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坂織宮連合軍



「おチビちゃんについてはこのくらいかな。あとは僕の話か……」


 ナカケンさん。名もなき英雄。彼は自らを超能力者と語っているが私は未だにその能力の全貌を理解していない。分かっているのは能力の一つに『強化』というのが存在しているという事だ。しかも強化と一口に言ってもその物理法則などは異なるわけだし、何が出来て、何ができないのか。そこの差異がまだ不明だ。

 ナカケンさんは少し躊躇いながら話す。


「本当はこれから話すことは一般人が知っちゃ行けないことなんだ。今、信じられている世界の理が完全に通用しない話になるからね。だからこの話はオフレコで頼む」


 そう言って自称劣等生の最強お兄様みたいに口元に人差し指を立てた。


「まず、僕達は超能力者と言ってきたが実は正確には《ディメンションセルパーソンズ》と言うんだ。略してDCP」


「DCP……」


 次元、細胞、人達?


「これは本当に百年以上前の話になるんだけど人類が核を持ち始めて数十年たった時、ある科学者が特異な細胞を作り出したんだ。その細胞は成人に移植したらその細胞に適応できずに100%死ぬのだが、乳児に移植すると百人に一人の割合で生存する。

 そして、生き残った子供には常識では測れない超能力とも言える力が与えられる。その細胞がディメンションセルでそれを移植されて能力を使えるものをディメンションセルパーソンズというのさ。それは更なる軍事力を求めていた人類において核に変わる新兵器となり得たんだ」


「じゃあ要するに、ナカケンさん達は生物兵器ということですか!?」


「まぁそういう事だね。今はどのDCPも管理なんてされてないからただの超能力者だけど」


 昔は人体実験だの生物兵器だのはあったらしいし、創作の世界ならよくあるネタだが、現代にその被験者が存在しているとは……。


「そして、僕らの使う能力というのはまだハッキリとした科学的なことは何一つ解明されていない。つまり、結果だけが宙ぶらりんの状態で存在しているんだ。人によって能力は様々だし、強さも異なる。そのため見当すらつかない。だが曰く、能力は決まっているが範囲を定めるのは己。だそうだから言わば僕らの能力は特定の概念を操る力なのかもしれない」


 範囲? イマイチよく分からない説明に首をかしげた。


「範囲ってどういうことですか? 半径何キロまでとかいう話じゃないですよね?」


「ああ、そう言うことじゃない。要するに『強化』と一口に言ってもその捉え方は様々だろう? 例えばこんにゃくを釘も刺さらないほど硬くしても強化したと言えるし、逆に鉄を物凄く柔らかくしても弾力性を強化したと言える。つまりお嬢ちゃんの言うようにその物理法則が異なっていても《《僕の思う強化》》の枠に収まってさえいれば対象になるってことさ」


 だいぶ都合の良いチカラな気がするが、それが真実というのだから否定もできない。否定しようもない。

 あれを見て今更、嘘だと言える人間もいないだろう。


「それで僕の能力はお嬢ちゃんの言い当てた『強化』。それ以外に──」


 そう言いかけてナカケンさんは急に外を睨む。


「お嬢ちゃん、移動するよ。ドローンが近くを飛んでる。たぶんロボット()のだ」


 ナカケンさんは右足をずらし、ゆっくりとアクセルペダルを踏んだ。

 相手は気づいているのか否か。振り返りたい気持ちを恐怖で押さえ込み、平静を装う。まるで鉄塊を腹に抱えたように胃が重い。エンジン音がうるさかった。


 やがて車は夜も明るい中心街に侵入する。機銃を抱えたドローンにバレないように静かに猫から逃げる鼠の如く。

 そして、信号機に阻まれ、密やかに車を停めた。片側三車線の道路の中央先頭に停まったナカケンさんの車は今か今かと青に変わるのを待ち望んでいた。一、十、百。いくら数えても信号機は青に変わらない。すると、横から微かに音が聞こえる。その音の先には銃口があった。


「バレたか!」


 ナカケンさんはアクセルを踏み込むその瞬間、左右の車が突然目の前で妨げるようにぶつかった。

 ナカケンさんはその瞬間にバックし始める。


「ナカケンさん、後ろにも車が──!」


 私が振り返った時、私達は車の下を潜っていた。


「は?」


 そして、車の下でUターンするとそのまま連なる車の下を通り、路地に入る。


「ナカケンさん、まさか……」


「ああ、こりゃ《《ニュー》》に入られたな」


 封印するように完全に別離させたはずの二つのインターネットシステムが繋がってたのだろうか? だとしたら、どうして、どうやって?

