第十話 異世界で会う機械いじりの小人
一言で言うなら妖精というべきだろう。ただし、トンボや蝶々の羽が生えているようなものではない。と、いうか背中に羽や翼は生えていない。
ただ手のひらで抱えることができるような人物だ。身に着けているのは、オーバーオールという服。……ゲーム業界では世界一有名な赤い帽子をかぶったひげの排水管の人物。彼が着ている服の茶色を身に着けていた。
かぶっている帽子は、飛行機のりがかぶるような布製の防止でゴーグルもついている。どっちかというと、機会いじりをする職人見習いの小僧。と、いう印象だ。
顔立ちも愛嬌のある印象の男の子だ。
【離せ! 離せ!
俺を食べる気か!? このケダモノ】
「女の子に対する言い方じゃねえぞ」
と、俺はそういいながら目線をその男の子に向けて言う。
【お前、言葉が話せるのか?】
「もっと正確に言うなら、お前の言葉を理解できて言葉を話せるというべきだな。
悪いな。ライラ。……お前の仲間なんだが、ちょっと野性的だな。
逃げないで話を聞いてくれ。
ライラ。話してやれ。そいつ、嫌がっている」
「ん」
俺の言葉にライラはうなずき、口を開ける。
ばっと落ちそうになった小人を俺は受け止める。
……よだれでべとべとするが、それは我慢する。
「悪いな。えっと、お前を……捕まえたのは、ライラ。
トカゲのは、ユキノで二人とも女だ。
俺は桃也だ。俺は男だ」
自己紹介で性別まで言ったのは、初めてだ。
【……レナードだ。男だ】
と、俺の紹介に小人……もとい、レナードが名乗る。
「この世界について分かっているか?」
【……まあな】
と、俺の言葉にレナードはそううなずく。
「そうか。まあ、いつまでもこんなところで話しているのもおかしいな。
もうちょっと、落ち着いて話ができる場所に移動しよう。
お茶でも飲みながらな」
と、俺は言ったのだった。
商品にあったやかんと携帯用のコンロと固形燃料。さらに、おいしい水と書かれていた(異世界の文字だ)水で沸かしたお湯をティーバックで作った紅茶を用意する。
あいにくと、俺は茶葉から紅茶を入れたことがない。
簡単にティーバックからお茶を入れたことしかないのだ。
「レナードだったな。
お前は、この世界がどんな世界か知っているか?」
【多少の推測はしている。
ここが異世界ということだな】
「半分正解だな」
と、俺は簡単に状況を説明して、ついでに俺たちの境遇も話す。
まあ、境遇というよりも現状だ。
「それで、質問だが……お前は、どうしてこの世界に?」
【たんなる実験ミスだ】
と、苦々し気にレナードは言った。
レナードの世界は剣と魔法ではなく科学が発達した世界だった。小人のような外見をしているが、機会いじりが得意なレナードは空間移動の装置を作っていた。
いろいろと専門的な理論を口にしていたが、要約すれば某耳なし猫型ロボットの持っている一瞬でどこにでも行けるドアみたいな装置だ。
だが、それの実験中に落雷が落ちて装置が暴走。
暴走したひずみに飲み込まれたレナードは気が付けば、この世界にいたのである。
【まあ、元の世界に戻る方法も考えていたんだがな。
空間移動の装置の方は俺だけじゃない。
俺は機会を作れるが、細かい計算などは完璧じゃないんだよ。
そういうのは、そういう専門家がないといけないし、ここじゃ材料はない】
「元の世界に戻れるんですか!?」
と、レナードの言葉に俺は声を上げてしまった。
その言葉を聞いて、ユキノもこちらを見る。
興味を抱かないのは、ライラぐらいでありお茶と一緒に出したクッキーをほおばり続けている。おそらく幼いころすぎて、元の世界の記憶がないライラには、元の世界への帰還という欲求はないのだろう。
だが、俺やユキノには違うだろう。
【……わからん】
と、俺の言葉にレナードは言う。
【だが、こんな意味不明な世界。
ずっと暮らしていたいと思うと思うのか?】
たしかに、俺はすぐにライラと出会ったし言葉が通じる相手とばかりだ。
ライラは、故郷を覚えていない。
ユキノは幸運にも家族と一緒であり孤独ではなかった。
だが、レナードは違うのだ。
どれだけだか知らないが、故郷を知っていてそれでいて孤独だったのだ。
だからこそ、元の世界に帰りたい。と、願ったとしても当たり前だ。
俺だって戻りたい。と、思わないわけではない。
「まあ、たしかにそうですね。
けれど、元の世界に帰る手段を探したり見つけたりするまでは、この世界で生きている。その必要があるはずだとも思います。
それに、一人で元の世界に帰る方法を見つけることができるんですか?」
その言葉に黙る。
「この世界はいくつもの世界がまじりあっているような世界です。
あなたの知らない未知の技術があるでしょう。
あなたや僕たちと同じように、この世界に来た者たちが居ます。
一人でいないで僕たちと一緒に暮らしませんか?」
その言葉にレナードは黙る。
「まあ、俺たちが元の世界に戻る技術をもっているわけじゃない。
けれど、たくさんの知識を集めるすべがあります。
ここでいるよりも、見つける手段が増えると思います」
【ここの外で生きていける保証があるのか?】
「俺たちはここじゃない場所から来ました。
まあ、生活が大変かもしれません。
もっと良い場所があったら移住も考えています。
ですが、とりあえずはここは近いです。
