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俺が愛した女は武器だった。   作者: トマトケチャップ
第一章
11/14

これからの方針

説明回です

 あれから三日。俺はひたすら歩き続けた。どこかの街によることもなく、ただ王都から離れることだけに努めた。幸い、と言っていいのか分からないが、俺のこの身体は三日間くらいなら睡眠をせずとも活動可能だ。そのように造られているのだから。


 この三日、あれから追手が来るということはなかった。しかし安心はできない。このマルトラス王国にいる限り追手の可能性は無くならないからだ。


 だから追手が来る前に早いところこの国から脱出したいんだが、しかしそう簡単にはいかないのだ。


 マルトラス王国はアバンテの東の端に位置している。日本は極東の島国なんて呼ばれていたが、まあそれと似たようなものだな。しかしアバンテは地球のようにいくつかの大陸に別れている、ということはなく、一つの大陸で成り立っている。成り立っているからこそ、大陸の名前が世界の名前と同じで『アバンテ』だ。というよりも、大陸の名前がアバンテだから世界の名前がそうなったのか……。まあ、そこはどうだっていいか。


 で、マルトラス王国はこの世界の立ち位置において日本と似ている、なんて言ったがその国の規模はまるで違う。アバンテを地球と同じくらいの大きさだと仮定すると、だいたいマルトラス王国はアフリカ大陸くらいの大きさだ。それくらいの大国なのだ。


 そして、マルトラス王国は三つの国に隣接している。ファン皇国、バラライ帝国、そしてムスペリカ王国。この三国はどれもマルトラス王国よりかは小国だ。ではなぜ、他国への侵略が禁止となっているわけでもないのにマルトラス王国はこの三国を攻めないのか。それは偏に、マルトラス王国とこの三国の間を企てる山脈にある。


 ヘカトン山脈。


 アバンテで最も巨大な山脈であり、標高6000m級の山も存在している。この山脈のせいで他の国とは隔絶され、およそ500年前にヘカトン山脈の内側を統合した後は他国に攻め入ってないらしい。いや史実によれば攻めたことはあるが、あまりの高度に身体が追い付かずおそらく高山病などによる死者が続出し(もっとも史実の中では謎の病気、となっているそうだが)、それでもなんとか手に入れた土地もこの山脈のせいで、孤立無援状態となり結局は取り返されて、それを何度か繰り返してやめたのだとか。


 それで、だ。つまり、俺が何を言いたいかというとだな、亡命するにはこの山脈を登らなくてはならないんだ。亡命は絶対だ。だから山脈を渡るのは確定事項。しかし、いくら人工的に遺伝子操作されていて、通常の人間よりも丈夫に造られているからといってもさすがに、生身で標高6000mを登るのは無理だ。死んでしまう。まあ、徐々にゆっくりと高度に慣らしていけば不可能でもないかもしれないが、今は時間が惜しい。だから、このヘカトン山脈の中でも比較的高度が低い場所に向かっているのだ。


 ヘカトン山脈の中でも比較的高度が低い場所は何ケ所か存在している。その場所を俺は頭の中にピックアップし、さらにその向こう側にある国のことを検討して、俺はムスペリカ王国へと繋がる場所に決定した。


 ファン皇国、バラライ帝国とも繋がる場所は存在しているが、それでも俺はムスペリカ王国に決めた。


 ファン皇国はここ数年他国との戦争もなく、他の国に比べて穏やかで良い印象を持っている国だが、しかし近年食糧難が続き、死者が多数、国内で反乱も勃発して今はお世辞にも良い国だとは言えない。


 バラライ帝国は一言で表すなら野心国家だ。常に他国の侵略を目論んでいる。目論んでいるがなかなか侵略行動には移していない。まあ、マルトラス王国を除けたとしても、北にファン皇国、南にムスペリカ王国があり、その他四ヵ国隣接しているのだ。なかなか侵略行動に移せまい。しかし俺はこんな野心に溢れた危険な国家はあまり行きたくない。


 そしてムスペリカ王国は一年中温暖な気候であり、それになにより食文化が発展した国として有名なのだ。なんでも米もあるのだとか。元日本人の俺としては米を食べたい。


 以上を持って、俺はムスペリカ王国に行くことを決めた。


 しかしまあ、ムスペリカ王国は遠い。マルトラスの王都は国の北部に位置している。そしてムスペリカ王国はマルトラス王国の南部に接しているから行くまでに相当な日数を要する。

 考えてみてくれ。この世界、飛行機とか車とかは存在していないんだ。そんな便利な乗り物を使わずに巨大な国を端から端まで歩かなければいけないんだ。

 まあ、旅の途中で金を稼いで馬を買うか、あるいはどうにか旅の日数を短くするつもりではあるがな。


「……といっても、そろそろ休憩はしたいよな」


 追手の危険性があるとしても、国を出るまで歩き続けるのは不可能だ。だったら、ある程度王都から距離は稼いだしそろそろ休憩にしたい。それになにより、上手い飯が食べたい。


 どこか街か村があったら行ってみるか。


 ただ一つ気がかりなことは、指名手配とかされていて、俺の人相などがその街に伝わっていたりしていないだろうか。

 もしそうなっていた場合、アウトだ。仮に逃げられたとしても俺の居場所が王にばれる。それは避けたい。かといって、それを気にしていたら、この国では一切の街への出入りは出来ない。


 ほんと、日本に住んでいた時は考えもしなかったよ。こんな命の危険を孕んだジレンマをするなんてな。まあそれを言うなら、別世界があるなんてこと想像もしていなかったがな。


 よし、決めた。危険を承知の上で街に入ろう。一晩休憩して、上手い飯食べる。ついでにこの三日で遭遇して食料にした動物、それの毛皮などを売って金にしよう。しっかりと持ち歩いているからな。ただポーチなどがないから持ち運ぶには限度があるからそんなに持ってはいない。


 どのくらいの金になるかなぁ、と少しワクワクしながら首をポキポキ鳴らししばらく歩いていると、ようやっと小さな村が見えた。


「……やっとか」


 俺は疲れているにもかかわらず弾むような歩調でその村に向かった。


 もうすでに、夜の帳は降り始めていた。


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