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第34話 【SIDE勇者】メリッサさんに顔面をぶん殴られる

――時刻はアルス達が国王に投獄されるまで遡る


 メリッサさんと王都に戻った俺はメイを連れて、とあるダンジョンに挑戦していた。


 因みに「神獣の里」でやらかした俺だが、王都に戻っても周りの騎士団に連行されることはなかった。

 どうやらメリッサさんの言う通り、俺の罪は無くなっているらしい。


 そういうわけで元気よくダンジョン攻略に挑むことができた。


「HPを1にしたわ~。ほらレオンくん頑張って〜」


 彼女の声援に力が湧いた俺。

 何故か分からないが、メリッサさんといると身体がぽわぽわし、ずっと彼女の傍にいたくなるのだ。


 そんな彼女とこれからも一緒にいるため、俺は目の前のミノタウロスを斬り伏せようとする。


 が、しかし何故か瀕死状態のミノタウロスは平気で俺に襲いかかってきた。


「ブモオオオオォォッッ!!」


「ヒッッ……!? し、しぶといなコイツッ!!」


 結局俺はミノタウロスに攻撃することができず、腰抜けみたいに逃げていた。

 そして、とどめの一撃は俺ではなく、メリッサさんが入れてしまう。


「残念ね~。ほら、次行きましょ~」


「あ、ああ! 今度こそ俺がとどめを刺すぞ!」


 この世界で厄介なのは、パーティで魔物を倒したからといって、均等に経験値が還元されないことにある。


 与えたダメージ量だったり、とどめの一撃を決めた人物によって配分が大きく変わるのだ。


 因みに今のミノタウロスはまだパーティに正式加入していないメリッサさんが倒したので、俺に経験値は入らない。


 俺のレベル上げのため、メリッサさんと共にずんずんダンジョンを進むが、後ろで歩いていたメイがようやく口を開ける。

 彼女はここのダンジョンに来てからというもの、何故かずっと口を閉じていたのだ。


「メリッサさん……で良いんだっけ? さっきのミノタウロス、HPが1に見えなかったんだけど、どういうこと?」


「ッ……! 何を言ってるんだメイ、そんなわけないだろ! メリッサさん、すいません。うちの聖女が失礼なことを言って!」


「ごめんなさいね~。魔物のHPを1にするのも結構難しいのよ~」


「そうだぞ、メイ。オマエみたいに杖を振っているだけの奴には分からないがな、剣で体力を残り僅かにするのも難しいんだぞ!」


「あっそ。じゃあそれはもうどうでもいいわ。

 それよりメリッサさん、さっきから魔物がわたしを襲うよう意図的に攻撃や陣形をとっているわよね?

 この件についてはどう説明するつもりかしら?」


「おい、メイいい加減にしろよ! メリッサさんがそんなことするわけないだろうが! 仮にオマエの言ってることが正しいとして何の得になるんだ!」


 メイはフンと鼻を鳴らし、俺と目を合わせない。

 どうやら、メリッサさんの発言待ちらしい。

 しかし、案の定彼女はきょとんとした表情でメイに答える。


「ごめんなさいね~。全く気付かなかったわ~」


「はあ!? アンタ明らかにワザとやってんでしょ! わたしが気づかないとでも思った!?」


 とうとう限界を超えたのか、怒りを剥き出しにするメイ。

 そんな彼女にメリッサさんが耐えられるわけもなく、彼女は目を潤ませながら、ヨヨヨと泣き崩れる。


「だって~。本当に知らなかったんだもの~」


「メイ! お前って本当に最低だな!」


「悪いのわたし!? 言っとくけど、こんな茶番に付き合いたくないからね!」


 俺はメイに目もくれず、メリッサさんを宥める。


「メリッサさん大丈夫かい? アイツは本当にどうしようもないヤツなんだ。許してやってくれないか?」


「ええ、ちょっと驚いただけだわ~。もう大丈夫よ~」


 胸の前でキュッと手を握っていたメリッサさんをもう少し見ていたかったが、俺は彼女を励まし、レベリングに向けて再始動する。


「ハハッ! それなら良かったよ! あんなヤツなんかほっといて、俺達だけで先に行こう!」


 俺は背後からメイのジト目を感じたが、彼女を無視し、メリッサさんと並んでダンジョンの先に進んだ。




 レベリングを行うためダンジョンに挑戦していた俺達だったが、俺のレベルはあいも変わらず1から上がらなかった。


「チクショウ、何でだッ!! メリッサさんが、HPを残り1にしているにもかかわらず、俺には平気で攻撃してくる!」


「うーん。もしかしたら、レオンくんのレベル1であることが魔物さん達にもバレているのかも〜。ダンジョンを変えてみるぅ?」


 アヒル口で解説するメリッサさんを見て、俺はやる気が満ち溢れてくる。

 こんなところで諦めてたまるか!


「ハハッ! 大丈夫だよ、メリッサさん! これくらい何ともないさ!」


「それにしても少し疲れたわね〜。疲労回復の呪文を使える人がいれば良いんだけど〜」


 そう言いながら、チラッと後方を確認するメリッサさん。


 すると突然、彼女の周りに白い魔法がかかる。

 メイが魔法を使用したのだ。


「あら〜。あらあらあら。ごめんなさいね~」


「おい、メイ! 俺にもその魔法を使えよ!」


 俺はメイに同じ魔法を要求するも、何故か彼女はぷいっとそっぽを向き、左右で結った髪が揺れる。


 畜生!何だコイツ!マジで突っ立ってるだけじゃねえか!


「うふふ。二人は仲が悪いのかしら~」


 メイは彼女の質問に答えたくないのか、聞こえなかったのかは不明だが、無言を貫いていたので、俺が代わりに答える。


「仲? 良いワケないでしょ。こんな奴……」


「そうなの~。それは、何ていうか残念ね~」


 いや、正直言って、俺とメイの関係の話題なんかどうでもいい。

 それより俺はメリッサさんにしか興味ないのだ。

 俺はすぐさま会話モードに移行し、9つの選択肢から一つの話題を選ぶ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『世間話』『勉強』『運動』『娯楽』『食べ物』『おしゃれ』『恋愛』『エッチ』『行動』

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 なんか、メリッサさんならちょっとぐらいハードな話題を出しても、許されそうだな。相変わらずきょとん顔をするのか、意外と赤面するのかも気にはなるしな。


「メリッサさん!」


「あら~。どうしたの~?」


 俺はメリッサさんに対してある言葉を発するも、一瞬目の前が真っ暗になる。


「ぱがっっ……!!??」


「あら~。レオンくんどうしたの~? 歯が抜けてるわ~」


 俺はコロリと地面に落ちていた自分の歯を見た瞬間、全身に寒気を感じた。


 メリッサさんに殴られた?


 いや、いやいやいや。流石にそれは有り得ない。


 そもそも歯が抜けるまでの速さが早すぎて、何があったのか分からなかったからだ。殴られたのかすら定かでない。


「あ、ああ……。大丈夫だよ、メリッサさん……」


 うーん。


 それにしても、ここのダンジョンはやっぱりおかしいな……。

お読みいただきありがとうございます。


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