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愛憎想起  作者: 不見 茲
2/2

日々

遅くなりました!次話です

 ぴぃぴぃと囀り遊ぶ鳥たちの声、キラキラ輝く太陽に、空に浮かぶ黒と白と赤の三星。


 庭には程よく手入れされた芝生、そんな穏やかな空間からは似つかわしくない…


 バンッバンッ


 と、木剣を打ち合わせる音が響いてくる。


「そこっ、もっと踏み込め!」


「いけるかぁ!死ぬわ!」


 そこで木剣を打ち合っているのは兄のソル・マリーと、オレ達の父ちゃん、ドルイズ・マリー。


 決して、殺し合いをしているとかそういうわけではなく、日課の剣の修行だ。


「兄ちゃん!がんばれ~!」


「パパ~ソル~!二人ともあんまり庭を荒らさないでね~!」


 二人が、というより兄ちゃんだけだけど、死にそうな顔で剣の修行をしているそばで洗濯物を干している母ちゃんがいた。


「わかった」


 それに対して短く返答した。


 母ちゃんの名前はエルナ・マリー

 優しくて、美人な自慢の母ちゃんだ!けどデキアイ?する癖があるからなぁ、修行中とかはちょっと困る時がある…

 オレももう6歳になるんだ!子ども扱いはやめてほしいぞ!


「おい、ソル!今のは踏み込めたぞ!」


 あっ、兄ちゃんが吹っ飛んだ!


「はっはっ…だからっ無理だって!」

「なら、あと少ししたら今日の修行は終いだ!いくぞ!」

「よぉしゃあああああああ!こぉおおい!」


 終わると分かった瞬間、急に兄ちゃんが元気になった。


「そんなに嫌か…」


 その反応とは対照的?に父ちゃんは構えから出る緊張感は変わらないけど、さっきの構えより少しうなだれてるようにみたいだ。

 父ちゃんって意外に繊細?だよなぁ~。


「父ちゃん!次、稽古つけてね!」

「ああ、任せろ!」


 あっちょっと元気になった。

 なんかオレんちの家族、みんなわかりやすいなぁ~。


「よし、切り替えていこう」


 そう父ちゃんが言った瞬間、さっきまでの緩やかな空気が一気に変わった。


 ごくっ


 誰かの唾を飲み込む音が聞こえた。

 と同時に…


 ドンッ


 さっきまで最低でも5mは離れていたのに、一瞬で父ちゃんが兄ちゃんの前まで移動していた。


 直前でぎりぎり気づけた兄ちゃんは、空かさず右に逃げたけど、父ちゃんもわかってたのか、そこに左足で廻し蹴りを加える。


 右下からくる蹴りを、木剣で何とか防いでたけど、木剣がへし折れて蹴りの勢いのまま空を飛んでった。

 屋根くらいの高さに到達すると、勢いが消えてそのまま地面へ落ちた。


「すげぇ…」


 いつも二人の日課を見てたけど、ここまですごいのは初めて見た。


「はっ!兄ちゃん!大丈夫!?」


 あまりの凄さに忘れてたけど、兄ちゃんは結構な高さから落ちたんだ。

 大変なことになってるかもれない…!


 急いで駆け寄ってみると、兄ちゃんの体が光ってた。


 オレンジ色に薄く光ってた!


「兄ちゃん!大丈夫か!?」

「咄嗟に掛けた防御魔術のおかげなんとかな…」

「よかたぁ~」


 無事だ、という一言を聞いた瞬間、ほっとして腰が抜けて、そのまま尻もちをついた。


「ソル。今の蹴り、よく防げたな」

「本当に偶然防げただけだよ、多分まだ今の実力だと二度は防げないよ」

「魔術を使えばできるだろう」

「そりゃ防げるかもけど、そうなったら父さん加減しなくなるじゃないか…そうなったら余計防げなくなるよ」


 てか素であの怪力かよ…マジで化け物染みてんな!、っと一言残してそのまま大の字になって休憩を取り始めた。


 よっぽど疲れたんだろうなぁ!

 オレも早くあれくらいの動きが出来るようになれたら良いなぁ!

