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8 雨が降ったので作ってみた

 本日の天気は大雨。

 窓から見えるどんよりと黒い雲。

 いつ止むかも分からない雨を眺めていると、イリスが部屋に駆け込んでくる。

 びしょ濡れだ。

 綺麗な金色な髪から水が垂れている。。


「イリス姫、なにをやっているですか。こんな大雨の中でそんな格好で」


 この世界にもレインコートみたいに雨を防ぐ物がある。

 よく、旅人が雨を防ぐために着るマントのようなコートだ。


「着るのが面倒だった」

「だからって」


 イリスは部屋にあるタオルを手に取り、乱暴に髪を拭き始める。


「ああ、待ってください」


 僕はタオルを奪い取る。


「なにをする!」

「そんなに乱暴にしたら綺麗な髪が痛むでしょう」

「綺麗・・・・・・」

「クレア、魔晶石持っている?」


 静かに本を読んでいるクレアに尋ねる。


「無属性でいいならあるで」


 魔晶石、魔力が篭った石。

 無属性とはどの属性にも変化していない魔晶石のこと。

 火山地域で発掘される魔晶石は火属性が発掘され、海や川、湖などで発掘される魔晶石は水属性が発掘される。

 さらに山などの渓谷にある風が吹く場所にある魔晶石は風属性が発掘され、森の中にある魔晶石は土属性の魔晶石が発掘される。

 無属性は特徴も無い土地で発掘されることが多い。

 無属性の魔晶石は属性の魔術を込めることによって、どの属性にも変化することが出来る特徴を持っている。だが属性としての魔晶石としては弱い。


「少し分けてもらえる?」

「ええけど、こんなのどうするや」


 クレアが魔晶石を渡してくれる。

 透明の水晶みたいなものだ。


「イリス姫の髪を乾かす道具でも作ろうと思って」


 受け取った無属性の魔晶石の一つに火属性の魔術を込める。

 同じ要領で風属性の魔術を込める。

 それによって無属性の魔晶石は火属性の魔晶石と風属性の魔晶石と変化する。


「あと、悪いけどこのままじゃイリス姫、風邪を引くからイリス姫の部屋で着替えさせてあげて」

「了解や」


 イリスの部屋とはこの研究塔にある部屋だ。

 部屋は沢山あるので、みんな部屋を持っている。

 イリスの部屋のはメイドさんが運んだ服や私物が沢山ある。 

 

 2人が着替えに行っている間に髪を乾かす道具を作ることにする。

 まず土魔術でドライヤーの形を作り出す。

 ドライヤーの形に先ほど作った火属性と風属性の魔晶石を取り付けて魔力線でつないでいく。

 魔力線とは魔晶石と魔晶石を繋ぐ物だ。電線、ケーブルみたいなもの。

 簡単な構造、火属性の魔晶石で熱を作り出し、風の属性の魔晶石で風を送りだすだけの物。

 ドライヤーが完成したのでスイッチを押しみる。

 吹き出し口から温かい風が出てくる。

 配線も大丈夫ようだ。

 ちゃんとスイッチに繋がっている。

 動作確認をしていると2人が部屋に戻ってくる。


「イリス姫、この椅子に座ってください」


 目の前の椅子を指し、片方の手でドライヤーを持っている。


「なんだ、それは」

「髪の毛を乾かす道具ですよ」

「そうなのか」


 イリスは素直に僕の前の椅子に座る。

 イリスの綺麗な金色の髪にドライヤーをかける。

 その様子を見にクレアが近寄ってくる。


「うひゃ」

「変な声を出さないでください」

「なんだ、変な風が」

「温かい風が出ているですよ。これで濡れた髪を乾かすんです」

「なら、そう言え」

「すみません。大丈夫だから、大人しくしてくださいね」


 改めてスイッチを押してイリスの髪を乾かし始める。


「その魔導具はシンクが作ったのかい?」


 クレアが尋ねてくる。

 魔晶石が使われている道具は魔導具と言われている。


「ええ、僕の家は魔導具を買うほど裕福ではありませんから」


 魔導具は基本高い物が多い。

 平民でも手が出せないこともないが、平民の子供が買いに行く場所ではない。


「髪の毛を乾かす魔導具か。そんなこと考えたことも無かった」

「そうなんですか? 風と火の魔晶石を組み合わせるだけですよ」


 話している間にイリスの金色な髪が乾いていく。

 最後に櫛でとかして綺麗にしていく。


「もう、雨の中、フードも着ないで出歩いちゃ駄目ですよ」

「あれ、着るの面倒じゃ」

「そんなこと言っても雨に濡れて風邪でも引いたらどうするんですか」

「学園からこの研究塔に来るぐらいいいじゃろ」

「でも、濡れているでしょう」

「そしたら、また、シンクが乾かしてくれればいいのじゃ」


 目を細めながら気持ちよさそうにしている。

 研究塔は学園の敷地内にあるとはいえ少し距離がある。

 少しの距離なら傘でもあれば便利なんだけど。

 この世界には傘はない。

 見たことがない。

 無いなら作ればいいのかな?

