突然の告白
一週間に一回ぐらいは多分更新します。
私の名前は鳥羽志織。
25歳ちょっと普通じゃない会社員。
現在時刻午後11時27分。
二徹開け残業終わり。
なぜ、会議室の壁に押し付けられるように壁ドンされているのでしょう…。
…やはり解せぬ。
私の中にある感情はトキメキとかそんな若々しい物じゃなくて『早く帰って寝たい』ただそれだけ。
壁ドン。
それは少なくとも二人の人間がいなくてはできない行為。
つまり、私に壁ドンしている人物がいる。
その人物は私の会社の取引先の人なんだけど…。
何が問題ってイケメン、高身長、高成績の三拍子そろった完璧超人…ってそんなこたぁどうでもいいのよ!!
そっちの問題は置いといてこの人!
私の会社の取引先の社長だったりしちゃったりするんですわ!!
まあ名前しらないけどね。
ああ…早く帰りたい。寝たい。
あ…この体勢意外と眠気誘うわね…。
…一秒。一秒だけ。
そう思って瞼を下げた途端、私の意識はシャットダウンされた。
**********
柔らかな朝陽が差し込む。
春のそよ風で、私は目を覚ました。
…正確には、意識を取り戻した。
瞼はまだ開かない。
あー眠い。
まだ寝たい。
寝たりない。
等と心の中で愚痴をこぼすも、結局は起きなきゃなんだよなぁ。
えいっと勢いをつけて起き上がろうとする。
しかし、ちょうどお腹の少し上あたりに何かが乗っていて起き上がることができない。
…ん?
これ、あったかくない!?
私昨日湯たんぽなんて用意したっけ?
いやいや、もう春だよ!?
…ていうか、湯たんぽにしては冷めてないし細すぎるし柔らかすぎる…。
感覚を最大限研ぎ澄まして意識を集中する。
…。
…………うで。
これ、人間の腕だ。
え、怖い。誰の腕。
というか、よくよく考えてみたら昨日とか家まで帰った記憶がない。
…さあ、これはどういう事でしょう?
とりあえず、目を開けてみよう。
瞼は漬物石級に重いけど…。
1、2、3!
覚悟を決めて瞼を持ち上げた私の視界に飛び込んできた色。
真っ白だぁ。
心なしか温かいし、柔らかいし、脈打ってるし……。
コレ、ゾクニイウシャツッテヤツデスネ。
なるほど。
視界は一面真っ白でもある程度の事は想像できたぞ。
私は今この男の人(体格からして)に抱きしめられながら寝ているようだ!
良い大人の男女がベッドの中で抱き合って寝ている!?
アメージング!デンジャラス!
何か無いわけアーリマセーン!
なんとか起こさないようにそおっと腕をどけて起き上がってみる。
……………うん。
予想はしたけど、ここ、私んちじゃない。
そもそも思い返してみれば家のベッドはこんなに柔らかくない。
ていうか窓から見える景色は高層ビル並みの高さなのに、ここから見る限りのこの部屋の広さは一軒家なのですよ。
世界には不思議がたくさんあるものだね。
と、いうか!
私を抱きしめていた人物を確かめないと!!
恐る恐る首をひねる。
振り向いた先の男は__
…………この人知ってる。
…というか、今全てを思い出しましたよ。
私は昨夜壁ドン状態で眠りに落ちたんですね。
最悪ですね。
はい、この男の人私に壁ドンしてたやつですね。
…なんだろう、このどうしようもない脱力感。
一応服はちゃんと着ているからいいとして、なぜ私はこの社長の家に居るのでしょう。
それを確かめるのには社長を起こすのが一番なんだけど…。
この人、あまりにも幸せそうに眠ってくれますもんね。
起こすのに罪悪感を感じてしまうのですよ!!
…いかんいかん、あまりに敬語だと嫌味にしか聞こえん(最初から嫌味だけなのだが。)
とりあえず、起こす事にしましょう…。
こいつは私を勝手に男の部屋に引き込んだ狼なのよ!
頑張って!志織ちゃん!!
よし、行くぞぉ!
「あ、あの~」
あんなに気合を入れたのにやっぱり控えめな声になってしまうのはなんでだろう。
私の意気地なし!もうちょっと頑張って!!
