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ビュー・オブ・デンティスト17

「!?」

かりんは目を疑った。


いままででも充分失神しそうだったが急に変わった院長の格好に目を見張った。


院長は藍色の羽織に蒼い着物を着込んでおり、頭にはいつの間にか編み笠が乗っていた。


「これではっきりしたわね。」

「うん☆やっぱあの第一級犯罪の厄神だよ☆」

「はじめから勝てるなんて思ってねーよ!」


三人はやけに遠くで各々叫んでいる。


「それを証明するために俺を呼んだのかい?」


「こんなんであんたを逃がすあたし達じゃないよー☆」


レーヴァンテインさんがビシッと指を院長に向ける。


「ていうかね、私は早く帰って心霊番組をみたいの。できれば今すぐ投降願いたいわ。」


干将さんに対し院長は深いため息をついた。


「だから俺は武器を持ってないって……。」

「お前ぇ!存在自体が武器じゃねーか!」


他の二人よりもビビッている小烏丸さんは震えた声で叫んだ。


「君達は武神だろう。なんでそんなに敵に怯えているんだい?」

「う、うるせぇよ!」


小烏丸さんの反応を楽しみながら院長はそっと空を見上げる。空では楽しそうに星々が輝いている。


「まあ、確かにただでは帰してくれないみたいだな。」


院長は夜空を……いや、何かを眺めながら笑った。


かりんも院長にならい空を見上げたがかりんには星しか映らなかった。


「うおっ!剣王!」

「やっと来たわね……。」

「けんおー☆」


三人は何もない空間に向かい安堵の表情を見せている。


何もない空間のはずなのに何かそこに立っているような気がする。


「西の剣王……タケミカヅチが直々に来たのか?」

院長も何もない空間に向かい話しかけている。かりんには見えなかった。


そこに名のある神がいる事も彼女にはわからなかった。


「彼女にも見えるように魔法陣でも描くかねぇ。


おい、めんどくさいから描いてくれないか?


神社だと人間に声は聞こえるんだけど姿は見えないんだったっけね。」


声だけが静かな神社に響く。低い男の声だ。軽い口調だがなかなかの重さと威圧を感じる。


「めんどくせぇな。」

「あなたの奴隷じゃないんだけど。」


小烏丸さんと干将さんはぶつぶつ言いながら落ちていた木の棒で何か描きはじめた。


「手品―☆手品―☆」

レーヴァンテインさんは楽しそうに手拍子をしている。


「こんなもんだろ。」


小烏丸さんが胸を張った時、円形の魔法陣が光だし、いきなり時代を感じさせる男が現れた。


邪馬台国から出てきたのかと思ってしまう髪型と水干袴。顔には無精ひげが生えている。


顔は穏やかだが眼光は鋭く油断ならないものがある。


「えーとそこの娘さん、それがしがみえる?」

「え……ええと……見えます。」


「それがしはタケミカヅチ。神々からは剣王と呼ばれている。都合によりこの魔法陣からは出られないので握手等はできないがよろしく。」


剣王はかりんに笑いかけた。


「は……はい……。」

かりんは反応に困りとりあえず返事を返した。


「時に厄神。君はそろそろいい加減にした方がいいよ。その娘さんを解放して諦めなって。今回の件はそれがしが処理してあげるよぉ。」


「嫌だね。俺は自分の罪は自分で償いたいんだ。それにもう高天原には帰りたくない。藤林君は俺の事を好きだと言ってくれた。だから余計高天原には戻りたくない。」


「ほんとガキみたいなやつだねぇ……。」


こちらを睨みつけている院長に剣王はため息をついた。


「俺はもう人を傷つける事はしない。


もちろん、厄神としての職務も放棄するつもりだ。


信仰が集まらず消えてしまってももうしょうがないと思っている。

藤林君にもずっと笑っていてほしいと願う。」


「だーから、君がいるかぎりその娘さんは幸せになれないの!」


剣王は声を荒げた。


「私は今、とても幸せです!仕事もあって院長も大好きです!私の日常をこれ以上壊さないでください!」


かりんは剣王に対し叫んだ。


「うっ……。」


剣王は言葉を飲み込んだ。


「あなたが誰だか知りませんが院長を困らせないでください!お願いします!」


「そんな……困っているのはそれがしの方なんだけど……。


それに君、君はろくでもない男を好きになっているんだよ?


ちゃんとした人間の男を好きになんなよー。


そりゃあ、中にはオオカミのような男もいるかもしれないけどさ……趣味とか職場恋愛とか色々君には未来があってだな……。」


「けんおー、何言っているかわかんなくなってる☆」

「うるさいねぇ……わかっているよー。」


水を差したレーヴァンテインさんを軽く払った剣王はまた頭を抱えた。


「剣王、厄神捕まえんのか?」


小烏丸さんはなんだか飽きた目で剣王を見つめた。


「……うーん……人間の女の子にここまで必死の顔されちゃったらさー……捕まえるに捕まえられないじゃない。


でもねぇ、それがしの仲間が一人あそこまで追い詰められたんだ。


それを見過ごす事はできない。厄神、この件は保留にしてやるが条件がある。」


「……。」

院長は黙って聞いている。


「……これから起こりうる藤林かりんの歴史を歴史の神が満足するように君が書きかえる事だ。


君が少しでも逃げたらそれがしが直々に君を消す。それに関しての質問は受け付けない。」


剣王の瞳が鋭く光る。その瞳を院長はじっと見つめていた。


「いいだろう。その条件、厄神を放棄しても守ってみせる。」


「それがしはこれでいいがワイズは黙っていないぞ。彼女が仲間の不祥事を……罪を見過ごすわけがない。何かきっと君にしてくる。気をつけなよぉ。」


「ご忠告どうも。」

剣王の言葉に院長は素っ気なく言った。


「よかったな。これであたしらも職を失わないで済むわ。」


小烏丸さんはうんうんと頷いている。


「じゃあそれがしは帰るよ。色々動いたら疲れちゃった。」

「相変わらず軽いオッサンだな。」


小烏丸さんが突っ込んだが剣王は頭をポリポリかきながら帰る準備をしはじめた。


「剣王……高天原からここまで来ただけじゃない。まったくもうだらしないったらない!」


「そんな干将ちゃんだって一大事なのにしっかり心霊番組の特番を録画してから来てたじゃない。」


「うっ……それは……それ!」


プンプン怒っている干将さんを茶化した剣王はその場から消えて行った。


「じゃあね……。」


との言葉を残して。


かりんは情報の整理をするべくしばらくフリーズしていた。


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