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神殺しの英雄伝  作者: シュモクザメ
Out of the Earth
28/29

生命の樹攻略作戦 1

「あーあー、マイクテスト」

「緊張感ないなあ……」

 作戦前段階ということで、桜が演説をするらしい。だが、何だろうか、この感じ。俺が普段寝てる朝礼みたいな感じだろうか。余談だが、朝や昼、要するに夜以外で寝ても俺は悪夢は見ない。その理由は医者に曰く、夜に燃え盛る火が俺のトラウマだかららしい。

 まあ、それは置いておくとして。

「おいおい、もうちょっと緊張感ないのかよ」

「何言ってるの?緊張しっぱなしじゃおかしくなるわ。適度に気は抜かないと」

「オーケー。素人は黙っとく」

「いや、貴方にも演説はしてもらうけど」

「は?」

 おいおい、ちょっと待て。俺はどちらかと言えば授業態度は悪く、成績も悪い不良寄りの人間だ。なんで俺が生徒会長みたいなことをするのだ。まず、誰も俺のことなんか知らないだろう。

「お願いするわよ、英雄さん」

「英雄って、俺は何もしてないぞ」

「あら?だってあそこに陣取る神を殺せる唯一の人間でしよ?これからなってもらうのよ。それに、神殺しの力っていうのは貴方が思ってるより有名なの」

「そういうことか」

 つまり、一番危険で重要な役割の俺の言葉で勇気付けろ、ということか。『右腕』のネームバリューも中々のものだし。

「なら、少しは頑張るよ」

「その意気よ」

 桜はニヤリ、と笑って拳を突き出す。俺も拳を突き出して、拳と拳をぶつける。いいね、こういうノリも悪くない。

「それじゃ、始めるわよ」

「了解」

 しかし、演説か。以前までの俺だったら考えられないな。まあ、これも大人への階段だと思って努力しよう。

「ああ、どうも。イーターズの現代表の雛岸桜という者だ。今回の作戦においては、自衛隊、傭兵、日本神道のそれぞれの代表者と最重要戦力である神山霊示による話がある。それぞれ役割が異なるので、しっかり聞いていただきたい」

 やっぱり、部下とかの前ではその男口調か。まあ、桜らしいっちゃ桜らしいな。あれは、本人の不安の裏返しなんだろうけど、上手く自分を鼓舞していると思う。と、もう終わりそうだな。

「それでは、私からは以上だ。続いては自衛隊の代表者にお願いしたい」

 よし、終わったようだ。ていうか、何となく俺はトリを飾ってる気がするんだけど。

「ふう、やっと終わった。疲れたわ」

「お疲れ、リーダーさん」

「あら、貴方の本番はこれからよ?」

 こっちは素の桜だ。口調変わりすぎだろう。まあ、何も考えなくていいっていうのが本人にとってみれば気が楽なのかもしれないな。

「さて、と。お前はどうするんだ?この後準備でもあるのか?」

「まさか。私も貴方の言葉を聞いておくわ」

「クソっ、せめて知り合いには聞かれたくねえ……」

「諦めなさいな。私だってあの状態を友達に見られるの恥ずかしいのよ」

「はあ。別に、俺はあれはあれでいいと思うけどな。なんていうか、人を率いる人間って感じがする」

「褒めてくれてありがとう。それでも、私はこっちの方が楽だわ」

「それならそのままでいいだろ」

「ええ、そうね」

「さて、と。俺も行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」

 俺が台に登ると、それまでとは空気が変わった。やはり、神殺しの力のネームバリューは凄まじいもののようだ。

「えっと、どうも。俺は神山霊示っていいます。何か、こう気の利いたことは言えないけど、精一杯頑張るので……」

 何か、違う気がする。俺が言うべきことはこんなくだらないことじゃなくて……

「ああ、もう。まどろっこしいのはやめだ。俺はど素人だ。戦闘のいろはなんぞ分からないし、誰かを見捨てるだのなんだのの判断なんかできない。だから、俺は自分のできることを無理矢理でもやりとげてやる……」

 もう、どうにでもなれ。俺の言いたいこと、ずっと黙ってきたこと、全部ぶちまけてやる。

「俺は、全部無くした。クソッタレの神様に、両親も、思い出も奪われた。その先にあったのは人間からの攻撃だった。だから、俺は人類を救うとかは正直どうでもいい。でも、無くしたくないものだってできた。俺は、そのために戦う。だから、人類とかはあんたらに全部頼みたい。俺は、ただ自分の為に戦ってやるよ」

 結局、ただのガキに世界なんかは背負えない。だから、俺は俺の為に戦う。

「頼む。神殺しは俺がやる。だから、あんたらが世界を救ってくれ」

 きっとこれは、支離滅裂で、説得力も感動も何もないただの自己満足の言葉だ。俺が自分を納得させるための言葉に過ぎない。だけど、どうか思いが届いてくれ、そんな風に思う。

