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9 望遠鏡とアテレコ

 部屋の中には珍しくナズナと2人きりだ。


「みんな、遅いね」

「クレアは先生に呼ばれていたな。エリナは剣の練習だろう」

「イリスちゃんはどうしたのかな?」


 確かに遅い。

 いつもなら、一番早く来ている。

 僕は近くに大きな紙を手に取ると、クルクルと回し筒状にする。

 そして、筒の先に水の魔術を使い、水を凹凸になるようにしてレンズを作る。

 出来た望遠鏡もどきを覗き込む。

 上手く見えないな。

 何度か調整をして学園の方を見る。

 段々とピントが合ってくる。

 学園の方を見ていると捜し人が見つかる。

 学園の入り口でイリスが女の人と会話をしているのが見える。

 

「イリス姫は学園の入り口で女の子と話をしているね」

「シンク君、何を言っているの?」

「何って、イリス姫がどうしてるかの質問に答えただけだけど」

「答えたって、何でそんなこと分かるの?」

「こっから見えたから」

「ここの研究塔から学園が見えるわけないでしょう」

「見えるよ。ナズナも見てみる?」


 僕は即席の望遠鏡を渡す。


「何これ?」

「望遠鏡」

「ぼうえんきょう?」

「遠く見る道具かな」

「これは水?」

「レンズの代わりに作った。そこは触らないでね。見えるように調整してあるから」


 ナズナは渡された望遠鏡を覗き込む。


「なにこれ、遠くのものが近くに見えるよ」

「それが望遠鏡だからね。学園の入り口を見て、イリス姫がいるから」


 ナズナが見る先が学園の入り口を向く。


「本当だ、イリスちゃんがいる。しかも、男の人と」


 聞き捨てならない言葉が出てきた。

 さっき見たときは女の子と話していたのに。

 ナズナから望遠鏡を奪い取り、望遠鏡を覗く。

 イリスが男と一緒にいる。

 むかつくことにイケメンだ。


「シンク君、わたしも見たい」


 望遠鏡を奪おうとするので仕方なく、もう一個望遠鏡を作ることにする。


「あの男の子、ランゼル君だね」

「ランゼル?」

「どっかの貴族の三男だったはずだよ」

「貴族でイケメンか」


 男の敵だな。


「でも、何を話しているのかな?」


 流石にここからでは声は聴こえない。まして唇から言葉を読む技術なんて持ち合わせていない。

 ここはお約束のあれかな。


『俺イケメン、一緒にお茶しない?』

『行かないのじゃ』

『俺イケメン、美味しいお菓子を売っている店を知っているから行かないかい?』

『太るから食べないのじゃ』

『俺イケメン、家まで送らせてくれないかい?』

『迎が来るから結構なのじゃ』

「さっきからなにを言っているの?」

 

 僕のアテレコにナズナが聞いてくる。


「二人のトークを想像してみたんだけど」

「会話するときに、俺イケメンって言う人いないよ」


 いないのか。

 てっきりイケメンは話すときに俺イケメンって言うと思っていたよ。

 それじゃ、別なことを考えないと、


『イリス姫、今日も平民がいる研究塔に行かれるのですか?』

『そうじゃ、だからそこをどくのじゃ』

『どうして、そんなに平民に気にかけるのですか。弱みを握られているのであれば、我が家の力を使って救い出してみせますよ』

『シンクはそんなことをしないのじゃ』

『イリス姫、もしかしてあの平民のことが好きなのでは』

『そんなことがあるわけないじゃろ。(ぽっ、頬を染めるイリス姫)』

「頬染めていないよ」


 駄目だしをされた。


「なら、これは?」

『そこの可愛いお嬢ちゃん、俺とこれから出かけないかい?』

『断るのじゃ』

『別にいいだろう。俺と楽しいことしようぜ』

『楽しいことってなんじゃ?』

『ベットの上で教えてあげるよ』

「イリスちゃんに何をさせるつもり」


 頭を叩かれる。

 

