ワタナベの泳ぎ方
第1幕が開かれた──
それは我が家がYouTuberとして生きていこうと決めた日のことだった。
私は毎日の日課であるスイミングスクールで、スイミング帽のメッシュの隙間から彼を見つめていた。
そう、タナカだ。
タナカは良い奴……だと個人的には思う。骨盤からくるぶしにかけての曲線はどんな高度な数式でも表せないほどに美しく、そして何より俺より足が遅い。
そんなタナカとタメを張れるのは唯一無二の存在である河童のワタナベだ。
海はとうの昔に干上がり、荒廃しきった大地と点在するメガシティ、河の申し子は絶滅種として今まさに合コンのセッティングに息を荒げている。
それが彼の処世術、否、世の泳ぎ方なのだ。
私はYouTuberとして彼に焦点を絞ることに キミに決めた☆