「任せなよ、英雄。お前はそれだけやってろ」

「そうそう。世界なんて、子供には背負わせないよ」

「まったく、当たり前じゃないか。素人はそれだけやればいいんだよ」

 そう、声を掛けられる。俺の無茶苦茶な言葉でも、伝わってくれたのだろうか。

「お兄ちゃん!」

「ん、何だ、瑠奈か。どうした?」

「やっぱりお兄ちゃんは最高!世界で一番かっこいい!愛してる!抱いて!」

「待てやコラ」

 何だこのハイテンション妹。ていうか問題発言入ってるし。ていうか、まだ九月だぞ。何でそんなにくっつくんだよ。

「ねえ、お兄ちゃん。私はどうすればいいの?」

「お前は……」

「索敵をお願い」

 留守番、と言おうとしたところで、桜が横から口を挟んだ。だが、それには反対だ。

「いや、待てよ。こいつを危険なところに連れて行きたくない。だって、瑠奈は戦えないだろう。危な過ぎる」

「ううん、お兄ちゃん。それは違うよ」

「何?」

「私だって戦える。今回ばっかりは奥の手があるからね。それに、お兄ちゃんと違って私は魔術使えるんだよ?」

「は?なんだそれ。聞いてないぞ」

「だって教えてないもん」

「何でそんな重要なこと言わないんだよ!」

「サプライズだよ!ね、だからいいでしょ?それに」

「それに?」

「これは、お兄ちゃんだけの因縁じゃない。私にも関係ある。だって、私はお兄ちゃんの双子の妹だよ」

「……そうだな」

 そう、忘れてはいけない。奪われたのは俺だけじゃない。瑠奈も、俺の双子の妹も家族を奪われたんだ。それなら、ここで戦う意味はある。

「分かった。絶対無茶するなよ。お前には生きて帰ってもらわないと困る」

「うん!」

 瑠奈が子犬みたいにくっついてくるので、頭を撫でて落ち着かせる。ふにゃ、と笑顔になるので、嬉しいといえば嬉しいし、困るといえば困るので、なんか複雑。

「……実は霊示もシスコンよね」

「なら相思相愛!?」

「いや、それはない」

 周囲の視線が痛い。生暖かい目は本当にやめてください。俺のライフはもうゼロです。

「まったく……お前たちは何やってるんだ?」

 呆れた様子でローズが現れる。ああ、そういう目やめてください。そんなジト目で見られたら死んでしまいます。

「行くぞ。私と霊示と瑠奈、それに桜の部隊は本丸に攻め込むのが仕事だ。意地でも霊示をあの樹の頂点に届けるぞ」

 真面目な調子に戻ってローズが言う。

「なるほど、特攻隊だな」

 俺は軽く言って、努めて事実を飲み込もうとする。

「そうなるわね」

 桜とローズはとっくに覚悟を決めたような表情をしている。女の子の方が強いって、本当だな。

「それじゃあ、行くか」

 おかげで、俺も覚悟は決まった。

「……お兄ちゃん、私、本当は少し怖い。けど、私も戦う。だって、私はお兄ちゃんの世界一の妹だからね!」

 瑠奈も本心と覚悟を教えてくれる。まったく、俺の手に余るくらい最高の妹だよ、本当。瑠奈の頭を軽く撫でて、俺たちは出発の準備を整える。移動に関しては姉ちゃんが車でなんとかしてくれるらしい。気になることが多すぎるので姉ちゃんからも話は聞いておきたい。

「姉ちゃんって車運転できたっけ?」

「できるわよ。ゴールデンウィークにこっそり免許取りに行ったから」

「おい、校則」

「知らない」

 一応そういうの駄目だろう。ていうか、多分無理矢理やったんだろうな……期間的に。

「茜。そろそろ教えてもいいんじゃない?」

「あれ、先輩。こっちにいていいんです?」

 先輩が来たが、この人は神道勢力の中心だからここにいていいんだろうか。準備とか忙しいと思うけど。

「いいんだよ。それより、茜」

「……本当に?あたし、あんまり言いたくないんだけど」

「……何の話だ?」

 訳が分からない。けど、姉ちゃんの目を真っ直ぐ見つめる先輩の様子からして、真面目な話のようだ。

「……はあ。分かったわよ」

 姉ちゃんが降参した、とでも言いたげに溜め息をつく。そして、一呼吸置いて言葉を紡ぎはじめた。

「ねえ、霊示。タイムリープって、知ってる?」

「えっと、前に時太が言ってたような……」

「時間跳躍って意味なんだけどさ。もし、あたしがそれを経験してきた、って言ったらどうする?」

「は……?」

 いや、まさかそんな。つまり……

「姉ちゃんは……」

「そう。あたしは未来から戻ってきた。もう七回目なんだよ、この状況」

「何でだ?」

「そんなの、弟と妹を助けるために決まってるでしょ」

「つまり、俺と瑠奈が死んだってことことか?しかも七回も?」

「そう。二人は最終的に神と相討ちになってこの世界から消える。それが嫌だった」

「……」

 つまり、姉ちゃんは俺と瑠奈が死ぬのを何回も見てきたということになる。まさに地獄だ。

「なあ、どうやってタイムリープなんかしたんだ?」

「神の死っていう現象が生み出す時間的・空間的な歪みを利用する方法。最初のローズが教えてくれた」

「最初のって……」

「はい、これでこの話お終い。あたしはあたしで、二人は弟と妹。これでいいの」

「……ああ、たしかにそうだな」

 多分、それでいい。この関係は、それだけのものだ。

「じゃあ、絶対生きて帰るよ」

「うん!」

 俺と瑠奈は二人で拳を突き合わせる。それを見る姉ちゃんの視線は、どこか暖かくて大人びて見えた。


 準備は整った。さあ、俺の戦争ケンカを始めよう!

今回も短めで申し訳ございません。まあ、新作書いてましたしね。そちらはカクヨムの方に試しに上げてます。気になった方はどうぞ。URL→https://kakuyomu.jp/works/1177354054882842172

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