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サッカーしようぜ!

「本当に行くんですか!?」


「まだ言うか、おまえ」


 私達は拓磨や竜崎さんが乗ってきた車に同乗し、坂織宮高校へ向かっていた。


「大丈夫だよ、お嬢ちゃん。今までも何度もしてきたし、別に問題なんて何も無いよ」


 ナカケンさんは呑気にそう言うが、相手は県下最大の不良校。関わらないでいいなら関わらない方がいい。それにやり過ぎて相手を怪我させたりしたら今度は逆にこっちの責任になりかねない。

 それに……。


「警視長さん、あなた立場上こんなこと容認してていいんですか!?」


「いや、一般人だったらもちろんダメだけどナカケンさんだし大丈夫ですよ。それに実際ナカケンさんが宮高に殴り込み入れると宮高生の一年間の犯罪率が5割も減ってるんですよ」


 つまり警視長さんからしても願ったりと言うわけか……。


「せめて心葉ちゃんを置いていきましょうよ!教育上良くないです!」


「大丈夫、一晩寝れば忘れるって」


 あんたには普通でも10歳の子供にとってはバイオレンスで一生心に残る深い傷を付けるかもしれないだろ! みんながみんなあんたみたいに単純に出来てないんだよ! 特にこの頃の子供は感受性が豊かなんだから!

 だが、そんな私の不安を置き去りにして車は進む。そして、徐々に坂織宮高校へ近づいていく。


「それに置いていって誰がお守りするのさ」



「そりゃ私が――」


「ダメだ。給料なしにするぞ」


 そういやマスターにそんな脅しを受けてたな。


「じゃあなしでいいですよ」


「お前勘違いしてないか? この時間だけの話はしてないぞ。お前の働いた分の給料なしだ」


 完全なる違法労働じゃねぇか。訴えるぞ。だがまぁ、相手が相手だ。この超能力者の手にかかればもみ消されるという可能性も否定できない。ということは私は黙認するしかないのか……。


「相変わらず荒れてますね、この学校」


 坂織宮高校の横を通ると落書きと黒いシミで元の壁の色がわからないほどだった。それにしてもこの黒いシミ、一体何が原因で出来たんだろうか……。

 そして、校門の前に止まるとそそくさといろんな意味での最強メンバーが車から降りる。

 本当に暴力でも権力でも勝てないだろうし、そもそもこちらが精神支配したら太刀打ちしようがない。

 すると、ナカケンさんが皆の前に立ち、笑顔でこう叫んだ。


「サッカーしようぜ!」


 どっから足元のサッカーボール持ってきた!?

 と、私が心でツッコんだ間に「ゴキブリか!」ってほどぞろぞろと黒い学ランの不良が湧いてくる。さしずめナカケンさん達はゴキブリホイホイと言ったところか。例えにゴキブリホイホイ使う私はかなり博識。歴史の授業じゃゴキブリホイホイなんて習わないからね。

 すると、一年生だろうか? 数人の不良がオラつきながらお出迎えしてくれる。


「おい、おっさん達。何しに来たんだよ?」


「サッカーしようぜ!」


 バグったゲームかな?


「そんなサッカーしたいのかよ」


 それな。


「おう、サッカーしようぜ!」


 繰り返す繰り返す。


「まぁいいぜ」


 寛容。


「でも俺ら、サッカーのルールなんてボールに手で触れちゃダメってことくらいしか分からないぜ」


 そのルールなかったらサッカーじゃないもんな。


「基本的にそんなもんでしょ、サッカーって」


 サッカー舐めすぎだろ。どこで得た知識だ。

 すると、彼らは突然駆け出し拳を握る。


「じゃあとりあえずお前のボールを何をしてでも奪い取ればいいんだな!」


 なんて強引な話だ。しかし、ナカケンさんはそれをものともせず身を翻して彼らを躱す。


「おー、これが突然始まるストリートサッカーってやつか! やる気満々だね。待てないならこのままグラウンドまでボールの取り合いだ!」


 そう言ってナカケンさんは駆け出すと不良を全員抜き去ってグラウンドへ向かった。


「ちっ、なんだあのおっさん!」


 そして、あとを追うべく不良達も走り出す。


「よし、じゃあ俺らも追うぞ」


「竜崎さん。別に慌てなくてもあいつは大丈夫でしょう」


「アホかお前。俺が心配してんのはナカケンさんじゃなくて、不良の方だよ」


 まぁ、死ぬとしたらあっちだもんな。

 すると、先頭を走るナカケンさんが急に振り返った。


「兄ちゃんパス!」


 ボールは我らの頭上を通り過ぎ、一番後ろで嫌々走っていた拓磨の足元に落ちる。すっげぇコントロール!


「ちっ、俺はこういうことしたくて来たんじゃないんだが──」


 と、言いつつも彼は向かってくる不良をこれまた素人は思えない華麗なトリックで躱していく。


「それでもボール取られるのは癪だな」


 ちょっと拓磨、イキイキしてない?

 すると、早くもナカケンさんはグラウンドへ辿り着いていた。


「ついたー!」


 なんでこの高校入った時から、ジャンプヒーロー感出してるの? 物言いがゴムゴムの実を食べ、ゴム人間になった少年だよ?

 すると、拓磨がナカケンさんにボールを戻した。


「よし、それじゃあ始めるよー。 アレン!」


 そう言ってナカケンさんは警視長さんを指差す。


「本来、これはこういうために使うものじゃないんですからね?」


 すると、警視長さんは警笛を取りだした。

 警視長さん、今日はオフだよね? なんで持ってるの?

 そして、それを口にくわえ、思いっきり吹いた。


 ピー!


 するとナカケンさんはボールを空高く、自分の頭上へ蹴り上げる。


「僕もサッカーはやったことないんだけどアニメやゲームで見たことはあるんだよね」


 まさか……。


「イナイレだとこんな感じだったよね」


 そして、ボールが自分の正面に落ちてきた時、ナカケンさんは力強くボレーシュートのように横に振り抜いた。


英雄の一撃(ヒーローブロー)!」


 やっぱりあんたは超次元の住人か! 再現出来てもあれを基準にするな! せめてキャプ翼をみろ!

 そして、その音速のシュートはゴールへ向かって飛んでいき、我らの勝利! ──かと思いきや、シュートはゴールを大きく超えて校舎のガラス窓を突き破った。


「僕はこんな一年坊主と話に来たわけじゃない。高みの見物してないでとっとと降りてこいよ、三年坊主。再教育してやる」


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