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いたずらピエロと脅し合い

「Congratulationsコングラッチュレーションズ!」


 そう言ったのは両手を左右に広げたピエロをだった。赤い髪に白い顔。鼻は大きく赤い。黒く縁取られた目元は垂れ下がり、逆に口元は口角が上がっている怪しいほどに笑顔のピエロであった。服も原色、顔も原色。その派手さったらない。

 心葉ちゃんは私の後ろに隠れて怖がっていた。そりゃそうだろう。突然、ピエロが目の前で今にも襲いかかりそうなった体勢で叫んだら、誰でも恐怖する。十九の私ですら怖いと思うほどなのだから。

 だが、ピエロはその姿勢のまま言葉を続ける。


「おめでとう! 君らはこのフェイマスラビリンスのハードモードの最短脱出者だ! 君達の記録は恐らく抜かれることはないだろう。これからは最短脱出者としてこのフェイマスパークのフェイマスレディースとして名が轟くことになる。おめでとう! おめでとう!!」


 そう言って彼は無駄に私達を褒め称える。しかし、最後にこう付け足した。


「だけど、随分と大胆なレディーだね」


 このピエロ……。


「そうですか? 別に私達は壁を突き破ったりしないでちゃんと出口から出ましたよ?」


「レディーはあのMRを解除したのだろう。最短設定よりも10分早い。分かっているだろうけどハッキングは犯罪だよ? サイバーテロとも言っていい」


「ハッキング? サイバーテロ? 何のことですか? そんなことしてないですよ。多分どっか別の国の誰かさんが突然そこをハッキングして、何故か私達のMR機能を解除したんじゃないですか?」


 すると、ピエロはさらに口角を上げ、饒舌になった。


「どうやら外部の複数の端末を通してハッキングしたようだが無駄な事だよ。我々の追跡からは逃れられない」


 そう言った時、何やらピエロはそっぽを向いた。どうやら通話でもしているようだ。

 そして、突然。


「Good Job!」


 そこまで欧米かぶれなのね。いや、それとも普通に使っただけ? よく分からなくなってきた……。


「我々も馬鹿じゃない。今さっきの連絡で君が犯人だということがハッキリしたぞ!」


 そこはガッツリ日本語なのね……。

 それに舐めるな。端末のスペックさえあればどんな国のセキュリティだろうとハッキングくらいできるし追跡されないようにもできる。今はこのBMIブレイン・マシン・インターフェイスしか使えるものがなかったから仕方なくこうしたんだ。それにバレることも織り込み済みだ。


「じゃあなんですか? 私を警察にでも突き出す気ですか?」


「off course! 素晴らしい手際だったが犯罪は犯罪だ。ちゃんとルールには従わねば」


「じゃあ一緒に手錠をかけられましょうね」


 私がそう言うとピエロは固まる、笑顔のままで。

 そして、少し経つとその笑顔に少々の影を潜めながら尋ねた。


「……どういうことだいレディー?」


 なんだこいつ、知らないの? ……いや、違うっぽいな。

 だが、私は察していないようにキョトンとした表情を作り、答えた。


「知らないんですか? 他人の脳内端末を取り扱う際は本人の同意なく行うことはできないのですよ? さらに言えばMRで感覚と認識を狂わせたのだから重罪です。さらにさらに、その数はこのフェイマスラビリンスで遊んだ人全員なのだからその罪の重さがどれほどか分かりますよね?」


 まぁ被害は出してないからそこは考慮してくれるだろうけどこれは言わないでいよう。

 私はピエロを再び見る。

 彼は苦悶と憎悪で固められたピエロにあるまじき表情をしていた。

 私はその顔に少し慄く。

 しかし、その鬼の形相も一瞬ですぐにあの作り笑いに戻った。


「レディー、お名前は?」


庄野しょうの咲帆さきほです」


 ちょっと怖かったので私はサラッと嘘をつく。

 このご時世、そう簡単に個人情報教えるか。


「Ms.サキホ ショウノか……。覚えておこう」


 結構だ。


「今回の件は水に流すとしよう。僕も許すし忘れるからサキホ、君も忘れたまえ」


 そう言うと彼は人混みの中へ消えていった。

 だが彼は最後、笑っていた。

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