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お化け屋敷は涼しくて暑い

 そうして我々はここ、フェイマスパークへやってきた。

 ナカケンさんも心葉ちゃんもはしゃいでるし、無料だし、本来なら言うことないのだが、正直言って私はここが嫌いだ。正確に言うとここの名前が嫌いだ。なんだフェイマスパークって。ネーミングセンスからしてもうアホだ。絶対創業者アホだ。

 まぁ実際有名な遊園地だし、有言実行しているといえばしているのだが、それでももうちょっと違うのなかったのか? こういう意味が篭っていたとしても露骨すぎる。もうちょっと捻りがあってもいいと思う。頭文字取って単語作るとか。

 この名前で良かったと思った点はアミューズメントを入れなかったってことくらいだ。入れてたらそのまま過ぎる上に名前が長くなる。そうなっていたら私はさらにここを嫌っていただろう。

 私が少々、目を腐らせていると生き生きとした二人の視線が私を責める。


「お嬢ちゃん、おチビちゃん、それじゃ早速あそぼー!」


「ぼー!」



       ×  ×  ×



「それで、なんで一番最初にお化け屋敷なんですか?」


 ホント、なんでここなの……。


「え? いいじゃん。近かったし。僕好きだよ?」


 アンタの意見なんてどうでもいいわ!


「こ、心葉ちゃんはこういうところ怖くない?」


 そう、そもそもお化け屋敷なんてところはある程度、歳が高くなってから行くべきであってこの10歳の子供を連れてきていい場所じゃないんだよ。

 すると心葉ちゃんは答えた。


「このは、こわいけどこわいのすき!」


 なん……だと……!?

 怖いの好きって正気かこの子!? もしやお化け屋敷入ったことないんじゃなかろうな?


「心葉ちゃん。お化け屋敷入ったことある?」


 尋ねると彼女はコクリと首を縦に振った。

 なん……だと……!?


「まえにパパといったー!」


 何を考えているんだ最近の親は! もしも怖さのあまり倒れたりでもしたらどうするつもりなんだ!

 すると、ナカケンさんが何とも突拍子のない事を言った。


「もしかしてお嬢ちゃん。お化け屋敷苦手?」


「ち、違いますよ! 適当な事言わないでください! 私は怖くなくてつまんないからあまり乗り気でなかっただけで普通に入れますから!」


 ホントに違うから。お化けなんてそもそもいないし、てかお化け屋敷ってロボットとか人が脅かしているだけだし!

 怖くなる要素がそもそもないって言うか! ともかく問題ねぇから!


「そ、そうか……。ならいいんだけどね」


「ええ、まぁともかく行きましょう!」


『フェイマス墓場の怨霊』

 そう書かれたお化け屋敷にノータイムで入った。もうちょっと待ち時間あっても良かったのにね……。

 中は暗かった。あと少し涼しかった。


「それにしてもこのお化け屋敷も大したことないですね。全く怖くないですよ」


「お嬢ちゃん──まだ5メートルしか進んでないよ」


「……いや、私ほどの人間ともなると5メートル進めばそのお化け屋敷のレベルが分かるんですよ!」


 すると心葉ちゃんが涙目で私に訴える。


「……おばけやしき、きらい?」


 くっ、この子を泣かせるわけにはいかない!


「いや、お姉ちゃんも大好きだよ! ハッハッハッハッハッ………ハァ……」


 二人はドンドンと笑いながら前を進んでいく。2人とも早すぎるでしょ。

 今は競歩大会じゃないですよー!

 ……ホントに置いてかないでよ……。

 その時だ。

 私の背中に何か柔らかく冷たいものが肌を撫でた。


「ヒィ!」


 出た出た出た出た出た!

 死に物狂いで走り抜けた。とにかくその場から離れようと、とりあえず離れようと走り続けた。

 すると何かにぶつかる。


「フンギャ!」


 こんな声がどこから出たのか分からないが私はそう言って倒れた。


「ど、どうしたんだいお嬢ちゃん!?」


 ぶつかったのはナカケンさんだった。

 彼は振り返ると私に手を差し伸べる。私がその手を取ると彼は力強く引っ張りあげた。


「やっぱりお嬢ちゃん、お化け屋敷苦手なんじゃないかい? 何ならこのまま手を握っていようか?」


「大丈夫です! 問題ありません!」


「……そうかい」


 ナカケンさんはそう言うと私から手を離す。そして、前を向き直して再び心葉ちゃんの手を握りながら歩き出した。


 ……はぁ。

 私は二人の後ろをついていきながら小さくため息をついた。

 口ではああ言ってしまったが正直言ってたぶん私はお化け屋敷が苦手だ。理由は分からないがやはり怖いんだろう。

 だけど怖いなんて言えないし、手を繋ぐことなんて絶対にできない。だってこの歳でその程度のことで怯えてるなんて恥ずかしいし、何より心葉ちゃんに見せられない。

 だけど──、この程度ならいいよね。

 私はそう言い訳してナカケンさんのTシャツの裾をつまんだ。

 ナカケンさんはその時、少し肩がはねた。しかし、その後はまた心葉ちゃんと会話しながら歩き始めた。少しスピードを緩めて。

 私は顔だけ少し、暑く感じた。

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