こことそちらを行き来するにしても、一度は来てほしい。と、思います。
あなたの技術力をよろしければ、提供してほしい。
その代わりに、こちらも食料を渡します。
ここの食料だって限界があるはずだ。
俺たちが望んでいる食料もここにはあったけれど、限界がある。
自活をする術は欲しいのでは?」
その言葉に黙る。
ここには、加工食品がある。
彼ならそれを作る装置の動かし方もわかるかもしれない。
けれど、それはあくまで可能性だし材料がなければ作れない。
まあ、科学技術を発展させれば生ごみからでも食べ物が作れる。と、いう話を聞いたことがある。科学は突き詰めると、魔法になる。と、誰かが言ったかどうかは知らないが、そんな言葉を聞いたことがあるような気がする。
泥とかも分子構造を操作すれば、食べ物になるのかもしれない。
だが、道徳概念というか生理的にそんなものは食べたくない。
【……だが、ほかの連中の言葉が通じないんだがね】
「おいおい。覚えていけばよいと思います。
それに、ひょっとしたらそれもどうにかなる技術があるかもしれません」
と、レナードの言葉に俺はそう答える。
「このままでは帰れる可能性がない。と、言うつもりはありません。
けれど、確率は一緒に来た方が高いはずです。
確かに、あなたより帰りたい。と、思う思いは低いかもしれない。
けれど、このままここで生活をしたいんですか?」
【わかった】
と、俺の言葉にレナードはうなずいた。
【ただし、お前らと一緒にいるメリットがなくなったらどうだかはしらねえぞ】
「わかりました。構いませんよ」
と、俺は言う。
そして、交渉結果を語る。そして、
「早速ですけれど、自動車の運転はできますか?」
と、俺は話しかけた。
結果として、レナードは車の運転ができた。
改造して自分でも運転ができるようにした車。その車に詰め込めるだけ必要そうな代物を詰め込んだのだ。せっかくなのでトラックにしており、使えそうな機械なども入れている。仕えそうというよりも、会った方が便利な道具のたぐいだ。
大型の冷蔵庫は必須だ。あそこの冷蔵庫は小型すぎてなんの役にも立たない。あと、コンロや電子レンジ、炊飯器。すべて業務用である。
ちょっとした引っ越し大ごとである。あと、発電機も持っている。
食料も持っており、俺たちはトラックの屋根に座っている。
交通法には違反しまくっているだろうが、あえて考えないでおく。
異世界でまだ交通法はない。
そう思いながら運転をみて案内をしていく。
「しかし、便利なものだな。この車というのは」
「念のために言っておくが、本来は屋根の上にのるものじゃないからな。
それに、運転するにはちゃんと知識を持ってルールを守る必要がある。
練習をして資格をとって初めて運転をすることが許される。
その資格だって、定期的に確認をする。
ルールを破ったりしていたら、その資格をはく奪されることもある。
ちゃんと、ルールを覚えないうちは運転させれないからな」
と、俺は言う。
守ろう。交通ルールである。
まあ、車の屋根の上に座っていて交通ルールを守ろう。と、いうのも度の口が言うか! と、ツッコミを入れられそうだが、そこは無視してほしい。
「車は走る凶器と言われているからな。
鉄の塊がイノシシよりも早く突進してくるんだぞ。
俺の世界じゃ、車が原因で死んだ人間は一年で数百人を超えるぞ」
と、俺は言う。
「危険な乗り物なんだな」
「ちゃんと危険を理解して気をつければ別だ」
と、警戒するユキノに俺はそう答えた。
車だって本来は便利な代物だ。
と、いうか文明社会で生きてきた俺は車がない世界というのも不便だ。
そう思いながら俺は、ジャングルへの入り口が見えてきた。
「それより、ジャングルに入ったら喋るのはやめておけよ。
舌をかむかもしれないし、下手したら酔うぞ」
乗り物というのは、のりなれていなければ酔う。
すでに、二人は徐々にだが顔色が悪い。
「あんまり、酷いなら目をつぶって横になっておけよ。
吐くなら外に向かって吐け」
と、俺は言う。
そして、俺は前を見る。
まだ、車に乗りなれている俺でも屋根の上での移動はつらい。
しかも、ここはジャングルだ。
左右に上下とどんどんと派手に揺れていく。
そのため、俺も軽く気分が悪くなりそうだ。
レナードもそちらを理解しているのだろう。
ジャングルに入った時から、車のスピードがゆっくりになっている。
俺は二人がうずくまっているのを見て、背中をさする。
「道路を作る必要もあるかもしれないな」
と、俺はつぶやいた。
そんな中でやがて図書館が見えてきた。
「おーい。レナード。
あそこが目的地だ」
俺の言葉と同時にさらに車はゆっくりとなったのだった。
そして、俺たちはついたのだった。
見慣れぬ未知の存在。車を見て、リザードマン達は軽いパニックになった。
だが、それを俺はどうにか諫める。
そして、
「さてと、それじゃレナードはとりあえずここで寝泊まりしてくれ」
と、俺はレナードの部屋を決める。
部屋といっても宿直室の一室だ。
ちなみに、宿直室は二部屋あるのでもう片方はユキノだ。
「そのうち、家も建ててもらう予定だ」
「おう。しかし、たしかに興味深い本がたくさんとあるな」
「そりゃ、良かった。
それよりも、文字の読み書きだな」
と、俺は言う。
食料物資も必要となったこともあり、そろそろせめて文字の共通が必要だな。と、俺は思ったのだった。