 そんなことを考えながら金色の髪をとかしていく。


「でも、シンクは髪をとかすの上手いのう。妾の専属のメイドにしてやろうか」

「僕は男です。上手いのは妹の髪をとかしているせいですね」

「お主、妹がいるのか」

「いますよ。はい、これで終了です。綺麗な髪なんだから、乱暴にあつかちゃ駄目ですよ」

「わかったのじゃ」


 隣ではクレアがドライヤーで遊んでいる。

 スイッチを押して自分の髪に吹き掛けている。

 ドライヤーが無かったら今まで他の人たちはどうやって髪を乾かしていたんだろう。

 ドライヤーを作ったとき親は凄いねと喜んでいたけど。


 とりあえず、傘でも作るために材料を探しに部屋を出ようとする。


「どこに行くのじゃ」

「ちょっと、作りたいものがあるから材料が研究塔に無いか探しに行こうと思ってね」

「妾も行く」


 特に断ることじゃないので二人で研究塔の中を歩き材料探しを始める。

 この研究塔には過去の先輩たちの遺物がたくさん埋まっている。

 探せばいろんな物が出てくる。


「何を探せばいいのじゃ」

「鉄と水に強い布かな」


 二人で今は使われていない部屋を周り、鉄くずに防水性のある服にマントを手に入れる。

 部屋に戻ってくると、クレアが髪をわざと濡らしてドライヤーを使っている。

 何をやっているんだが。

 そんなクレアの横を通り、集めてきた材料をテーブルの上に乗せる。


「それで何を作るのじゃ」

「イリス姫が雨に濡れないようにする道具かな」

「そんな物が作れるのか?」

「さあ、作ったことがないから、上手くいくかどうか。それにイリス姫が気に入るか分かりませんよ」


 火属性の魔法と土属性の魔術を使ってくず鉄で傘の骨組みを作る。

 こんな形でよかったけ?

 上手に骨組みができない。

 折り畳み傘は無理だけど、普通の傘ならなんとか出来ると思っただけどな。

 こうやって、こうやれば、何度かの試行錯誤すると、どうにか傘もどきの骨組みが完成する。


「イリス姫、この中で好きな色ありますか」


 集めてきた防水になりそうな布を見せる。


「そうじゃのう。これかのう」


 薄い赤色の布を指す。

 少しピンクっぽい色だ。

 僕はそれを取って、傘に取り付けていく。

 魔術って便利だな。


「出来たのか?」

「一応ね。ちょっと強度に不安があるけど」

「どうやって、使うのじゃ」

「こうやって開いて頭に翳して歩くんですよ。そうすれば雨には濡れません」


 部屋の中で傘をさしてみる。


「ほう、面白い物をまた作ったね」


 クレアが髪を乾かし終わり、ドライヤーも調べ終わったのだろう。

 途中から僕の方を見ていた。


「少し、見せてくれないか」

「駄目じゃ、これはシンクが妾のために作ってくれたのじゃ」


 イリスが横から傘を奪い去る。


「今から外に行ってくるのじゃ」

「ちょっ、イリス姫、待ってください。まだ、テストしていないですよ」


 僕の言葉を無視してイリスは部屋から走り出て行く。

 追いかけるが僕が研究塔から出る頃には、すでにイリスは雨降る中、傘をさして騒いでいた。


「おお、これは濡れないのじゃ」

「イリス姫、そんなに跳ねたら足元が濡れます。それは上半身を防ぐ物で、ああ、走らないでください。泥が跳ねます」


 僕は雨の中イリスを追い掛け回すことになった。

 捕まえたときには僕は雨に濡れ、イリスは足元が泥で汚れていた。

 イリスには傘は雨が降ったときに学園と教室に移動するときにだけに使うことをお願いした。

 それも、走らず、ジャンプせず、歩くことを念をおした。

 そのあとにイリスの傘を見た3人が傘を欲しがり、傘を作ることになったのは言うまでもない。

 さらにイリスを迎いに来たメイドさんが足元が泥で汚れたイリスを見て、


「イリス様、どうしてそんなにお汚れになっているのですか?」

「シンクのせいのじゃ!」


 イリスがそんなことを言うので、なぜか僕が怒られることなった。




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