幕間
「目、覚めたか」
俺はゆらりふらりとまだ朦朧としている蒼に声をかけた。
「あんたこそ、目ぇ覚めたのかよ?」
「あぁ、おかげさまでな」
蒼は立ち上がろうと地面に手をつくが、よろめいた。
「まだ神経が繋がったばっかだ。もう少しおとなしくしてろ」
「ナカケンさん、あんたまさか全部の力を使ったのか?」
「ああ、結構骨が折れた。まぁお前の骨は再生させたけどね!」
「変なギャグはやめろ。どんな顔すればいいのかわからん」
「まぁだから僕も疲れてるからちょっと休憩さ」
「そんなことしてる時間ないだろ!」
「いや、アダムからすれば人類は大事な人質だ。そして、僕が殺せない唯一の手駒だ。僕に仕向けることはあっても殺してしまうことはないだろう」
そう告げると蒼も納得したのか力を抜いて寝転がった。……ダジャレみたいになってしまったな。「そう」告げると「蒼」も……ヘヘッ……。
「そういえば──」
おっとまた「そう」が出てしまった! ……お嬢ちゃんがいたらくどいと一喝されてしまうな。
「ん?」
蒼は寝起きのような声で返事する。
「どうして普通に自分の意思でうごいてるの? マイクロチップ埋め込んでたよね?」
すると彼はニヤリと笑った。
「ナカケンさん、俺の能力は発電だぞ? この戦いが始まった時から俺の能力で壊している」
「そら、便利な能力だな」
「あんたが言うか……」
戦闘続きの中の僅かな小休止。なんだか久しぶりに座った気がする。
すると静けさの中で僅かに聞こえる。
「休むのはもう少し後かな?」
その時、背後から悪戯な笑みが襲う。
僕は振り向くも誰もいない。
「まだ背後か!?」
気を抜いていた手と首が引かれて回される。力で勝るはずの僕が回される。
そして突然、目の前に鉄の鈍色が見えた。
「やっぱ無理か」
そんな諦めの呟きが聞こえた。
「いや、僕が常人に振り回されるなんてことは普通ない、僕の出した最後の一手で諦めるところもさすがだよ——不良の王様」
「出し抜けると思ったんですけどね」
そうかこいつがいたか、と蒼も笑っていた。
やっぱりこの子はすごい。力を抜いていた手を伸ばすように導き、僕の力に逆らわないで自分の円の中に巻き込んでいく。そして僕が二つ目の能力を使った途端に諦めた。勘がいいというか、察しがいいというか。第六感みたいなものが非常に優れている。
「でも不意打ちとはいえナカケンさんに二つ目の能力使わせたのはなかなか上出来だったでしょう?」
「だから言ったじゃないか、さすがだと。自分のマイクロチップを電磁パルスで破壊したことも含めてね」
この子も本当に考えの読めないというかなんというか。神から連綿と続く系譜を継承していると言ったところか。
「それで、他の三人は?」
「は? 知るか」
「おい、あの三傑のマイクロチップも壊したんだよな!?」
驚きのあまり、体の具合も忘れて蒼は起き上がる。
「そんなことするわけないだろう。なんで俺があいつらの世話をしてやらなきゃいけないんだ」
「じゃぁなんだ? あいつらを置いて自分だけ帰ってきたのか!?」
俺は不良王の胸ぐらを掴み、問い詰めた。
「まぁ、そういうことだな」
彼はそっぽ向いて答えた。
「はぁ」
溜息しか出なかった。でもまぁ、彼は前からこういう男であった。他を理解せず、一人で進み、一人で成す。その姿に人は自然とついて行った。そして彼は、他を連れるようになっても尚、孤高であることは変わらなかった。カリスマとはこういうことを言うのだろう。
「それじゃあ、行こうか」
「ナカケンさん、場所分かっているんですか?」
そうか、蒼でもあの時の状況までは知らないのか。
「かつて、あいつが人質に取られた時も市役所に陣取った。アダムが、この戦争を起こしているのだとしたら嘲笑うように過去を踏襲するだろう。奴らはそういうものだ。俺らを試すのだ。どう動くか。どのような生物か」
二度目はない。同じ轍は踏まない。




