魔術特訓開始!
瑠奈はブラコン
色々とあった翌日。俺はとんでもないことになっていた。
「なにが悲しくてこうなったんだよ・・・」
言葉にするとより虚しくなるが、自分の腕を見る。そこには何をどう間違えたのか水着の少女たちが絡み付いている。
「むふふ、お兄ちゃんの腕だあ♪」
「これは中々楽しいわ」
「ううっなんで私まで・・・でも・・・」
理由は二時間程前に遡る。
「久し振り!お兄ちゃん、お姉ちゃん、叔母さん!」
「久し振りだねぇ瑠奈!あたしと会うのは正月以来かな?」
到着した瑠奈と茜は大暴れしていた。こうなってしまうと母さんも俺も手が付けられない。救いを求めていると、チャラララ~と音楽が鳴り、メールが届いていた。
「ええと、ってやる気あんのか!?」
叫ぶのは近所迷惑だったかもしれないけれどどうか許して下さい近所の皆様。メールはこうだった。
今日午後一時からYビーチで。水着は必ず持って来ること。妹も連れてきて構わないわ。
明らかに遊ぶことしか考えてない。ちなみにYビーチというのはここからそう遠くない場所にある太平洋に面したビーチで、そこそこ人がいる。どうしたものかと視線を瑠奈に向けると明らかに目が輝いていて、ある言葉を待っている。
「あ、あー、えっと、友達から海に行く誘い受けたけど妹がいてもいいって言ってるし来るか?」
「うん!」
瑠奈は快活に返事をする。茜は納得いかないという様な顔をしていたので、
「姉ちゃん、桜からだよ」
そう言うと
「あたしも行く」
と表情を引き締めて言ってくれた。
「でもお兄ちゃん、私今水着持ってないよ?」
ここで俺は気付いた。
瑠奈が言いそうなことに。でも、頼むから言わないでほしい。
「お兄ちゃん、水着買いに行くから着いてきて!」
俺の脳裏に社会的死亡の文字が浮かんだ。クラスの誰かに見られたら本当になってしまう。
「はあ・・・」
結果、俺が折れて水着購入に付き合わされることになってしまった。
◇◇◇◇◇
・・・街行く人々の視線が痛い。まあ、俺たちが双子だと知らなければ仲のいいカップルにでも見えるのだろう。でも瑠奈は、
「ねえ、水着選んでよ」
知ってて爆弾発言を投下している。完璧過ぎて作り物っぽい笑顔がその証拠だ。多分内心で大爆笑している。
ていうか抱き付くのはいい加減やめて欲しい。双子だから慣れているとはいえ、やっぱり体の感触が違う。男である俺よりも柔らかい体を押し付けてくる。まあ、所詮はAの貧乳。胸の方はどうってことなかったから普通に大丈夫だった。言ったら殴られるだろうけど。
「もう帰っていい?」
答えは分かっているけどそう質問してしまう。
「ダメだよぉ!ちゃんと選んでくれるまで帰らせないよ!」
やっぱりな。
結果、超過激で目のやり場に困る紐水着を全力で拒否してもっと無難なセパレートを買わされる羽目になったが、喜んでいたのでまあよしとしよう。だが、それにしても水着は高過ぎだと思う。あの断崖絶壁にこれだけの金額がかかるならもっとある方々は財布が保つのだろうか?そんな疑問を抱かずにはいられない。だが、取り合えずYビーチに俺と瑠奈は向かった。
・・・そして現在、瑠奈は先程買った水色のセパレート、陽子はピンクのワンピース、茜は赤のビキニ、そして桜は黒の紐ビキニでビーチバレーを楽しんでいる。
・・・ツッコミ所が多過ぎる。具体的に言うと桜が瑠奈が一度買わせようとしてきた超過激な水着だったり、ビーチバレーしてたり、茜が無双してたり、瑠奈以外の胸が揺れてたり・・・いや、最後のは関係なかった。ていうか殴られたくないから死んでも口にはしない。
「もう疲れたんだけど魔術の修行は?」
「僕に聞かないでくれ・・・」
俺と時太は不毛な会話を木陰でしている。すると、ザクッという音がして、誰かが俺たちの所に現れた。それはなぜかスクール水着で、小動物みたいなオーラの眼鏡の少女だった。
「さあ、魔術の修行、始め・・・たいんですけど・・・」
あの集団は気付いていない。
「あの、修行は・・・?」
もう面倒になってきたので俺はビーチバレーの中に入って、陽子以外をとりあえず一発殴った。
「ふぎゃっ!?」
「きゃっ!?」
「痛っ!?」
俺は無言で木の方を指差す。そこには完全に呆れた様子の時太と涙目の眼鏡少女が立っている。状況を大体察した四人の内、桜以外がばつの悪そうな表情になる。桜以外は。
「ああ、来てたんだ美幸」
「酷い!呼んだの桜ちゃんでしょ!?」
はいはい、と軽く受け流してから桜はこちらに向き直る。
「この小動物が魔術を教えてくれる守沢美幸よ」
「あ、あの、ど、ど、どうも、よろしくお願いします!」
どうも人見知りっぽいし引っ込み思案系の陽子と気が合いそうだな、と俺は適当にその性格を『読んだ』。
「ちゃあーーんとお願いね?」
桜が威圧すると美幸はガクガクと震えている。かなり不安な修行が始まった。本当に大丈夫なのか?
読んだら思うと思いますが・・・タイトル詐欺すいません!まだ始まりません!
あと、ブラコンに振り回される兄書くの意外と楽しい