生命の樹攻略作戦 2
なんか半年振りですね……まあ、一応リメイクやらなんやらしてたので許してください。
「クソ!なんなんだよこれ!」
「知らないわよ!あたしに聞くな!」
早速車は壊れかけていた。まさか魔術師連中があんなにバカスカ撃ちまくってくるとは予想外だった。
「ああ、もう!世界の危機に張り合うなよ!あいつら頭の中脳味噌じゃなくて蟹味噌じゃねえの!?」
「実は私もそう思う」
容赦なく側面の魔術師を吹き飛ばしながら、ローズも俺の主張に頷く。ちなみに先程から瑠奈が静かな理由は荒っぽい運転で乗り物酔いを起こしてダウンしているからだ。
「桜!共同戦線とかって張れないのか!?」
「無理。あいつらにとってみれば自分たち以外の神は神じゃない。だから、それを擁護しようとする者、それと私たちのように『神殺し』を行う者は邪魔なの」
「だから潰すって!?バカしかいないんだな!」
「よくわかったな。あの脳無しクソジジイたちについていってもロクなことないぞ」
「ですよねー」
俺、ローズ、桜の会話は軽い。ちなみにその間に吹っ飛んだ敵は二十人以上。まだ道のりは三分の一程度だ。
「ていうか女子連中に比べて俺の役立たず感がすごい!」
「気にするな。夜のお礼をしてくれればいくらでも働くぞ」
「それはダメ!」
ローズの提案はとても魅力的だが、瑠奈がノーを突き付ける。
「ま、とにかく終わってから考えるべきね」
「だな」
桜の言葉に頷いて、俺に唯一できること、つまりフレアやスモークの投擲という方法で時間を稼ぐ。そろそろ肩痛くなってきた。
「まだなのか!?」
「あとちょっと!」
姉ちゃんのエグい運転によって距離は大分詰まってきたが、車はベコベコだ。軍用のジープなのにどうしてこうなった。
「あ、やば」
どうした、と反応する前に車が横転した。俺、瑠奈、ローズ、姉ちゃんは車の中でシェイクされる。吐きそう。なお、桜だけは事前に脱出していた。
「クソ……」
「痛い、気持ち悪い……」
「はあ、ここから徒歩か」
「ちぇ、この車欲しかったのに」
それぞれが割と余裕な感じで車から脱出する。桜は世界トップレベルの異能、重力で敵をねじ伏せていた。
「余裕かしら?」
「うるせえよ」
わかってたなら助けてくれよ、と言いたいが、俺だけ桜の異能すら受け付けないんだった。
「うう、やっと治ってきた……」
瑠奈はまだ口元を押さえている。嘔吐することはプライドが許さないらしい。
「おい、行くぞ。霊示は私と一緒だ。なんならそこの物陰で二人で潜伏しよう」
「駄目!どうせ密着してあんなことやこんなことするつもりでしょ!そんなことは私か許しません!」
「喧嘩しないで行くぞ」
俺が言うと、二人は即座に従う。今は色々言っている場合ではない。ローズは仕方無さげに拳銃を取り出して、初弾を排莢する。俺と瑠奈も拳銃くらいは持っているが、残念ながら使い方がよくわからない。
「ほら、私が偵察してくるからローズは結界を作っておいて。霊示は外に出るしかないけど……」
「気にすんな」
「なら、発動後は私も外に出ていよう。瑠奈を外に配置するのは流石に不味いが、私なら遠距離でも戦えるしな」
「なら頼むぜ」
ローズは元々用意してあったボロいパピルスとかいう紙を置いて、簡単に呪文を唱えて結界を作った。呪文はどうやら英語らしい。たとえ右腕が無くても俺には生涯無理そうだ。
「よし、これで終わりだな。さて、外だから少し恥ずかしいが、それはそれだ。そこの物陰で……」
ローズが顔を赤らめながら服を脱ごうとする。ブラウスのボタンを三つ外したあたりで流石に止める。ちょっと見惚れて止めるのを忘れそうだったのは秘密だ。
「お前、流石に外は不味いって」
「仕方ないだろう、ベッドもないし。あとはもう路上で楽しむくらいしか手がない」
「一応言っとくけど、女の子が言っていいのかそれ。発言が完全に変態のそれだぞ」
「変態じゃなくてお前を愛してるんだよ」
「お前な……」
愛してるって言われて悪い気はしない。むしろ、こんな外国人の美少女が俺のことを好いてくれてるとか嬉しいことこの上ないんだけど、状況が状況だ。女の子云々言ってる暇があったら一刻も早く全てを終わらせた方がいい。
「一応敵は少ないし何とかなりそう……あら、お邪魔だったかしら?」
「いや、全然。むしろ助かった」
「むう、まあいい。結界は回収していくぞ」
「了解。ぶっ壊さないように離れてる」
「すまないな。後でお詫びは……」
「性的な話に持ってく必要無いからな!?」
「私の思考を読んでいるのか……まさに相思相愛だな」
「もうめんどくせえ」
ローズ実はポンコツかよ。ていうか思考がピンク色一色だし。
