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俺が愛した女は武器だった。   作者: トマトケチャップ
第一章
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覚醒

 ──思い出した


 眠りから覚めた俺はまさに覚醒し、全てを思い出した。

 俺はかつてここではない世界『地球』という惑星に住んでいたこと。

 そして、俺はその地球で謎の人物に殺されたこと。

 殺された後、なぜか二度目の人生を地球ではない世界『アバンテ』という異世界で送っていること。


 もしかしたらそれは夢であり、ただの妄想かもしれない。ただ、夢にしてはあまりにもリアルな記憶だ。

 十五年間も地球でただただ退屈な日々を過ごした記憶。退屈な日々を誤魔化すために、自分のことを好きだと言った女性と何となく交際した記憶。俺一人で十人近いやつら相手に擦り傷一つ追うことなく喧嘩で圧倒した記憶。そして、心臓をナイフで刺された記憶。


 その時の記憶を鮮明に覚えている。胸が熱くて、だんだんと寒くなっていって、そして死を実感した。

 こんなにリアルな記憶が夢や妄想なら、俺はとんだイカれ野郎だろう。絶対に病院に行った方がいい。

 この世界に精神を診てもらう病院などないが……。


 どうして今頃思い出したのか。

 俺はもう十五だ。今日でちょうど十五歳になった。

 いや、だからこそ今日なのだろうか。

 あの謎の人物に殺された時、俺の年齢は十五歳だった。だから十五歳になった今日、前世の記憶を思い出したのかもしれない。

 だからと言って今日思い出すのは、少し堪えるものがある。


 この世界『アバンテ』には魔法が実際にある。しかし魔法があると言っても、使えるようになるのは十五歳からだ。十五歳になるまでは魔法は使えない。使えないようにチョッカーの様なものを首に付け、封印される。このチョッカーは魔法を使えない様にする魔法具だ。

 魔法具とはその名の通り、魔法の効果を与えた道具のことだ。


 なぜ十五歳になるまで魔法を使えない様に封印するのか。それは未熟な身体では魔法を上手く使い切れずに、暴走してしまい死に至る可能性があるからだ。


 この世界での成人年齢は十五歳。それは魔法が暴走せずに十分扱い切れる年齢であるということ。魔法が上手く使えない年齢は未熟者なのだ。

 この『アバンテ』はそういう世界。魔法が全て。魔法が基準。

 

 今日、俺は十五歳になった。つまり、封印の首輪、この首に巻いてあるチョッカーを外す日。

 この封印の首輪を外すには専用の魔法具がいる。その魔法具があるのが王都のみ。

 つまり現在、俺は王都にある貴族専用の宿に泊まっている。

 一応、俺もそれなりに有名な貴族の家系に生まれた。いやまあそれなりにどころか、一部の人たちにとってはすごく有名な家系だ。


「おはようございます、父上」


 リビングに行くと、もうすでにこの世界での父親、スーザン=マルテ=セントラルがいた。

 ちなみに、俺と父親が貴族専用の宿『ノーブル』に借りた一室は日本で言うところの2LDKだ。


「ああ、おはよう。どうだ調子は、サーガ」

「問題ありません」

「そうか」


 言うまでもないが、サーガとはこの世界での俺の名前だ。

 サーガ=マルテ=セントラル。


「朝食を食べたら準備をしておけ」

「はい」


 後一刻、つまり二時間後に王宮に召集が掛けられている。おそらく人数は少ないだろう。同じ日に生まれた人も限られるし、貴族と平民で分けられるからな。


 スーザンの前に座り、軽く朝食を食べる。この朝食はスーザンが作ったのではない。朝になると、宿側から提供されるのだ。


「──やっとだな」


 朝食を食べ終えた頃、スーザンが俺に向けて話し掛けた。その言葉はあまりにも抽象的だったが、俺はスーザンが何を言いたいのかを正確に理解した。


 いくら、どれだけ功績を立てようが今まではまだ未熟者で皆を本心から認めさすことは出来なかった。

 だからやっとなのだ。

 サーガとしての俺は、今まで、それこそ死ぬかというような訓練を受けてきた。死に物狂いで強くなろうとした。

 幸運にも一度目の人生と同じ、いやそれ以上に物覚えが良く次から次へと技を吸収していった。


 『剣聖』


 それがセントラル家に与えられた称号。

 その現当主であるスーザンの長男が俺だ。


 セントラル家は強さだけを追求した家系だ。強さこそが全て。セントラル家の嫡子との婚約者はセントラル家自らが選定する。

 その選定基準は能力だけ。

 人間としての能力、ただそれだけだ。


 知能、身体能力、魔法の才。これら、人間としての能力が他者よりも格段に優れているものを選定し、優れた子を産ませる。つまり、人工的に遺伝子操作をしているのだ。


 ただし、人間としての能力が優れたものが見つからなければ、近親婚すらする、そんな狂った家系でもある。


「それでは失礼します」


 俺は、今日の準備をするため一旦部屋に向かう。

 まあ、準備と言っても着替えなどだが。

 俺用に造られた、セントラル家の家紋が入った白い礼服、言わばタキシードのような物を着る。


 いつもは帯剣しているが今日、これから行うのは、言うなれば正式な儀式だ。帯剣の許可は下りていない。一応、ダガーなどは忍ばせておくが、剣などは持ち込めない。

 もし玉座などに行くことになれば、荷物検査などでダガーも押収されるだろうが、その時はその時だ。


 自分の身は自分で。


 もし、手ぶらで王宮まで行き、その王宮までの道のりで、ほぼ百パーセントあり得ないが、賊に襲われたりしたら目も当てられない。

 まあ賊程度なら、武器などなくても体術だけで退けられそうだが、念には念を、だ。


 この『アバンテ』という世界は、かつて行きていた日本とは平和さがまるで違う。

 殺しも平気でするし、奴隷制度もある。魔物もいて、魔族もいる。戦争も世界の各地で行われている。

 そういう世界だ。賊だってゴロゴロいる。実際、俺も賊に襲われたことがあるくらいだ。


 とまあ、そういうことで帯剣はしないがダガーは忍ばせておく。

 後一時間くらいはこの宿にいるはずだから、暇潰しがてらに色々と考えたい事が出来た。

 思い出した直後は衝撃的過ぎて忘れていたが、前世──と呼んでいいのか分からないが──の最後の光景、俺を殺した女が話した言葉。


 愛してる。


 音は聞こえなかったが、俺はそう言われた気がした。

 しかし、しかしだ。

 今思えば、あれは日本語ではなかった。

 あれは、この世界での言葉だ。

 なぜ……? それなのになぜ、あの時言葉を理解したんだ?

 それともあの時は理解していなくて、思い出したことで、今の俺はあの言葉を理解できるから、そう勘違いしているだけなのか?

 その方が可能性が高そうだが……。


 あー、だめだ、分からん。

 そもそもなんで、地球にこっちの言葉を使うやつがいるんだよ。

 もしかして、俺がこの世界に来た原因はあの女か?

 あの女が俺を殺して、この世界に転生させた?

 なくもないが、理由が分からない。


 ちっ、くそ……。

 分からないことだらけだ。

 やっぱ、こんな大事な時期に思い出したくなかった。

 これは今日中に整理するのは難しそうだな……。


 俺はこのまま小一時間、宿を出るまでずっと考えさせられることになった。

 


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