「イケメン貴族なら言うかと思って」

「どんな貴族よ。言ったとしても、イリス姫相手に言うわけないでしょう」


 言うのは否定しないだ。


「なら、こんな感じかな?」

『待てよ。どこに行くんだ』

『研究搭に行くのじゃ』

『ああ、あの何も取り柄がない平民がいる、あの研究室かい?』

『そうじゃ、だからどいて欲しいのじゃ』

『そんなところに行かないで俺とどっか行こうぜ』

『お主と行くなら平民と行くのじゃ(イケメン貴族を振り払って研究塔に向かうイリス姫)』

「シンク君、願望入っている?」

「イケメン貴族が女の子に振られるのは平民男子の夢ですから。そして、お姫様がイケメン貴族を振って、平民を選ぶのは平民男子の夢ですから」

「シンク君もそうなの?」

「一般的な男子の希望です」

「つまり、シンク君の希望も入っているんだね」


 あくまで一般論です。


「そんなことより、わたしはこの望遠鏡が気になるんだけど」


 あらためて望遠鏡を覗き込む。


「これって紙と水だよね。魔術なの?」

「水をこんな形にして覗き込むと、遠くの物が見えるようになるんだよ」


 凹凸になっている水を見せる。


「魔術じゃないの?」

「魔術で水の形を変化させているだけだよ」

「それだけで、遠くの物が見ることが出来るの?」

「調整が難しいけどね」


 ナズナは紙を丸めて、僕が作った水のレンズの形を参考にして望遠鏡を作り出す。


「全然見えないよ」

「そんなに簡単には出来ないよ」


 ナズナにレンズの作り方を教えていると研究室のドアが開く。


「お主たちは何をしているのじゃ」

「あれ、イケメン貴族の相手はいいんですか?」

「なぜ、お主が知っている」

「これで、見てましたから」


 望遠鏡を見せる。


「なんだ、それは」

「遠くを見る道具かな」

「そんな物があるのか!」


 イリスが僕から望遠鏡を奪い取る。

 そして、筒の大きい方から覗き込む。


「イリス姫、逆です。細い方から覗いてください」

「こうか。おお、遠くが見えるぞ!」

「窓から乗り出さないでください。落ちます」


 イリスが窓から乗り出すので落ちないように肩を掴む。


「おお、あそこに見えるのは・・・・」

「だから、暴れないでください」


 イリスが体勢を戻し、望遠鏡から目を離す。


「つまり、シンクはこれで妾のことを見ていたのだな」

「ナズナがイリス姫が遅いと気にしましたので、学園の方を見るために」

「え~、わたしのせいにするの。望遠鏡を作ったのはシンク君じゃん」

「シンク・・・・」

「僕もナズナも心配をしたんですよ。いつも、早く来るイリス姫が来ないから。それで、あの貴族はなんだったんですか」

「あいつの研究会に入らないかと誘われただけじゃ。もちろん、妾は断ったがな」

「そうですか」

「なんじゃ、嬉しそうじゃな」

「そんなじゃありませんよ」

「そもそも、この研究会は妾が作ったのじゃ、妾が辞めるわけがないのじゃ」

「わたしも誘われても辞めませんよ。シンク君はいろんな魔術を見せてくれますから」


 そう言って望遠鏡を覗き込む。


「そうじゃ、望遠鏡じゃ」


 望遠鏡を持って窓に向かう。


「ちなみに人は見ちゃ駄目ですよ。マナー違反ですから」

「なんじゃ、お主は妾のことを見ていたのに」

「本当は遠くにいる鳥とか動物を見るための物なんですよ」

「そうか、なら、鳥を捜すのじゃ」


 ナズナも巻き込んで研究塔からバードウォッチングが始まった。


水でレンズが出来るかどうかはの突っ込みは無しでお願いします。

魔術なら可能です。たぶん。


4人が登場する話。

イリス:魔術、魔導具などの遊び相手。いつでも登場可能。

ナズナ:魔術のときに登場。

クレア:魔導具やゲームのときに登場。

エリナ:剣のときに登場。ネタが無い。


小説を書くときはキャラクターを含めプロットをちゃんと書きましょう。

エリナが空気になったらごめんなさい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 後書きが面白い。 覚書代わりなのかな? 前に一人称とか他人の呼びかけとかあったのがとても面白かった。 [気になる点] 研究塔ですが、塔とはタワーの事で体育館を含む塔だと巨大なものになり…
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