第1話 神託の日
設定が甘々だったりゆるゆるだったりしますが、生ぬるい目で読んでいただけたら幸いデス。
ここはターコイズという世界。大きな大陸が1つと、中規模の大陸が4つあり、人間種を含めたエルフ種、ドワーフ種、獣人種などが生活し、未開地域には多くの魔物が生息する世界。
しかもそれだけではなくダンジョンまで各地に存在し、その内部にも魔物が跋扈しているという。
世の中は完全王政となっており、数多くの王国や帝国が存在し、文明レベルは中世程度。馬車などが行き来して物流を担っているが、当然意識レベルも中世程度であり、商人などの商隊を襲う盗賊団というのも存在する。
貴族家の多くは腐敗しており、自分勝手な治世を行っているため平民と呼ばれる者たちはいつも苦労を強いられている。
これがこの世界、ターコイズの中身だ。
この世界に生きる者は、必ず12歳になると神託を受けて、今後生きるために職業を授かる。
しかしこの職業というのがまた曲者で、どれもこれも非常に有用なのだが使い手次第でゴミと化してしまう。
魔物が跋扈している以上人気が高いのは当然戦闘職。中でも聖剣士や重騎士、魔導士などは大人気だ。そして当然不人気職もあり、中でも測量士と結界師は不遇とまで言われるほどひどい扱いを受けてしまう。
日本人的な考え方であれば、測量士がいれば地形図が作れ、町づくりに大いに貢献できる大事なお仕事だ。だがこの世界では、町を作るのに満足な測量を行わず、ただ川などの水場付近に作れば良いという考え方しか出来ていないのだ。当然測量士に測量の仕事が回ってくる事など無く、その力量を発揮する場は与えられないまま一生を終える者しかいないのだ。
そして結界師、どれほど魔力の鍛錬を重ねたとしても、張られた結界の強度が上がる事が無いと言われている。そしてその強度は… 最低ランクに相当する魔物、ゴブリンの攻撃ですら数発受けると結界が割れてしまうので防御を担うなんて出来るはずもない… そう言われている。
どうだ? なかなか詳しいだろう? 今年で12歳になったこの俺、ショウはこれでも転生者だからな! 親の顔すら覚えてない程小さい頃から孤児院で暮らしており、物凄くひもじい思いをしながら育ったもんだが… 5歳の時に前世の記憶を取り戻して以降はこの世界の事を調べまくったんだ。
孤児院を卒業していき、冒険者となった兄ちゃんや姉ちゃん方が孤児院を訪れた際、そりゃー色々と聞きまくったもんだ。そしていずれ授かるであろう職業のために色々と訓練に励んだのさ。
どんな職業についても困らないよう剣や槍、盾の扱い方に魔法の訓練。職業を得る前にそれぞれが半人前レベルまで扱えるようになったんだぜ!
確かに1人前ではないが、それでも職業を授かる前だというならかなり上等な部類だろう。
そして今日、これから俺は教会に行き職業を授かる儀式に参加してくる… さぁどんな職業でも関係ない! 必ず生き抜いて金を稼ぎ、お世話になった孤児院に恩返しとしていっぱい寄付するんだ!
「うむ、気落ちしないで聞いてくれ。君が授かった職業は…」
「職業は…?」
「…………結界師だ」
「Oh…」
まじかよ、確かになんでも来いとは言ったが、お約束すぎるだろ!
そしてラノベやなんかでは、こういった場合…「なんだアイツ、結界師だってよ!ダセェ!」なんてヤジが飛んでくるところなんだが、振り返って周囲を見ると、誰もが哀れんだ目で俺を見て、「大丈夫、きっと何か出来るようになるよ」とか「魔物の攻撃は防げなくても、ネズミなんかの害獣退治には使えるだろうよ、諦めんな!」なんて声援が… くっ、却って屈辱だぜ。
しかし、12歳となった俺は本日をもって孤児院は卒業となり、これから自活をしていく事になる。今日までにコツコツと貯めたお駄賃で戦闘準備をし、颯爽と近くにあるダンジョンに潜る予定だったんだけど… どうするかな。
どちらにせよ孤児院にはもう帰れないから、今後の生活費をどうにかしないと生きてはいけない。だけど5歳の頃から修業をしていたおかげで、生活魔法は一通り使えるから何とかなるだろう。
「どっちにしてもダンジョンに行ってくるか… 俺の結界がどれほどのもんか知らないと対策の立てようもないもんな」
結界師という事で、みんなから憐みの目で見られたとしてもダンジョンに入るパーティとなれば話は別だ。役に立たない職業の者を入れてくれるパーティなんて無いからな。しばらくは浅い階層でソロ活動するしかないか。
どちらにせよ俺自身のレベルを上げていき、最悪鍛えた剣術で稼いでいくしか無いな。
そうそう、言い忘れてたが… この世界の生き物にはレベルというものがあるんだ。それはもうRPGのようにね… そしてレベルが上がるとRPG同様各種ステータスが上がっていきどんどん強くなっていく。
長命なエルフ種の長老クラスでレベル70とか80らしく、人間種ではどんなに強くてもレベル3~40なんだそうだ。
そして世界に何か貢献すると、神託として全世界に生きる全ての生物に向けてその功績を讃えられるんだそうだ。これもなんだかゲームみたいだよな… 何かをクリアしたらテロップ的にシステムメッセージが流れるみたいな…
ちなみに前回の神託は、20年ほど前にEランクダンジョンを完全踏破したパーティがその栄誉に預かったそうだ。
ついでに、ここまでゲームっぽい世界であるにもかかわらず、個人のステータスは一部の特殊な魔道具を使わない限り見る事ができないという… まぁその特殊な魔道具は冒険者ギルドに置いてあるから、確認する事は可能なんだけどね。
「そんな訳だ、まだ俺は若いんだからじっくりと攻めていけばいい。死んでしまえば何もならないからな… 小さなことからコツコツとやっていこう!」
とりあえずまだ日は高い、早速ダンジョンへと突撃してみるかな!
ちなみに… 今俺がいるこの国はアズライト王国と言い、この地を治めているのはガーネット子爵家。王都から馬車で20日という辺境だが、この地にはダンジョン産業がある。ダンジョンから得られる魔石や素材のために多くの人が集まっているのだ。
スタンピードという危険性を孕んでいるが、ダンジョン産業が発達しているおかげで商人の出入りは非常に激しい町である。
ああ、この町はジェードと言い、当然ダンジョンもジェードダンジョンと呼ばれている。
歩いて行ける距離にあるので早速ダンジョンデビューをしてこようか!