表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

賞金首

 孫堅の部下が洛陽の井戸の底からお宝を回収した。伝国の玉璽、すなわち天子のハンコである。


 孫堅はこれを隠し持ち、孫策は交渉の道具とし、袁術は実印とした。使ったのである。


 袁術が新たな皇帝となる決意と共に、試し紙に判を押した。

 並びひれ伏す配下のどこからか「天使(エンジェル)」と声があがった。

 文字違い、天子と大っぴらに呼ぶことに、はばかりがあったのだろう。


 しかし当の袁術にしてみれば別にエンジェルでも構わない。むしろエンジェル万々歳。なぜならエンジェルのエンは袁家のエンなのだから。

 彼は己の命運を委ねるほど、こじつけが大好きだった。

 また、響きが”紹”よりも”術”寄りな点も彼を喜ばせた。


 気を良くして、もう一度押した。また呼ばれた。このやり取りは手が疲れるまで続いた。


 翌日、某業界にて、とある噂が広まった。


「エンジェルとおだてれば判がもらえるぞ!」


 契約目当ての人々がこぞって列をなし、玉璽は乾く暇なしとなった。


 袁術は民衆の、判を押したときに咲く満面の笑みを見て思った。私は愛されている。

 対立者に、たとえ賞金首認定されようとも、何も怖くはない。


 しかし所詮はただのこじつけ。多大な契約負担により国は疲弊し、袁術は追放された。

 土地、財貨、部下、すべてを失い、血を吐いて……病院へ緊急搬送された。


 入院だ、求められるがままに結んだ契約に医療保険が多々あった。

 多重契約、おまけに特約全部乗せ。おかげで最新医療と手厚い看護を受けられた。

 じきに回復するだろう。カモ扱いが、まさに怪我の功名となった。


 はたして、早期解約を愚図った担当者の愛なしに、この結末はあり得たのでしょうか。

 弁護側からは以上です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