「痴女に疲れたお兄ちゃんに癒しの妹が来たよ!」
「ああ、また変態が……」
おかしいな、陽子あたりがいればもっと楽なんだけど。時太も帰ってこないかな……安息の地が本格的に欲しくなってきた。
「なんか、我が弟ながら苦労してるのね……主に女性関係だけど」
「ねえ、マジで助けて……」
泣き言は無視というのが基本スタンスらしい。役立たずこと俺と瑠奈の双子を真ん中に配置して、徒歩で周辺警戒をしながら進んでいく。流石プロというべきか、戦闘慣れしているローズと桜は難なく進んでいくが、素人にとって瓦礫が所々に転がっている道を歩くことは難しくてしょうがない。時々鋭い破片は転がっているし、スタミナも相当持って行かれる。俺は日頃からケンカと逃走を繰り返しているのでスタミナはそれなりにあるが、超インドア派こと瑠奈のスタミナは皆無に等しい。
「クソ、面倒だな……」
「仕方ないわ。ここの住人を避難させるのは苦労したけど、幸運にも自衛隊経由で何とかできたから死体が転がっていないの。まだましよ」
「そうか……」
何でも地震によってガス爆発が誘発された、という触れ込みで港から内陸のそれなりの距離までを強引に避難区域に指定したというのは聞いたが、その所為で民間人の家が勝手に拠点に使われていたりするというのは気分の良いものではない。一刻も早く、ここを解放する必要がある。
「やっ、と、みえ、た……」
瑠奈が息も絶え絶えに漏らした言葉に、俺はついに樹に辿り着いたことを知った。
「これが、生命の樹?」
それは、天を貫くようにそびえ立ち、雲の上まで届かんとする白く無機質な塔だった。樹とは言っても、途中に枝が伸びている訳ではない。穢れなき白い壁の素材は不明。少なくとも成績の芳しくない高校生の知識の中に該当するような物質はない。
「……白は潔白、か。もしもこれがセフィロトの樹のシステムならば、神と天使は描かれない筈だ」
「何でだ?」
ローズの言葉の意味を九割以上理解していない俺が尋ねると、全員が首をかしげる。
「なあ、本当に知らないの俺だけ?」
「そうなるわね」
桜の言葉に結構傷付く。いや、俺が特別アホな訳じゃないと思うけど。
「セフィロトの樹っていうのは簡単に言うと天使や人の階級を示した図ね。まあ、そのままあそこに反映されていることはないと思うわ。何せ、一定より上は描かれないから」
「む、何でだ?」
「人間では決められないってことらしいわ。ま、きっとあれはもう一つのセフィロトの樹なんだけどね」
「もう一つ?」
「あれは既存の魔術体系には当てはまらない系統樹なの。まあ、つまり本来描かれない部分を元にして作られるもう一つの法則があの中では渦巻いているの。近付いてはじめてわかったけど、漏れ出す力だけであまりにも強過ぎる。普通の人が入れる空間とは思えないのよ。多分、入ろうとすれば弾かれるわ」
「それじゃあ、どうするんだ?」
俺の疑問に、桜は少し答えにくそうな表情を浮かべたが、諦めたかのように答えを口にした。
「……神から分かたれた力を持つ者」
「は?」
「つまり、神の右腕と左目の所有者である二人なら突入することができるのよ」
「それは、つまり」
「ええ。あなたと瑠奈、たった二人よ」
「って、俺と瑠奈の二人で何が起きてるのかもわからない場所に突っ込んで行くのか!?」
そんなこと、できるはずがない。俺も瑠奈も完全な素人だ。不良と引きこもりに何をしろと言うんだ。
「あー、それについてなんだが」
ローズが口を開いた。思わず全員が振り返る。
「実は、私が長期間霊示とのイチャイチャの機会を取り上げられていた理由なんだが。まあ、あそこに入れる手段があるんだよ」
ローズの発言に、俺と桜は思わず顔を見合わせた。
「それなら」
「ああ。少なくとも桜と私、それに茜は何とかなるな。ただ、あまり大人数を送り込める訳じゃない。それだけ注意しておいてくれ」
「わかったわ。それじゃあ、教えて?」
「わかった。今回使うのは私の師、現代最強の魔女ことナギ=バレンタインが考案した異世界へのゲートを開く方法を応用したものだ」
その名前を聞いた途端に桜が嫌そうな顔をする。どうやら、思う所があるようだ。
「それ、やることなすこと全て禄でもないって弟子に言われてる奴じゃない……まあ、実力がすごいのは事実なんだろうけど」
「悪い人ではないんだがな。まあ、簡単に言えば大気中のマナの量が違う場所に順応する仕組みだ。ゲートを通過する間に慣らすというなんとも古典的な方法だが、まあいいだろう。大事なのは血管だからな」
「そうね。それじゃ、私はそのゲートを通るわ。私は達に続いて霊示と瑠奈も突入。これでいいわね」
頷き、俺たちは覚悟を決める。さあ、突入作戦開始だ。




