俺を殺したナイフ
ラナミリア王女のもと、何とか誰にも見つかることなく武器庫へとたどり着いた。今は武器となる物を物色中だ。ここまで上手く事を運べたのは、全てラナミリア王女のおかげだ。なんでも、この城の地図はだいたい頭に入っていて、今の時間帯にどんなルートでいけば見つからずに行けるのかはだいたい分かるのだとか。さすがは王女様。この城に14年も住んでるだけはある。
改めて礼が必要だなぁと思っていると、ラナミリア王女から声がかかった。
「サーガ、まだか。早くするのだっ! あまり時間がない」
「もう少しだけお待ちを……」
一目見ただけで業物とわかるロングソードを二本、腰に差し、槍かあるいはショートソードでもいいからと急いで探していると、
「……んっ?」
ある物に目が留まった。それは、ナイフ。華美な装飾は一切ないどこにでも売っていそうなただのナイフだ。しかし、そのナイフから目が離せない。
俺はこのナイフをどこかで見たことがある……。いったいどこだ……、どこで──
そこまで考えて、ジジジッとまるでTVの画面ににノイズ入るように映像が頭に浮かんだ。それは、つい最近の出来事のようでありながら、しかし遠い昔の出来事であるような記憶。
地球での遠い記憶だ。
あの日、俺の地球での人生が終わったあの夜。あの時俺の前に現れた謎の女。
そうだ、確か──
俺はもう一度、ナイフを見た。
そのナイフはあの時、俺を刺した女が持っていたナイフに似ていないか?
いや、似ているも何も、これはあの時のナイフだ。あれは一瞬の出来事で、記憶も曖昧だ。しかし何故か俺は確信した。証拠など何もない。それでも俺はこのナイフがあの時のナイフだと断言できる。
どうして地球にあったナイフがこの世界にあるのだとか、疑問に思うことはたくさんある。だが、俺だって一度死んで、この世界で生きているんだ。ナイフが世界を渡ることだってあるのかもしれない。そう思い、今は考えないようにする。
「サーガ、まだかっ!?」
ラナミリア王女の少し荒げた声で、はっとなる。
「い、今行きますっ!」
俺は、このナイフを持つとラナミリア王女のもとまで急いだ。
「……そんなただのナイフを持っていくのか?」
「ええ、少し気になりまして……」
「そうか、まあよい。それでは行くぞ」
「はいっ」
今から向かうのはこの城の抜け道。王族しか知らない通路だ。そこからなら誰にも見つからず脱出できる可能性が格段に上がるからだ。
右へ左へと、ただラナミリア王女に付き従う。
どのくらい走っただろうか……。誰にも遭遇することなくラナミリア王女は一つの部屋の前で止まると鍵を取り出し、扉を開けた。
「……まさか、常に鍵を持ち歩いているのですか?」
「まあな、何が起こるか分からんからな」
「……もしやこの抜け道でお忍びに出たりしているのですか?」
「………………まさか」
「……出ているんですね……はぁ」
「わ、私のことはよかろうっ! さ、早く行くぞ」
確かに今はそんなことをあれこれ言っている時間はない。ラナミリア王女に続いて部屋に入った。
一見するとそこはただの書棚だった。だがここに抜け道があるのだろう。
……書棚に、隠し通路。テンプレだな。
そんな暢気なことを考えていると、ラナミリア王女は書棚のない右の壁に向かうと、壁に手を当てた。すると──
ガシャンッという音とともに目の前にあった本棚が横にずれ、向こう側の壁が見えた。
……てっきり俺は本を移動させたり、入れたりするのかと思った。ここはテンプレじゃないんだな。
またしてもそんな阿呆なことを考えていると、ラナミリア王女から声がかかった。
「なにぼさっとしているんだ」
「も、申し訳ありません」
俺がラナミリア王女のところまで行くと彼女は、そっと本棚の向こう側にあった壁を押した。するとそこから通路が出現した。俺はその通路へと足を踏み入れる。
「……ラナミリア様、ありがとうございました。このご恩はいずれ必ず」
「よいのだ、サーガよ。これは私がしたくてしたことなのだから」
「……もし……もしも、また泣いてしまうようなことがあれば私を頼ってくださいませ」
「……ああ」
「……それではラナミリア様、ご達者で」
扉を閉める直前、俺はラナミリア王女の顔を見た。美しいその顔は少し泣きそうになりながらも、されどその表情はどこまでも優しさが宿っていた。
その表情を俺は脳裏に焼き付けた。
「──生きろ、サーガ」
そんな言葉とともに……。
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