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十七話 異世界で魔王と遭遇する


 ユキノさんとは別れた。もうしばらく考えたいらしい。

 なので二週間後……つまり、十四日後にまた訪れると約束をした。

 ユキノさんがいつからここに住んでいるかは知らないがここで暮らしているのは長いのだろう。それを考えると無理にせかすつもりはない。

 それに当人が悩んでいるならば定期的に来て交渉などをしてみるのも手だ。

 そう思いながら俺達はフレアルドさんに乗って飛び立った。

 そしてやっぱり空は寒かった。

「次にあの都市部に行くときは防寒着をもらおう

 もっと良い奴」

 なんなら宇宙服とかが良いかもしれないな。あるいはスカイダイビング用のやつ。

 ドラゴンに乗る道具とかも売っていないだろうか?

 そう思ったがあの都市部は何というか宇宙戦争とかアンドロイドとかロボットの世界だ。それも未来から来た猫型ロボットがいるような魔法もオッケーななんでもあり世界じゃない。わりと緻密に考えている。

 宇宙生物とかの分で騎乗の分があるかな。

 そんなことを思いながら俺たちはフレアルドさんが言う魔力が高い場所へと向かう。

 もしも知性が低いけだものとかだったらどうするか?

 もちろん簡単で逃げるつもりだ。

 そう思いながら次にたどり着いたのは、

「ホーンデットな世界」

 思わずつぶやく。

 なぜか昼のはずなのに薄暗い周囲。暗雲が立ち込める空は時折、雷雲がきらめく。その荒野の中央にあるのは不気味なお城。

 元は純白の立派な白だったのだろう。どちらかというと西洋風のお城は異世界転移としてはオーソドックスなデザインだ。

 いまいち、わからなければ有料で夢と魔法の世界を味わうネズミーの国のシンデレラのお城を想像していただければ構わない。

 ただし不気味なつる草が生えて薄汚れて誇りをかぶった老朽化している。

 そのために今や、夢と魔法のラブロマンスのお城ではない。どっちかというと悪夢と呪いの悪役の住処という感じだ。

 もっとわかりやすく言うならば、

「ゲームに出てくる魔王のお城か幽霊城だな」

「よくわからんがこの城につよい魔力があるのだろう」

 俺の言葉にユキノが言う。

「まあな。これがゲームならば俺はせいぜい行商人か遊び人。

 ユキノが戦士でライラが格闘家。バランスの悪いパーティーだ」

 普通、戦士と格闘家はさておいて回復か魔法のやつが一人ぐらいいても良いだろう。

 だが魔法使いはパーティーに入ってくれなかった。

「魔法が使えないと意味がない相手が現れたら速攻で逃げよう」

 俺の簡単な説明などでユキノが肩をすくめるように言う。

「まあ。ゲームならばダンジョンから出るのは可能なんだけれどな。

 ホラーゲーム系だと入ったら出れなくなるのがセオリーで」

 娯楽のない田舎だったのでゲームの類はそれなりにしていた。

 ホラーゲームで謎のお屋敷やお城に閉じ込められお化けに襲われる。ゲームではたいていに何とかしてお化けに対抗するアイテムを手に入れたりするのだが、これは現実だ。

 ……なんで現実で異世界転移しているんだろうか?

 いまさらな疑問が脳裏に浮かんだがそれは黙っておく。

そう思いながら俺たちは城の扉を開ける。

 思ったよりもあっさりと開いた。

 どうやら誰かが手入れをしている。つまり手入れをする程度の知性を持った生き物がいるということだ。それならば会話も可能だろう。

 問題は会話をしても理解しあえる相手かどうかがわからないということだ。

 それを考えながら俺たちは足を踏み入れた時だった。

《誰だ?》

 突如として響く声。

「大きなうなり声」

 そうライラが耳をふさぐ。

 確かに耳をふさぎたくなるような大きな声でどうやら俺にしか理解ができないらしい。

 まあ。俺にしか理解できないというのは今に始まったことではない。

 それを考えて気にはしていない。

「俺たちは旅の者だ。この城の主だろうか?