 そうだ!父ちゃんに出来るようになるか聞いてみよう!


「父ちゃんさっきの凄かったな!あれオレにも出来るようになる!?」

「父さんもソルもかなり頑張った。頑張った結果、出来るようになったから、多分修行次第でルドも出来るようになるさ」


 自分でも分かるくらい今興奮して聞いている。

 それを宥めるように優しく、けどちょっと荒く頭を撫でながら、そう聞かせてくれた。


「よぉーし!オレも頑張るぞぉ!」

「いいぞ、その粋だ!先ずは素振り100回から、次にゆっくりと剣の型を覚えて最後に技の練習だ」

「はーい!」


 そうして今日も1日を過ごした。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 虫の音が聞こえる静かな夜。

 蝋燭に灯るわずかな揺らめく光を便りに、自分の部屋と足を運ぶ。


 眠い目を必死に開けて、背を伸ばし自分の身長ほどの位置あるドアノブを掴んで部屋へ入る。


「あれ、兄ちゃん…まだ起きてたの?」

「ああ、ちょっと魔術の勉強をな」


 まじゅつ…?


 兄が何を言っているのかよく理解できず、頭を傾げていると…


「普段は目に見えないけど身体の中にある力とか体力みたいなのを使って強くなれる技だよ」


 そう言って、本を片手にルドの頭を撫でるソル。


 なんだかよくわからないけど、高いところから落ちても平気だったのも、その……おか、げ…?


 思考を巡らせていると、段々頭が重くなってゆき、気付けばポスッと乾いた音を立てて尻餅を着いていた。


「ほら、もうルドは寝る時間だ。ベッドまで運んでやるから今日はもう寝なさい」


 そっと、身体を抱き抱えられ、寝室にあるベットまで運ばれ、布団を掛けられる。


「今日も楽しかったか?」

「うん」

「なら、よかった…それじゃあまた明日いっぱい遊ぼうな…」

「うん…」


 意識があるのか無いのか、幼い自分では判断が出来ないほどに眠気に襲われ…


「お休み」


 兄に掛けられたその言葉が切欠となり、眠気に抗うことができず、スゥッと眠りに落ちた。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 数週間後



 朝日が昇り、鳥の囀りが耳に心地よく鳴り始めてから数刻後…


「ソォ~ルゥ~…」


 家の中に響き渡る、元気な足音。

 ドンドンとソルの眠る部屋、もとい兄弟の寝室へと近付いて行く。


 そして、扉の前にたどり着くと…


「兄ちゃんっ!!!」


 バンッ!!!


 っと思いっきり扉を開く!

 どうだ!起きたか!?


 扉を開いた音と呼び掛けの声で、兄が起きたかを確認するが、う~ん…という呻きが漂うだけで、起きた気配がない。


 むっ!相変わらず反応が無いな


「おきろおおお!朝だぞぉおおお!」


 脱力全開で寝そべっている兄ちゃんの背中へ、全力で飛び付く!


「朝だあああああああああああああ!!」


 叫び声とこちょこちょも追加だ!


「おりゃあああああああ」

「うぁああ………」


 くそ!しぶとい!全然起きないぞ!


「ルドォ…お前にも…妖怪、布団お化けの怖さをぉ……教えてやるぅ………」


 言うや否や、寝返りをしたかと思ったら抱き締められ、そのまま一緒に布団の中へと沈められた。


 うわぁ、あったかぁい……


 フワフワとした、感覚に包まれていくぅ…




 はっっっ!!




「駄目だぁああああ!起きろぉおおお!」

「くそぉ…」


 危ない…あとちょっとで一緒に眠っちゃうとこだった…!!

 妖怪布団お化け……強かった…!!


「ほら、兄ちゃん!そろそろ行かないと母ちゃん怒られちゃうよ!!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛い……」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 何だかんだあったけど、一緒にリビングまで歩いていく。


「兄ちゃん…また夜遅くまでなんかやってたでしょ!」


 最近はいつも夜遅くまで関、節?がどうとか、かいろ?とかよくわからないことばっかりしてる。


 まったく困った兄ちゃんだよなぁ!


