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化学嫌いの転生化学者  作者: シュリーレン
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一話 鍵穴の在処


二度目の生を受けてから,転生してから,早四年の月日が経った。

その四年間に判明したことは数多ある。

何よりも衝撃的だったのが一つある。



転生から4ヶ月程経ち,やっと私が現在置かれている状況を受け入れられるようになった。


無論,向こうの家族を忘れた訳ではない。

哀しみは未だに残っている。

だが今すべきことは元いた日本に帰ることだ。

日本に帰り,両親と会って話せば

哀しみは消え失せる筈だろう。

そもそも哀しみの原因は

家族と離れてしまったからなのだから。


ともかく日本に帰るためには此処が何処だか,

特定しなければならない。

最も最悪な可能性は,転生先が

異世界のような精神世界,

時空間が歪んだパラレルワールド, ...

など本来の地球上ではないことだ。

そうなると,『元いた日本』に帰るのは

殆ど不可能という結論に至るだろう。


情報を集めてから結論を出そう。

『待てば海路の日和あり』とも言うし。


その集まった情報は

・北半球の温帯

・英語圏の国

・日本でも見られた星や星座があったこと

・物理的な法則は地球と一緒

・その他共通点多数

といった具合だった。

そのために微かに感じた。

幸いにもここは地球上のどこかだと。

期待してしまった。愚かにも...。


・コンピューター機器はない(観察した限り)

・魔法がある


なんてことだ...

最悪の想定が現実となるなんて

地球上のどこかなら日本に帰れたのに...

ましてや時代も違うらしい


避けられない現実を突き付けられたらしい。

その日の夜,不安に駆られて泣き喚いた。

精神は17歳男子の筈だったのだが。


つまりここは,地球と似て非なる場所,となる。


もう一回死ねば地球に戻れるだろうか

いややめるべきだ


自問自答する。


ハイハイがやっとの赤ん坊が自殺は出来ない

仮に出来たとしても,記憶が残るとは限らない

地球にまた戻れる可能性も低い

ましてや新しい両親を哀しませる

親不孝は一回だけで沢山だ


結論を基に決断した。

..この世界で生きていくことを



「ルーク,化学について知りたいか?」

新たな父親は齢3歳の息子に問いかける。

『ルーク』は私の新しい名前らしい。

父はこちらを向かず,書斎の本棚を漁っている。

本に向ける真剣な眼差しは,

初めて病室で彼を見たときと大違いだ。


息を呑む。

前世でも理科という教科自体嫌いだった。

特に化学だけは無理。

目に見えない,実感を伴わないからだ。

訳の分からない科目だ。


というか普通小学生にも満たない年の子供

(中身は高校生だけど)に化学教えるか?

また恐ろしい想像が降ってきた...。

精神が成熟していると分かって言っているのか?

前世の記憶があると分かって言っているのか?


幸いにも,恐れは骨折り損に終わった。


「なんて3歳には流石に無理があるか」

微笑みながら前言撤回した。


間違ってはない 紛れもない3歳だ 見た目は

だが中身は高校生,いやほぼ大人だ

容易ではないが無理でもない

ここで逃げる方が億劫だ


「勿論,知りたい。教えて」

父は目を丸くした。よほど驚いたようだ。

感情豊かな人らしい


父の話は錬金術から始まった。

随分と語っていたが,そもそも興味を持てず,

9割程聞き流してしまった。

ものすごくはしょると,錬金術で得た知識を

化学に流用したってことだ。


そして徐々に自分の知識とリンクし始めた。

二酸化炭素,水素,酸素,基本的な気体の発生方法や酸,アルカリについても語ってくれた。

質量保存の法則,エネルギー保存の法則も噛み砕いて説明を試みていた。


「そして歴史上の人物は...」父は続ける。

「化学を学問として留まらせるだけでなく,

新たな力として発展させた」


「え...」私は唖然とした。

「兵器とどう違うの?」

「その力は元来人が持つ知力,体力と似通っている自然的な力だ。人工の武器とは毛色が違う」


となると...

「魔法ってこの世に存在する?」私は訊いた。

「あぁ,フィクションの上のみだが」


つまり,いつしか見た『魔法』は

化学の力だったのだろうか 

火と水を操っているように見えたのだが


「『化学の力』ってのは知識を使いこなし,

身の回りの物質を借りることでエネルギーを取り出して,生み出した力のことだね」

多分この世界ではそういった定義だろう


「惜しい」父は言う。

「身の回りの物質だけじゃない。身の回りにない元素や分子,物質を一時的に『借りる』ことが出来るというのが私の仮説だ。質量保存の法則とさっき教えたが,私の仮説は違う。その法則があるならば,今化学者が使う程の物質は賄えない,と気付いた」


「じゃあ何処から一時的に『借り』てくるの?」

「もう一つの世界からだ」


もう一つの世界,そこに故郷日本はあるのか

もしかしたら『一時的に』送りこむことも,

永久的に送り込むことも可能かもしれない。

となれば,もしかしたら帰れるのかもしれない


「だがこの仮説が本当か否かは分からない」

「だからな...」父は続ける。

「ルークの力を父さんに分けてくれないか」


望みと光が目の前にある


「勿論,手伝う」


父の目は夢見る少年の眼差しだった。

父の大判の古書みたいな本を持つ手は

震えていた。

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