暗躍
男は遠くを見つめていた。水平線の先を何時間も。
ここは許された者にしか入ることを許されない島「礁波島 」である。サンゴ礁が沢山あり、波は緩やかで一見のどかな島だが、島の中心部には囚人を入れる為の大きな監獄があった。
そう、礁波島とは囚人を収容する為の島であり警察官の権力のある人間や、国民には公開できないような捜査をする刑事しか入島は許されていなかった。
この島の沖で遠くを見つめる一人の男も警察官、
名を「木島 コウ 」。
彼は同世代の警察官の中では成績トップで運動神経も抜群、何をしてもコウの横に出るものはいなかった。そんな彼が何故沖にいたのか、それはあの事件が起きてからだった。
全ての始まりは約1か月前に溯る。
ある日、コウは先に帰ってしまった上司の仕事を嫌々片付けていた。
その資料は大きなヤマだった為、警視庁へ届けなければならなかった。
車を走らせ警視庁にいる幼なじみのユウヤに資料を渡すと、それから少し立ち話をした。
「なぁコウ、礁波島って知ってるか?」
この島を知る者は少なく、コウは勿論知らなかった。
「知らない。どこそれ。」
ユウヤは警視庁に務めて長かったからか、上層部の人間から少しは聞いていたのだろう。
「囚人を収容して数日後に殺っちまうらしい 」
コウは驚いたあまり声を上げてしまった。
もう夜遅くで庁内には数人しかいなかったが、
そこから話を聞き続けるコウ、話を止めないユウヤの会話を聞く一人の影があり、その人間は階段を駆け上がっていった。
かれこれ1時間ほど話し続けると、話に区切りがつき二人とも家へ帰った。
それから数日後、コウはユウヤに連絡をとった。
「礁波島?のことまた教えてくれよ。 今日の夜暇だからそっち行くな。」
メッセージを送信したが、夜になっても既読すら付かなかった。
おかしいと思ったコウは仕事終わりにユウヤの家に向かった。
数分後、ユウヤの家に来てインターホンを鳴らしたが反応が無かった。電話をしてもつながらなかった為、ドアノブをひねり部屋へ入ろうとした。
開くわけないと思いながら軽い気持ちでひねったドアノブはガチャッと音がした。
不審に思ったコウは中へ入りリビングを覗いた。
そこにはユウヤの死体があり、無残な姿だった。
それを見て慌てふためくコウの後ろに二人の影。
悲劇はここから始まった。