血税0228
「馬氏の五常の五男のあなた、居眠りしてましたね? (拍手と歓声)、何を考えてンだ! 我々の人生かかってるぞ!」(王平)
北伐軍の先発隊が外亭へと進軍する。
私、馬謖は当隊の全権指揮官である。
どうやら、うっかり居眠りしている内に、馬車で運ばれ、布陣予定地に到着したらしい。
後々の戦場を一瞥もせずにご到着とは、気が抜けていると王平から叱責されるのも無理はない。
しかし目的地はまだ先と勘違いして、居眠りしたのもまた無理からぬことなのだ。
遠目に見た景色、まさかここが目的地だとはつゆにも思わなかった。
実際の地形と地図情報が違いすぎる。想像した山々に比べ、実物は平坦過ぎた。
後日、私の地図は高低差が四倍ほど誇張されているのだと知らされた。
行軍中にみた夢をはっきり覚えている。
私は高峻な山に陣取り、高所からの攻撃により敵をせん滅する。
その勢いのままに、敵の都へと破竹の快進撃。
出陣に際し、師から高所に陣取るなと何度も念を押された。何度も何度も。
師は夢の中でも案じてくれた。涙してくれた。
しかし私は地図を初めて見た時から、高所に魅了されていた。それは運命と呼べるほどに。
それが……まさかの拍子抜けであった。