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そして、始まるショータイム

 ………─────!


 私の意識は覚醒した……はずである。

 真っ暗だ。何も見えない。大抵寝ていたり、意識を失ったあと起きたら、目が暗闇に慣れているから自然と朧気ながらも見えるはずなんだけど……。

 すると突然、視界が開けた。


「Good morning! サチホ。いや、サチナ ショウ」


 目の前には口角がつり上がったピエロの顔があった。

 私は驚きのあまり叫んだ。

 しかし、自分の声は聞こえない。


「残念だけど声は出ないよ。君は今、声帯が使えない。いや、それどころか首から下は全部使えない」


 ここはどこ? なんでピエロがいるの? なんで声が出ない? なんで動かない? というかいつの間に名前バレた?

 数多の疑問があるがそれをいくら頭の中で反芻させても答えには繋がらない。

 するとピエロはニヤリと笑う。そして、垂れ下がった眉を持ち上げ、薄い目を微かに開くとこちらを見定めた。


「サチナ、君の言いたいことは分かるよ。とりあえず君の質問に答えよう。いくら考え、反芻させても分からない君の疑問にね」


 気持ち悪い。こいつ、思ったことを復唱するようにそのまんま言ってくる。しかも声に出してもいない質問を勝手に理解して勝手に答えるだなんて、気持ち悪い。

 そして、彼は無駄に饒舌に話し出す。これが正解だと言わんばかりに。


「まず、なんで再び僕がサチナにここまで近づいて話しているのか。それは僕が君を誘拐した張本人だからだよ。そして、ここはこのフェイマスパークの管理室さ」


 まぁ薄々犯人はこのピエロだと思ってたけどね。というかそうじゃなければ何のためにここで笑ってるのかって話だよね。


「次になんで声が出ないのか、動かないのか。なんで名前を知っているのか。これらはいっぺんに回答できる。身に覚えがあるんじゃないかなレディー?」


 動きを制限されて心を読まれた経験?

 心を読まれた経験は何回か察しのいい人間にされたことはあるけど動きが制限された経験なんてあるわけ……。

 ……いや、待て。されたことは無いが見たことはある。正確には制限ではなく支配だが。


「そう! Mr.ソウ ユガミだよ! 彼のアビリティは相手のマインドを理解し、支配する」


 じゃあこいつも超能力者でマスターさんと同じ能力の持ち主!?


「まぁそういう事さ。だから君のマインドは全て僕に筒抜けだし、君は僕のマリオネットさ」


 こいつ、一体何者なんだ……。


「僕の正体か。僕はね、君の言う超能力者にして元HDF少尉。掛川かけがわ遊策ゆうさく。今はこのフェイマスパークの支配人をしている」


 そうか。つまり、この遊園地のネーミングは全部こいつのせいというわけか。


「ははは、これ以上褒めなくていいよ!」


 褒めてねぇ。むしろ貶してんだよ。こんなアホ臭くてで鬱々しくなるほど口説いネーミングセンスだってな。バブル全盛の頃のテーマパークも真っ青のゴリ推しっぷりだよ。

 よく『フェイマス』って言葉だけでここまでゴリ押しできたな。

 

「さて──」


『さて』じゃねぇ。なんとか言えやピエロ。聞こえてるんだよな? 答えろよ。


「もう質問はないようだね」


 質問だ。私の声聞こえてますか? 聞こえてないんだったら今すぐ声を出せるようにしろ。


「じゃあ次に行くよ」


「だから──!」


 あ、声が出た。

 私はピエロを見ると彼の肩は震えていた。


「声が出るってことは聞こえてたってことだよね?」


 私がそう言うとピエロの肩はピクっと跳ね、目をぱちくりさせながら問いかける。


「い、いや別に君の要望とか知らなかったけど不便かなーと思って、僕の善意で解除したんだよ」


 目を逸らすな。前を見ろ。


「まぁいいや。それより質問」


「ま、まだあるのかレディー!?」


 ああ、これが最大の疑問だ。


「なんで私なんかを誘拐したの? MRの件ならお互い水に流すってことで決着したんじゃないの?」


 私もこいつ嫌いだし、こいつも私が目障りだろう。しかし、誘拐はいくら何でもやり過ぎだ。

 するとピエロはまたニヤリと笑うとその色鮮やかな顔を近づけていった。


「別にレディーには興味ない」


 は?


「用があるのは君の連れだ」


 それってもしかして……。


「あいつは僕がなるはずだったヒーローという名声をかっさらってったんだ! ほんの三ヶ月ちょっと参加しただけで!」


 まーた、ナカケンさん絡みか!

 しかも今回はロボットとか関係なく単に逆恨み!


「あいつさえいなければ僕はヒーローとして世界で最もフェイマスな男になれたのに! あいつさえいなければあいつさえいなければあいつさえいなければあいつさえいなければ───」

 

「憎まれっ子世にはばかる」とはよく言うけれど、これ程とは……。でも、この場合は世にはばかったから憎まれたのだから逆か。


「じゃあ私は囮ってこと?」


「まぁそういうことだね。ショックかいレディー?」


「いや、むしろ安心した。私が殺されることはないし、それにそもそもあの英雄をアンタじゃ倒せない」


 マスターさんは前にナカケンさんには能力が通用しないと明言していた。このピエロに他の能力があるとも思えないし、負けることは無いだろう。


「それはどうかわからない。あいつは人の目を気にする。一般人がいる中であまり派手な能力の使用はしないはずだ。それに勝てなくてもいい。ただのショーさ」


「まさかナカケンさんに無料優待券を送ったのはこのため!?」


「of course」


 何がしたいのかイマイチよく分からない。けどなんか嫌な感じがする。

 そんな漠然とした不安が頭をよぎる。


「さて、それじゃあ始めようか」


 そしてピエロは私の目の前にあるスクリーンを背にして大きく両手を広げる。


「ショータイムだ」


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