泊まりに来て欲しいわ。この街の宿にお風呂付は高いし少ないでしょう? そう、お風呂を使いに来なさいね」
「はいっ! お風呂は気持ち良くて気に入っちゃいました!」




