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プロローグ
14時、終わりのチャイムが鳴った。
「17時になる前に必ず寮に戻るように。帰った後の学習も忘れずにな。」
担任はいつものように1日の終わりを締めくくった。
「ヨル!早く寮に戻ろう!」
「分かってるよ、陽奈。でも今日はどうしても手に入れたいCDがあるから、それだけ買ってくるよ。」
「今時CDを買ってるなんて、ホント物好きだよね。」
「ほっとけよ...。」
幸運なことに今は5月だから日没の18時30分までたくさん時間がある。早く用事を済ませて、僕も一般寮に帰ろう。”夜獣”が姿を表す前に。
2050年1月1日。その日を境に、夜になると化物が街中を跋扈するようになった。夜外に出歩いていた人々は正体不明のその化物に喰い漁られ、それ以降、化物は”夜獣”と名付けられた。この”大夜災”を境に、人類は夜を失った。2080年になった現在は対抗手段がある程度開発されているらしいが、ノクス適性のない、才能のない一般人の僕には関係のないことだ。