祖父の遺影に乾杯
あの時のビールの味は忘れられない。
それは俺が二十歳の誕生日を迎えたあの日、祖父の遺影の前で飲んだあの瓶ビールの味だ。
俺は幼い頃から豪快に酒を飲む祖父の姿を見て育った。
気付いたらこの俺も無類の酒好き親父へと進化していた。
幼い頃、祖父によく居酒屋に連れてってもらったな……
祖父は毎回決まって瓶ビールを頼む。
子供の俺は瓶のコーラとオレンジジュースだ。
コーラと焼き鳥で祖父と一杯やったのはいい思い出だ。
そして祖父は毎回言う……
お前が大人になったらビールで乾杯しようってな。
男同士の約束ってやつさ。
だが俺が成人する前に祖父は病で亡くなってしまう。
祖父の願いは叶わぬものとなってしまった。
だけど俺は少しでも祖父の願いを叶えようと、二十歳の誕生日に祖父の遺影の前でビールを飲んだ。
祖父の大好きだった瓶ビールをな。
じいちゃん、乾杯……!
初めて飲むビール。
その味はとても苦かった。
これが大人の味か……
まだまだ俺もじいちゃんの足元には及ばんな……!
豊田楽太郎です。
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