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神殺しの英雄伝  作者: シュモクザメ
Out of the Earth
3/29

襲撃者と潜入者と(前)

今回は神山家についてあとがきで少し解説します。

 俺たちを乗せた高級車はどこかへ向かっているようだ。窓から景色を見ることは叶わない。

「おい、まだ着かないのかよ。結構暇なんだけど」

「まだだ」

 おそらくまだ十五分ほどしか経過していないのだろうが、どうしても居心地の悪さが肉体的な疲労にも影響しているような気がする。

「……なあ、あんた本当に何だ?そのガスマスク暑くないのか?」

「お前の知るべきことではない」

「やっぱ暑いんだろ」

「暑くなどない」

 こいつ、思ったよりガキっぽいな。もしかしたら年下なのかもしれない。

「そういや、名前聞いてなかったけどあんたの名前は?俺のことは知ってるみたいだからいいけど」

「知る必要があるのか?」

「いやいや、自己紹介は相互理解の第一歩なのだぜ?」

「そんなもの必要か?」

「いやいや、大事だろう。俺の命、あんたにかかってるみたいだし。俺はともかくとしても周りに迷惑がかかるのは流石に困る」

「そうか」

 それきりまた車内は沈黙に包まれた。

「……着いたぞ」

「ようやくか」

 時間にして三十分程度だろうか。綺麗な割に居心地の悪い高級車を出ると、どうやら自衛隊基地によく似た場所のようだ。

「おい、何だよここ」

「我々の拠点だと言っただろう」

「まるで軍隊みたいだしな。お似合いだぜ」

「褒め言葉と受け取っておこう」

 高級車を使う意味がわからんけど、なんて考えていたら拳銃を突き付けられた。

「何か失礼なことでも考えたか?」

「ナンデモゴザイマセン」

 拳銃は向けないでほしい。流石に心臓に悪いから。

「まあいい。この部屋で少し待っていろ。私は着替える」

「やっぱ暑いんじゃんか」

「……」

 まあ七月にガスマスクなんぞ着けてたらクソ暑いことこの上ないわな。俺だって着けたくない。

 ガスマスクが出て行って、俺の緊張感も少し緩んだ。すると、口にしなかったこともついつい漏れてしまう。

「結局何がなんだかさっぱりわからねえ」

 あのローブの口振りや、ガスマスクの言葉なとを加味してみると、当事者であるはずの俺が一番情報を持っていないことはほぼ間違いない。それが不安の正体だった。

「あら、悩んでいるのかしら?」

 ガスマスクと声が同じだけど口調が違い過ぎる奴が来たな。どんな顔なのか気にならないこともない。

「あんた……さっきのガスマスクか?」

「ええ。はじめまして、神山霊示。私は雛岸桜。一応ここの責任者になるのかしら」

「色々変わりすぎだろ!?」

 少女は黒髪をポニーテールにしていて、標準的な身長と平均より大きいであろう胸部は汗に濡れた黒のタンクトップによって想定外に強調されている。顔立ちもとても整っていて、さっきのあれと同一人物だとは思えなかった。

「えっと、雛岸」

「桜でいいわ」

「なら桜、どっちが素なんだ?」

「こっちよ。あっちは部下の前用」

「部下?」

「ええ。ここはPMCの拠点で私はそこの責任者ってところよ」

「PMCってあれだよな。なんかのゲームに出てきたけど、民間軍事会社だっけ」

「そうよ。案外知ってるのね。さっきから視線がおかしいけど」

「む、胸なんて別に興味ねーし」

「自白してるわよ」

 馬鹿みたいなやり取りを間に挟んで、真面目な話に戻る。

「まあ、詳しいことはこれから話しましょう」

「頼む」

 何となく俺の緊張感も弱まってきた。我ながら現金なことに、美少女には勝てないということらしい。

「それじゃあ、あなたについての話を始めましょう」

 桜が語り始めた。


◇◇◇◇◇


 同日午前十時頃 長野県某市

「ふあぁぁっ」

 欠伸をしながら少女は目覚めた。少女の容姿(ようし)はとても端麗(たんれい)で、肩の辺りで揃えた栗色の髪の毛、くりっとした目、整った顔立ちなど男が注目せずにいられないものだ。だがその少女は、

「今日はお兄ちゃんに会える日だ!気合い入れて落とさなきゃ!」

 彼女はブラコンを通り越して恋のレベルにまで拗らせた、変態と呼ばれてもしょうがない人々の一人である。そんな残念少女の名は神山瑠奈(かみやまるな)正真正銘(しょうしんしょうめい)、神山霊示の双子の妹である。

「おはよう、お爺ちゃん、お婆ちゃん」

「おはよう、瑠奈」

 霊示が叔父夫婦に引き取られたのと同じように、瑠奈は母方の祖父母に引き取られることになったのは十年前のことだ。それ以来霊示とはたまにしか会うことはできないが、それ以外の不満を抱いたことは特にない。

「もう行くのかい?」

「うん。早くお兄ちゃんに会いたいから」

「気を付けてね」

 外には叔父の車が止まっている。兄に会うのだから、と瑠奈は精一杯のお洒落をしたつもりだ。水色のワンピースを着て、髪をサイドテールにして支度は完了。兄に恋する乙女の笑顔は明るい。

「今回こそ、お兄ちゃんを陥落させるっ!」

「いや、倫理的にそれはちょっと……」

 最近増えてきた白髪と、何故か似合う苦笑の表情などから叔父の苦労が伺える。

「行ってきます」

 車が走り出す。青空は雲ひとつなく、澄み渡っている。けれども、少女はまだ知らない。ここから先に横たわる宿命を。

お久しぶりです。今回からリアルが夏休みなので投稿スピード上がります(たぶん)。では、まえがきの通りに神山家について解説を少し。まず、霊示と瑠奈は本当に血の繋がった兄妹です。一方、茜は従姉なのですが、霊示は本当の姉のように考えているので霊示視点では姉と表記しています。

・・・こんな感じです。それではまた次回。

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