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俺が愛した女は武器だった。   作者: トマトケチャップ
第一章
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王宮へ

「お待ちしておりました。スーザン様。サーガ様」


 王宮までの道のりで、賊に襲われるかもしれないという考えは案の定杞憂に終わり、何事もなく王宮まで辿り着くことができた。

 王宮に着くと、執事服を着た中年の男が俺たちを待っていた。


「本日は遠い所、ようこそおいでくださいました」

「ずっとこの日を待ち侘びていたんだ。私もサーガも。苦ではなかったさ」

「分かっております。陛下もこの日をいまかいまかと楽しみにしておりました」


 この執事服を着た男はこの国『マルトラス』の国王の執事だ。名は確か、キール。

 俺も多少国王とは関わりがあるが、スーザンは俺の比ではない。

 戦争が勃発し、この国にとって不利な状況になると、王直々に戦争参加を『剣聖』に頼む。つまり、スーザンへと。

 セントラル家はこの国にとって、いわば切り札だ。

 たった一人で戦況を覆す事ができる。

 『剣聖』が戦場に立てば、自軍の士気は最高潮に達し、他軍は『剣聖』に恐れ慄く。

 それを証明するかのように他国からはこう呼ばれている。


 『赤い死神』と。

 

 その名の由来は、白い甲冑が返り血で真っ赤に染まり、次々と仲間を屠っていくその剣はまるで死神の鎌のようで、命からがら逃げかえった兵士たちが、「死神が出た。赤い死神が……」と話したことから、『赤い死神』と呼ばれるようになった。

 もっとも『赤い死神』と呼ばれ始めたのはスーザンではない。今からおよそ五百年くらい前のセントラル家初代当主らしい。


 そういうわけで、セントラル家当主であるスーザンは国王とは深い関りがある。俺も一応国王には可愛がられたという記憶はあるが小さい時であるし、たぶん将来を期待してのことだったのだろう。


「さあ、どうぞ中へ。ご案内いたします」

 

 柵で出来た扉、鉄格子というのかどうかは忘れたが、その扉を横に控えていた衛兵が開くと、扉を抜けキールが前を歩き俺たちを先導する。

 キールが王宮を案内している間、いろいろと質問された。

 魔法が使えるようになればどうするのかとか、婚約者は見つかったのかとか。

 ただ俺的には、キールとそこまで親しくないし答える義務はないと思って適当に相槌を打った。前の俺、つまり前世の記憶を思い出す前の俺だったら素直に答えていたかもしれないが、今は前世の俺の記憶や性格がブレンドされたような状態で、少し性格も変わっていると自覚している。


「サーガ様。まだ少々お時間がございますので、とりあえずこの部屋をお使いください。今日一日はこの部屋がサーガ様の私室となります。お時間となりましたらお呼びいたします」

「分かりました。それでは父上」

「──サーガ」


 スーザンに一礼して部屋に入ろうとした俺をスーザンが呼び止めた。


「分かっているな」

「はい」


 スーザンの言葉の意味は、セントラル家としての結果を期待しているということ。つまり、半端な結果は許さない。セントラル家次期当主としての力を証明しろ。そういうことだ。


 俺の表情を見て満足したのか、頷くとキールを連れてスーザンは去っていった。

 俺も用意された部屋に入る。

 その部屋は広くとても豪奢で、客人用に作られたとは思えないような素晴らしい一室だった。下手したら俺の自室よりも快適かもしれない。ベッドはふかふかで、絶対に寝心地最高だ。さすがは王家。


 俺はしばらくベッドで横になっていると、意図せず首に指を這わせた。正確に言うと、封印の首輪に。


 今日まで、いろいろな事があった。

 そのすべてはこの日の準備のため。

 封印の首輪を外したら、もう後戻りできない。

 これを外せば、セントラル家としての宿命を果たさなければならない。

 だが、覚悟の上だ。

 大丈夫……、大丈夫だ。何の心配もない。


 俺は封印の首輪から指を離し、天井を見上げ、眼を瞑る。


──兄上なら何の心配もしておりませんが、大丈夫です。頑張ってきてくださいね。あ、でも、お身体には気を付けてください。


 セントラル家を発つ前のことを思い出し、自然と笑みが零れた。


 そうだ……。

 あいつの期待にも応えなくてはな。



 コンコン。



 部屋の入り口の扉をノックする音が聞こえた。

 どうやら、とうとう時間が来たようだ。

 俺の……、サーガとしての俺の、ようやくのスタートラインが……。



 さあ、行こう。








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