 できることなら話をしたい」

 俺はそういって声を張り上げる。

《話だと?》

「そうだ。話間。

 あなた方と争うつもりはない。

 話し合いの内容はあなた達にとってけして不易な内容ではない。

 利益があるという内容だと俺は思っている。

 もちろん気に入らないならば無理にでも押し通すつもりもない。

 どうか話をさせてほしい」

《信じろと? 人の住居に無断に入ってくる輩を》

「その非礼に関しては謝罪する。

 だが許可を得ようにもどうやって許可を得ればよいのかわからなかった。

 どうか話し合いをしたい」

 そういって俺は頭を下げる。

 そのしぐさにライラとユキノも続いて頭を下げる。

 あちらの言葉は理解できなくても俺の言葉は理解できるだろう。

 その言葉にしばらく考えているようだったが。

《良いだろう》

 そんな別の声がした。

 同じ言葉だとなんとなく理解できたが声の主は違う。

 どちらかというと幼げな……それでいて偉そうな印象を感じさせる声だ。

《な、主》

《我と話をしたい。そんな人間を見たのは初めてだ。

 それに退屈をしていたところだ。会ってやろう》

 どこまでも偉そうな口調はそう宣言する。

 そこに静かに近づいてくるのは一人の人影。

 声の主か? いや、違う。

 おそらく最初の声の主なのだろう。

 そう思っている中で現れたのは、人間ではなかった。

 とはいえ、人間じゃないということで怯えるほどもう感性はない。

 リザードマンに幽霊もどきに小人にドラゴンに魔女。

 これから先、首が三つある化け物が現れたとしても会話の成立するならば対応可能だろう。こうしてみると黒人差別とか白人主義とかそういう考えが理解できなくなりそうだ。

 そんなどうでもよいことで一々、気にしていたら禿げそうだしな。

 そんなのんきなことを考えるぐらい目の前の人物は異形だが人に近い外見だった。黒い髪の毛に紫色の瞳。身に着けているのは執事服というやつだろうか華美ではない黒いタキシードのような服(執事服とタキシードは違うそうだ。よくわからないけれど)を身に着けている。ただし片腕が鋼のように硬くそして鋭くとがった爪は俺の頭をつかんで握りつぶせるほどに長い。

 そして背中から生えるのはコウモリのような羽根。

 あえて言うなら悪魔に近い。

≪主のお目通りを許そう。

 私は悪魔、ディアマン≫

 どうやら本当に悪魔だったらしい。

 悪魔。その言葉に少しだけ体が緊張したが前へと進む。

≪ほお。悪魔と聞いて私を恐れぬのか?≫

「まあ。緊張しないといえばうそになりますね。

 けれど言葉がわかるんだから話し合える。

 それでもだめなら逃げます」

 戦うとか勝つとかは言わない。つか、言えない。

 間違いなくできないし不可能だからだ。

 その言葉にディアマンは驚いたようだがすぐに表情を戻して歩き始める。

 どうやらついて来いと言いたいらしい。

 俺たちはそのあとを歩く。

 埃だらけのその城はあまり綺麗とは言えず手入れもあまりされていない様子だ。

「掃除してないのか?」

 埃にむせたユキノが言う。

「人の気配。あんまりないよ」

 そういったのはライラだ。

 それぞれ会話はできてないはずだが聞いていると会話ができている様子にも聞こえる。

「人の気配がないなら埃だらけなのも無理はない。

 掃除の手入れができないんだろ」

 俺はそれぞれの言葉を翻訳して俺の意見を言う。

 そう思っている中でやがてもっとも立派な扉が俺たちの前に現れた。

 おそらく主の部屋なのだろう。

 そう思っていると、

≪お連れ致しました≫

≪よし。連れてこい≫

 どうやらこの二人は同じ世界出身らしい。

 いや、この扉の向こうにいる存在は『ヒト』なのかは怪しいが……。

 そう思いながら扉が開いているとそこにいたのは、

「子供?」

 ライラが首をかしげてつぶやいた。

 確かにライラの意見も正しい。

 目の前の相手はどう見ても成人しているようには見えない。

 年のころはまだ幼げという言葉が似あう。人間で言うところの十歳前後ぐらい。小学生ぐらいにしか見えない。

 漆黒の黒髪を紫と白のレースを使ったリボンでツインテールにしており身に着けている服は黒色と紫に白を基調としたフリルとレースがたっぷりのふんわりとしたドレス。

 俗にいうゴシックロリータと呼ばれるタイプの服だろう。

 背中にコウモリの羽根とツインテールを邪魔しない程度の紫の角。

 それがなければ普通にかわいらしいがゴシック調の女の子に見えただろう。

≪? 言葉が通じないのか?≫

「あ、言葉が通じるのは俺だけです。

 俺の特殊能力だと思ってください。

 一定の知性を持った相手と意思疎通ができると思っていただければ助かります」

 俺はそういって頭を下げる。同時にユキノが頭を下げライラが慌てて頭を下げる。

 ユキノは村で集団生活をしていたので礼儀作法は自然にできるし察することができる。一人で野生児のように暮らしていたライラはそれが下手だ。

「後ろにいるリザードマン……彼女はユキノ。俺がお世話になっている集落の半数を占める種族の長の娘。隣にいるのはライラ。俺とは違う世界から来て一人で生きてきた少女です。ライラの方は赤子のころから一人で生きてきたので作法に無知です。

 態度が悪いかもしれませんがどうかご容赦を」

≪ほお。集落とな≫

 俺の言葉に女の子は目を細めた。

≪この未開の異界でも生きている。だが、違う世界とは?≫

「ご説明します」

 そういって俺は説明を始める。この世界が異世界転移や異世界召喚などで失敗した存在たちが集まる場所だということをだ。

≪なるほどな。道理で≫

 その言葉に少女は納得した様子だった。

≪さて、お前らに名乗らせていつまでも名乗らぬのも礼儀をわきまえぬ行為だ。

 新たな情報を与えてくれた礼もかねて名乗ろう。

 わが名はディヴァイア=ルーシファ=ロード。異界の地で魔王をしている≫

「魔王!?」

 その言葉に俺は驚愕の声を上げたのだった。

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