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ビュー・オブ・デンティスト25

「アヤ!」

アヤは小烏丸達の声で目が覚めた。


「え?」

小烏丸、干将、レーヴァンテインが心配そうな顔をしているのがアヤの目に映った。


アヤは自分が倒れている事に気がついた。


「やっぱりだ。二階で藤林さんを探していたんだろ?」

「私、倒れたのね。ああ、頭痛い。一酸化中毒かしら?」


アヤはゆっくりと起き上る。

小烏丸達は着物に着替えていた。


不思議と彼女達のまわりにはケムリどころか炎も寄ってこない。


「現世で着物を着ているのはすごいしんどいからあんま、現世では着たくないんだけど最強の防具でもあるから今は着ているだけ。」


アヤが不思議な顔をしていたので干将は補足として付け足した。


「そうなの。」

「アヤもなればいいじゃん☆」

「そんな変身の仕方なんて知らないわ。」


レーヴァンテインが無邪気に服をつつくがアヤの服装は変わらない。


「それより藤林さんには会えたのか?」

「いいえ。会えていないわ。」


「どこにいるのかはわかったの?」

干将の言葉にアヤは首を振った。


「じゃあ、はやく探そうよ☆彼女はもしかしたら……。」

レーヴァンテインの言葉にアヤは頭を抱えた。


「あんた達、わかってたんなら一目散に逃げるんじゃなくて探しなさいよ!」

「すんません……。」


三人はアヤの言葉に素直にあやまった。それをため息で流したアヤはよろよろと立ち上がる。


「行くわよ。」

「うん。」


アヤと武神達は出火原因の医局まで戻る事にした。


そこから徐々にしらみつぶしにあたってみようと思ったのだ。


燃え盛る炎の中、四人は走る。アヤは武神達と一緒にいればなんの問題もなかった。


もう外見を留めていない入口から中に入り、燃え盛っている受付を通り抜け、燃えた扉から医局へと入った。そこで一同は息を飲んだ。


そこに月夜紅がいた。


ただ立っていたわけではない。

鎖のようなものが月夜の身体を覆っていた。服装は白い長襦袢になっている。


「月夜センセ……その格好……。」

小烏丸があっけにとられた声を上げた。


「わたしはワイズに裁かれる。これでいいんだ。


遮断かもしれないし封印かもしれない。


あの男と共に高天原にて非情な罰をうける。

これはワイズからの前準備だ。


高天原で裁かれる罪神は皆このような醜い恰好になる。」


「それが月夜先生の考えなの?」

レーヴァンテインがせつない顔を月夜に向ける。


「もうわたしを月夜と呼ぶな。どうせ偽名だ。わたしは……死神だ。」


「罪を……罪を償うのは良い事。だけど罪に苛まれている心を忘れる事も大事だと思うの。私はね。」

干将は月夜に向かい叫んだ。


「あんたらはやっちゃいけない事をした。だけどあんた、このままじゃ神として先に進めないぜ。」

小烏丸は月夜を睨みつけた。


「罪を忘れる事なんてできない。このまま生き続ける事などわたしにはできない。」

月夜は空虚な瞳で武神達を見る。


アヤは目を伏せた。


アヤも時神になる際に前の時神を殺している。

強い時神が出てきた時、弱い時神は死ななければならない。


それが時神のルールだった。


前の時神は五百年以上生きていた時神だったが年齢はアヤくらいの男の子だった。


アヤが時神に目覚めた時、彼の力はみるみる衰退していった。


アヤのほうが彼よりも力の強い神だった。


彼はアヤを殺そうとした。


力の強い神が消えれば時神は自分だけ……自分がずっと時神でいられる。彼はそう考えていた。


もちろんアヤも死ぬわけにはいかなかった。

アヤは力をすべて出し切り、彼を殺した。


その罪をアヤは今でも忘れる事ができない。

どうしようもなかったのだが人を一人殺してしまったのだ。


あの時は時神のシステムを恨んだ。


とても苦しかった。


今の死神はどうなんだろう。

自分みたいにやむをえなしにではなく遊び半分でやった事だ。


罪の重さの感じ方は月夜の方が重いのか……。


「死神、あなたは自分でなんとかしようとは考えないの?」

アヤはこんな質問をしていた。


「自分ではなんともならないから頼むのだ。所詮、自分の心の安定だな。」

月夜は力なく笑った。


「そう……。」

それ以上アヤは何も言えなかった。


罪の心は人によって違う。自分で償おうとする人もいれば人に裁いてもらおうとする人もいる。人が裁いてもなんとも思わない人だっている。


個人の価値観をアヤは壊せなかった。


月夜紅がそれでいいと言うなら止めない。彼女は子供ではない。大人の意見としてそう言っているのならアヤに止める権利はない。


「わたしはこれからワイズのもとへと向かう。偶然だか必然だかわからないが厄神と藤林さんとワイズが同じところにいるようだ。」


月夜はそう言うと身体に鎖を巻きつけたまま、悠然と歩き出した。


アヤと武神はどうしようもない現実に憤りを覚えていた。

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