 ──ってそれよりも。


「ナカケンさん、これからどうします? 家、取り返しに行きます?」


 ナカケンさんの家に帰るにもあそこは敵の支配下にあるだろうけどまぁナカケンさんなら一人で突破出来るだろう。


「いや、やめておこう。お嬢ちゃんが危険だ」


「でもナカケンさんの『強化』を使えば」


「いや、DCの能力ってのは基本的にドーピングみたいなものだ。少量ならそのプラス面のみしかないんだけど生物への多量使用は悪影響が出る。最悪、死ぬよ」


 死ぬって……。いや、DCPの生存率の低さはそれが理由なのか。


「いや、それでもナカケンさんが少量使えば問題ないじゃないですか!」


「敵は何してくるか分からない。能力を暴発させる術を持ってるかもしれない。というか過去にはそういうものがあった。だからダメだよ。それにこの日のために準備してきたこともある」


 ナカケンさんはそう言って小さい車を街の何よりも早く飛ばした。傍から見れば高速で走るミニ四駆。まぁ私は実物のミニ四駆見たことないけど。『マグナァァム!!』は知ってる。


 そして、ナカケンさんは見慣れた建物の前に止めた。というか──。


「バイト先……」


 Cafe Vardziaであった。とは言え、今は深夜。当たり前だが普段なら営業時間外だ。

 しかし、今日は何やら店内から光が漏れて微かに会話まで聞こえる。

 車とともに元の大きさまで戻った私は店の前のドアに駆け寄った。


「本日貸切?」


 私がそう呟くと、ナカケンさんは車を小さくしてポケットに突っ込みながら答えた。


「大丈夫、貸し切ったのは僕さ」


 私はその言葉を信じ、恐る恐る戸を押す。


「……お邪魔しまーす」


 戸の隙間から覗いた先には物々しい音に合わせて一斉にこちらを向いた銃口が並んでいた。

 

「やれやれ血の気が多いなぁ。まぁ頼もしいこったね」


 ナカケンさんが私に覆い被さるようにドアをさらに押した。


「なんだ、幸奈か」


「お待ちしてましたよナカケンさん!」


 そこにはマスターの他に琢磨や竜崎さんに警視長さんが座っていた。


「みんなありがとねー」


 ナカケンさんがニタニタ笑いながら言うとマスターが一言。


「いや、まだひとり来てないですよ」


「来たぞ」


 閉じかけた扉を押し返して、こぶだらけの同じ制服の生徒を引き摺りながら店内に入ってきた。


「おお、よく来たね!」


「てめぇ……!」


 不良の王、先崎龍聖が。


 すると彼を見た瞬間、琢磨は早足で迫り、その胸倉を掴みあげた。


「なんでここにてめぇなんかがいる!」


「どぉどぉ、落ち着いて。それも含めてこれから説明するからとりあえず座って」


 それをナカケンさんが諌めた。そして、彼に押し込まれるように全員座ると真面目な顔で滔々と話し出した。

 

「さてと、今回君らに集まってもらったのは他でもない。最悪の事態がついに始まったからだ」


「それってお前が前に阿呆面で言ってたあれか? 第二次人類抹殺戦争」


「そうだ。ついにロボットが本格的に人類への反攻作戦を開始した。手始めに、というより人類が認知する前に、僕がいるこの坂織宮を陥落させて拠点とするつもりのようだ」


 すると、マスターが苦言を呈す。


「ほんとに狙いはそれか? だとしたら相手は相当なバカだぞ。あいつらロボットに限ってそれはないだろ」


「それは僕も疑問に思ったんだけどでも、1度狙われたわけだし。それにさっきも言ったけど準備が整う前に全戦力で叩き潰すつもりかもしれない。

 ともかくこれはなるべく被害を出す前に、早期に解決を図る必要がある。そのために今回、ロボットに対抗できるだけの力を持つ君らに集まってもらった。名付けて、坂織宮連合軍の結成だ!」

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