「はっぁぁぁ…ちょっと熱くなっちゃって…ごめんなぁるどぉ~…あ、あとおはよう」

「でっけぇ欠伸だ!!おはッ!……よう?」


 あれ?もうお昼も近いのにおはようなのか?

 どうなんだろ……う~ん…


「やぁ、ルドおはようなのだ。今日も元気で、大変良いことなのだ」


 いつからいつまでが『おはよう』なのかを考えていると、可愛い牛の人形…じゃなかったや、精霊のグラスが挨拶してくれた!


「おはよう、グラス!」

「ソルもおはようなのだ」

「おはよう…」


 まだ眠たいのか目が細いままだ。


「そうだ!兄ちゃん。さっき言ってた妖怪布団お化けってなに?」

「人をふか~い眠りへと誘う、こわ~い妖怪だぁ~!!」

「うわっ!」


 両脇から抱き上げられ、リビングまで小走りで運ばれる。


「兄ちゃん!やめろぉ!」

「あっははは!言葉の割には結構喜んでるように見えるぞぉ~?」


 バレてる!?

 くそぉ、兄ちゃんめ!母ちゃんに言い付けてやる!


「母ちゃん!ソル兄ちゃんが起きた!助けてぇ!」


 両脇から抱き抱えられてなす術を持たなかっので、切り札「母ちゃんを呼ぶ」を使った。

 フフッ


「もぉソル!起きて早々騒がしいわよ!」


 母ちゃんからのお叱りになす術も無かろう兄じゃ!


「はぁーい」

「ルドもありがとね!」

「うん!………フフッ…兄ちゃん敗れたり…」


 にやけてやると…


「敗れてなんかねぇ!オラ!」


 兄ちゃんはそう言ってオレの両脇にある手を動かした…!!

 こちょこちょと…


「わはああはああははあはははっ!!や、やめて!あはははははは!!」

「フハハ、さっきはよくも布団お化けをやってくれたなぁ!今度はこの擽りお化け様が相手だ!」


 こちょこちょぉ~と指の動きを止めず弄ってくる。

 その動きに…


「ソ~ルゥ~?」


 背後からオークでも逃げそうなくらい強烈な笑みの母ちゃんが迫ってた。


 瞬間オレの両脇を擽っていた両手は素早くもとあるべき場所へと戻り、


「顔を洗ってまいります!」


 そう言って、そそくさと洗面所まで走っていった。


「たくっ!ソルったらどうしてあんなに悪戯っ子になっちゃったのよ」

「さぁ~?」


 母ちゃんの悩みを一緒になって考えてみる。


 う~ん、と唸っていると、じっと見つめてくる母さんと目があった。


 次の瞬間。瞬き程の間の出来事。

 その一瞬で、身体にギュッと絞まる感覚に襲われる。


「きゃぁー!我が子ながら可愛い!!可愛い過ぎるわぁ!!」


 頬を擦り合わされ、挙げ句吸われた


 ブチュウウウウウッッッッ


 強烈なキスにをされる。


「うわぁあああああ、やめろぉおおお!」


 必死に振りほどこうと、踠き抵抗してもまるで歯が立たない。


「パパァアアアアアア助けてぇ!!」


 あまりのホールドにパニックを起こし、ぼくは咄嗟に出たパパへ助けを求めた。


「いやーん、久々の「パパ」よ!!パパァ!!呼ばれてるわよ!そうだ、またママって呼んで!」

「またママが可笑しくなったパパァ!!お兄ちゃん!!」

「きゃあああああああ!!!」


 必死に助けを求めるも、なかなか現れない父と兄。

 仕舞いには遠くから…


 ルドォ!!すまん!!この状態の母さんはオレにも危険だ!!

 だから、とりあえず薬草採取次いでに父さん見かけたら助けるように言っとくよ!じゃあっ!


 なんて声が聴こえてきた。


「お兄ちゃんの裏切り者ォ」


 帰ったら魔術をいっぱい教えてやるからぁ


 以降兄は夕方まで姿を見せなかった。

 こうして、いつも通りの日常が過ぎていった。

投稿事態は気紛れなので気長に待っててください!

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