あ、社長さん起きた。
てゆかこの人やっぱイケメンだな~乙女ゲームの攻略対象並みだぁ。
眠気眼をこすっている様子も絵になる!
「ああ…お前か。」
お・ま・え・か
ん?ちょっと聞きなれない言葉を聞いたなぁ。
きっと幻聴だろう!そうに違いない!
「言っておくが、お前を部屋に入れてやったのはお前が眠りやがったからだぞ」
うぉ。どうやら私の脳&耳は正常のようです。
さてさてこの乙女ゲームの攻略対象みたいな社長は俺様タイプなようですぞ。
っていうか、私かなり酷い事言ってるね。
まあ気にしない、気にしない!
「…」
「…」
…わーお。最大限気まずいですなぁ。
社長さんの顔、めっちゃ怖いし。
な、なんか言わなくちゃ…。
というか、私は帰った方が良いのでは…?
でっでもでもでも!
私は寝落ちしてたからここがどこか知らない!
うわぁ…聞きにくっ。
だがしかし聞かないと帰れない…。
「あ、あのぉ…私…帰りたいんですけど……」
「帰ればいいじゃないか。」
そこまで塩対応だとさすがに傷つきますよ。
でもそこで諦めてだんまりさんにならないのが“ちょっと普通じゃない”会社員の志織ちゃんなのよ!!
「で、でもでも!私、ここがどこか知らないんですよ。」
「そりゃそうだろうな」
なに真顔で答えてんすかぁぁぁ!
あなたが連れ込んだのでしょう!?例え私が寝てたとしても起こすとか会社の仮眠室に入れるとかいろいろ方法は合ったでしょう!!
…とは言えず。
「ここがどこか知れないと私帰れませんよ?」
ちょっと作戦(?)の趣向を変える!
交渉はお互いに利益があってこそ成り立つのよ!
そう、名付けて『私がここに居たらあなたの方が邪魔でしょ?作戦』!
「何馬鹿な事言っている。ここは東京だぞ?お前の家から何時間分も離れているわけでもなく、街を歩けば数分で駅に出るさ。…何より、お前は歩き回っているだろ?」
一息で言い放ってくれましたね。
ハイ、もう私の負けでいいです。
あなたの言っている事、正当過ぎです。
私は勝手にお部屋から出させていただきます。
諦めた私はすくっと立って玄関へ。
幸いスーツ姿だったから外に出てもきっと悪目立ちはしない。…はず。
もうこの社長との取引は辞めてやろうか。
このちょっと普通じゃない私にはそんな事ぐらいちょちょいいのちょいなのよ!
そんな事を考えながらしっかり玄関に揃えられていた靴に足を通す。
「…お邪魔しました。」
ちょっと考えた物の一応一般常識は押さえておいてこれまた高級そうなドアノブに手を伸ばす。
指先が触れた瞬間だった。
「待て!!!」
うお。
光並みの速さでしたな。
むしろこれがドアノブに触れた時に起きた静電気とかだったら良かったかもしれない…。
ちゃんと声に従って後ろを振り向きましょう。
もちろん、立っている人物は一人しかいないのだけれど。
「…何でしょう。」
さすが、睡眠不足間近の寝起きでも営業スマイルの構築可能な志織ちゃん!
社長の顔を見た途端、ぎょっとした。
だってこの人、さっきまでは無表情の俺様仮面付けてたくせに一瞬すごく必死そうな顔してたんだもの。
まあすぐに無表情俺様仮面被っちゃったけど。
「お前、彼氏とかいるのか?」
んんー?
何か急に込み入った話入ってきたぞぉ。
「…居ませんけど」
ってそこで素直に答えちゃう私ー!
「…なら丁度いい。」
えっなんか怖い。
「ここに入れてやったからにはそれなりの対価を払ってもらう。」
ハイ、俺様だー。
そろそろ慣れてきましたね、ハイ。
…対価って、なんだろう。
今手持ち少ないなぁ。
そんな心配をよそに、社長が言い放った言葉。
「お前、俺と付き合え。」
…!?はいいいいいいいいいいいいいいいいいいい???
ありがとうございました( *´艸`)